香港メインボードへの上場をめざすワクチン開発会社の瑞科生物(02179)が3月21日、株式の新規上場に向けた公募増資をスタートした。新たに発行するのは約3085万H株で、1H株あたり上限24.80香港ドルで応募を受け付ける。上場予定日は3月31日。売買は500H株単位で行う。

 同社は、2012年に設立されたワクチン開発会社。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんなどの予防ワクチン)に焦点をあてた研究・開発を行っている。コア製品である「REC603」を含む12のワクチン候補からなるワクチンポートフォリオを確立した。主力の「REC603」は、第3相臨床試験中の子宮頸がんを予防するための組換えHPV9価ワクチン。2025年までにBLA申請(生物学的製剤認可申請)をNMPA(中国国家薬品監督管理局)に提出する計画。

 中国のHPVワクチン市場は、メルク社(Merck Sharp&Dohme)の「Gardasil」と「Gardasil 9」が、生産額で2020年の総市場の約91.0%を占めているが、依然として必要数を満たしていない状況にある。中国では2017年に「Gardasil」、2018年に「Gardasil 9」が承認されたが、2020年までの出荷ロット数は「Gardasil」が1690万、「Gardasil 9」が960万だ。2020年現在で中国には9歳~45歳の女性が2億3390万人いるため、中国のHPVワクチン接種率は1%未満の水準にとどまっている。この現状を考えると、1人当たり3回の接種として計算すると、2025年までにHPVワクチンの潜在的需要は7億170万回の追加投与が必要になる計算だ。

 一方、HPV血清型は男性にも感染する可能性があり、男性は女性と同様のHPV感染率を示すため、コア製品である「REC603」を、必要に応じて男性集団に適用するための臨床試験を開始する計画も持っている。

 HPVワクチンの市場規模は2020年に135億人民元に拡大し、2030年には690億人民元に達すると予想され、2020年から2030年までの年平均成長率は17.7%に相当すると予測されている。現在、Xiamen Innovax Biotech(厦門万泰滄海生物技術)の「Cecolin」、グラクソ・スミスクライン(GSK)の「Cervarix」、そして、メルクの「Gardasil」が認可を受けているが、市場シェアは圧倒的に「Gardasil」が占めている。メルク社は生産量の拡大に取り組んでいるが、中国国内の需要を満たすだけの増産は不可能と考えられ、HPVワクチンの新規提供のチャンスがある。

 また、WHOは2020年11月に、2030年までに15歳未満の少女の90%にHPVワクチン接種を完了し、子宮頸がんの撲滅を加速するという計画を発表し、中国政府もその計画を全面的に支持している。現在、中国政府が実施する全国予防接種制度にHPVワクチンは組み込まれていないが、近い将来、予防接種制度に組み込まれる可能性がある。HPVタイプ16および18を標的とするHPV2価ワクチンは、一般に世界の子宮頸がん症例の約70%に対する防御に役立つと考えられており、安価に製造が可能であるため、中国では、9歳~14歳の少女が2価HPVワクチンを政府が無料提供する可能性がある。すでに、広東省では2022年から24年にかけて無料のHPVワクチン接種のために6億人民元の予算を計上し、2022年9月から中学1年生でワクチン接種を受けていない場合は、HPVワクチンを無料で接種する計画だ。同社では、すでにHPV2価ワクチンの年間製造能力3000万回分をサポートできるHPVワクチン製造施設の建設に取り掛かっている。

 同社は、これまでにワクチンの販売実績がなく、大きな損失を計上している。2019年12月期の税前損失は1億3827万人民元、20年12月期は1億7940万人民元の損失だった。また、2021年9月期の9カ月間での損失は5億2034万人民元と前年同期の7249万人民元から大きく損失が膨らんでいる。損失額の増大は、COVID-19パンデミックに対応して2020年初頭にCOVID-19ワクチン候補であるReCOVの研究開発費に加え、REC603の第3相試験と2021年に付与した株式報奨による株式ベースの報酬の増加による。(イメージ写真提供:123RF)