野村アセットマネジメントが設定・運用する「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、2021年のトータルリターンは64.20%と、類似ファンド分類(国際株式・グローバル・含む日本・為替ヘッジなし)平均を40.53%上回った。2021年12月末時点における10年のトータルリターン及びシャープレシオは、類似ファンド分類内でいずれもトップの成績となり、長期の運用成績及び運用の効率性ともに非常に優れた実績を収めた。ファンド オブ ザ イヤー2021「国際株式(グローバル・含む日本)型」部門で最優秀ファンド賞を受賞している。同ファンドを運用する運用部株式グループのシニア・ポートフォリオ・マネージャー浦山大輔氏に、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也が運用のポイントと今後の見通しを聞いた。

◆拡大続く半導体需要、2030年まで年7%成長を期待

朝倉 当ファンドは、2022年2月末基準でのトータルリターンが、過去3年、過去5年、過去10年で全て1位でした。しかも、リターンだけではなく、リスクを加味したシャープレシオも3年、5年、10年、全てで1位という素晴らしい成績でした。この成績の要因や背景を教えてください。

浦山 このファンドの特徴は、世界の半導体関連企業に的を絞った投資を行います。業界の中長期的な成長の恩恵を受けながら、それにプラスして、ボトムアップでの銘柄選択を行って、さらなる超過収益が獲得できるように設計されています。

 2021年の運用成績が好調に推移した要因はいくつかあります。まず、昨年から続いている新型コロナウイルスの感染拡大が一巡し、経済活動が正常化する中で半導体需要が回復基調になっています。次に、在宅勤務といった人々の生活様式や仕事様式の変化に伴って、スマートフォンやPCなどの需要が特需的な形で2021年に伸びました。また、年後半には民間企業のIT設備投資の意欲が回復しました。最後に、半導体の新たな需要につながる「メタバース」が現れました。この関連する企業の株価が堅調に推移したことが当ファンドのパフォーマンスにかなり寄与しました。

 昨年来より半導体不足が話題になっていますが、これによって半導体各社は値上げを浸透させやすい環境にあったことも半導体企業の業績を押し上げたと思います。そういった環境の中で、実力的な優位性がある銘柄のパフォーマンスが非常に良かったことが、ファンドのパフォーマンスに反映されました。

 中長期的には、2014年、15年ぐらいから、半導体利用の裾野が広がってきました。10年前の半導体需要は、スマホ、PCが主体だったのですが、そこから、自動車向け、AI向け、そのデータセンター向けなど、半導体利用のすそ野が広がりました。それによって半導体事業の成長率が上がり、その恩恵を受けてファンドのパフォーマンスも良かったといえます。

朝倉 半導体分野の成長性は今後どのように見ていますか?

浦山 半導体業界の中長期的な成長性に関しては、かなり期待していいと思っています。2021年の半導体売上高は、約5560億ドルという水準ですが、2030年には1兆ドルに到達すると見込まれます。年率換算すると約7%成長になります。

 2010年代の成長率は年率4%程度でした。2010年代の中でも半導体の裾野が広がった2015年以降の5年間は、5.3%の成長率となり、少しずつ加速しています。この傾向が20年代にも続くという想定になっていますので、年7%成長は十分に達成可能な水準だと思います。2021年の成長率は、実は24%成長とかなり大きく成長しました。2022年も、半導体不足が続いており2桁成長は可能だろうとみています。

◆半導体需要を引き上げる「自動車関連」

朝倉 ポートフォリオを作っていく過程で、銘柄選定も含めて、どういった点に注目されていますか?

浦田 3つほど注目するグループがあります。1つ目は、半導体の用途という観点から「自動車向けの半導体」にかなり期待しています。自動車向けの半導体は、自動車1台あたりに使う半導体の容量が増えていくと期待されています。これを引っ張る1つ目の大きなトレンドとして二酸化炭素排出量の削減を目指して「自動車の電動化」がグローバルに進んでいます。

 昨年、東京都が2030年をめどにガソリン車の新車販売をゼロにする方針を打ち出しています。先進各国でも同様の規制がアナウンスされ、それに応じて自動車メーカー各社も製品ラインナップの電動化を進めています。一般的なガソリン車から、ハイブリッド車、電気自動車に移行すると、1台当たり必要な半導体の必要量が約2倍になると言われています。これが半導体需要の拡大に寄与すると期待されています。足元の自動車の電動化率は1割~2割程度ですが、2030年には5割を超えるだろうとみています。

 もう一つのトレンドは、「自動運転技術」です。緊急用の自動ブレーキ、前の車を追従するクルーズコントロールなどが普及していますが、今の技術はあくまで運転者がメインで、テクノロジーは運転者を補助する位置づけです。これが2025年あたりから、車自身が主体的に運転するタイプの運転支援システムが登場するとみています。カメラ、センサー、レーダーなどの部品がかなり必要になり、集めた情報を処理するためのシステムも必要です。ここでかなり半導体の需要が増えると思っています。システムの値段は数百ドルから数千ドル規模になってきます。そういった規模で半導体の需要が増えていきます。この2つのトレンドで自動車向け半導体は、2030年に向けて2桁成長が続くと考えています。

 次のグループは、「ファウンドリ」といわれる会社です。半導体業界は、半導体を設計・販売する会社と、発注を受けて実際に製造を行う会社とに分かれています。半導体を作るための難易度が上がって、技術的にも資本的にも集約化が進んでいます。その中で、最先端の製造プロセスで半導体が製造できる企業はグローバルに限られています。こういった企業に注目しています。技術的優位性が高く、新規参入が起こらない状況で寡占化が強まっています。

 最後に、半導体製造装置の企業群にも注目しています。半導体製造装置の市場規模は、半導体の市場規模と比例して拡大してきました。2022年には半導体製造装置の市場規模が1000億ドルに到達すると期待されます。もう一つ面白い話は、先進国各国で半導体の安定的な供給を確保したいと、政府により半導体投資に対する補助金が出ています。これが半導体製造装置の投資拡大の追い風になると注目しています。

朝倉 半導体関連にグローバルに投資をし、ポートフォリオは20~25銘柄で構築されていますが、地域・国の配分など、ポートフォリオの考え方は?

浦山 ポートフォリオは、グローバルで見て特定の国・地域に極端に集中しないようにしています。当ファンドの投資対象は、ほとんどの銘柄がアメリカ、日本、台湾、中国、韓国といった国が中心になっています。基本的には銘柄を見て投資していけば大丈夫というのが半導体株なのかなと思っています。

 ただ一点、注意しなければならない部分は、米中の貿易戦争の影響があって中国に関しては半導体の輸出規制があり、半導体の製造に必要な装置を中国に売ってはいけないという規制もあるものですから、中国の企業は思うように事業拡大ができないというような環境になっています。中国企業は少し注意をしながらやっています。

朝倉 半導体の成長性がよく理解できました。このパフォーマンスをぜひ続けていただきたいと思います。最後に、投資家の皆様にメッセージお願いします。

浦山 2022年に入って、少し株式市場の動向が変わってきたような感じがしています。米国でのインフレの高止まり懸念から、FRBによる金融政策の正常化が早まってきそうだという観測が出てきました。また、ウクライナ情勢の緊迫化で景気の不透明感から少し株価が軟調に推移しているような状況です。ただ、足元の弱さは、半導体業界の事業環境が悪化しているわけではなくて、どちらかというとマクロ環境の不透明感によるものだと思います。不透明感が解消されるに従って、当ファンドで保有する企業の競争力や成長力が評価される局面がやってくると思っています。

 当ファンドは、これまでも2015年の中国景気が減速した局面、2018年に米中貿易戦争が深刻化した局面、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大といった下落局面を経験してきました。いずれも1年から2年で全て取り返すことができています。これは基本的には半導体業界の底堅い成長に支えられていて、この傾向は変わらないと思っています。投資家の皆様には、中長期的な視点で、当ファンドを応援していただければと思っています。(グラフは、「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」過去10年間のパフォーマンス推移)(情報提供:モーニングスター社)