リスク回避の流れからドル円は114円70銭まで下落。米長期金利が急低下したことでドル売りが膨らんだが、対ドルで欧州通貨が売られたことでドル円の下げは限定的だった。ウクライナ情勢の一段の悪化から、地理的に近いユーロは続落。1.11を割り込み、2020年5月以来となる1.1090までユーロ安が進む。ロシアによるウクライナへの攻撃がさらに激化したことを受け、リスク回避の流れが一段と高まるなか、株価は3指数とも大幅下落。ダウは一時800ドルに迫る下げを見せたが、597ドル安で引ける。債券には一段と買いが入り、長期金利は一時1.6%台まで低下。リスク回避の流れから金と原油が大幅高。原油価格は一時106.78ドルまで上昇し、2014年以来の高水準を記録。

2月ISM製造業景況指数        →  58.6
2月自動車販売台数           →  1407万台
2月マークイット製造業PMI(改定値) →  57.3

ドル/円    114.70 ~ 114.95
ユーロ/ドル  1.1090 ~ 1.1170
ユーロ/円   127.37 ~ 128.37
NYダウ  -597.65 → 33,294.95ドル
GOLD   +43.10 → 1,943.80ドル
WTI     +7.69 →  103.41ドル
米10年国債 -0.114 → 1.711%

【本日の注目イベント】

豪  豪10-12月期GDP
独  独2月雇用統計
欧  ユーロ圏1月生産者物価指数
欧  ユーロ圏2月消費者物価指数(速報値)
米  2月ADP雇用者数
米  ベージュブック(地区連銀経済報告)
米  FRB議長、下院金融委員会で議会証言
米  エバンス・シカゴ連銀総裁講演
米  ブラード・セントルイス連銀総裁講演(オンライン)
米  ポンペオ前国務長官、訪台(5日まで)
加  カナダ中銀政策金利発表

ウクライナ情勢が一段と厳しい状況になってきました。ロシアはウクライナ第2の都市ハリコフでは住宅街を攻撃し、さらに首都キエフでもロシアの大規模部隊が進軍し、テレビ塔が被弾しています。ロシアのインタファクスによると、ロシア軍はウクライナ保安庁が管轄するキエフの通信施設の一部を攻撃する計画だと発表しています。ロシアがウクライナに侵攻してから今日で1週間になります。当初、プーチン大統領は比較的短期間でウクライナを陥落できると考えていた節もあり、「もし、ロシアがウクライナに侵攻したら72時間以内にウクライナは陥落する」といった見方もメディアで紹介されています。しかし実際には、ウクライナの想定以上の抵抗に「短期決戦」には失敗し、焦ったプーチン氏は「完全に理性を失っている」ようで、「核」を持ち出す始末です第1回目のウクライナとロシアとの停戦協議は失敗に終わりましたが、報道では本日2日にも第2回目の協議が行われる予定ですが、停戦合意への道は簡単ではなさそうです。プーチン大統領の「独断的な愚行」に対する批判の声はロシア国内でも高まっており、解決の一つの手段として、ロシア国内からのウクライナ攻撃への大きな批判の嵐が起きることが必要かと思います。

また今回の事態のなかでも、ロシアを支持すると声明を出した中国が「停戦仲介」の役割を果たしてくれることも、解決の手段の一つとして期待したいところです。余り期待はできないかもしれませんが、その兆しはあります。中国の王外相はウクライナのクレバ外相と電話会談を行い、王外相はウクライナの民間人に危害が及んでいる事態を「極めて憂慮している」と述べています。中国外務省は会談後の声明で、「ウクライナとロシアの間で起きた紛争を批判する」とウェブサイトに掲載しました。ブルームバーグは、中国がウクライナの民間人の保護を訴えたことで、対ロシアへの姿勢に変化が出て来た可能性を指摘していますが、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は2月28日、「この紛争に対する中国の立場は中立だ」と報じています。

ロシアのウクライナへの攻撃がさら激化したことでG7各国は追加の経済制裁を考えています。米アップルはロシアでの製品の販売中止を決め、クレジットカード大手のマスターカードとビザはロシアを決済網から排除することを決め、日本のJCBも排除を決める模様です。このように「ロシア包囲網」が急速に構築されてきましたが、金融市場の「包囲網」はさらに進んでおり、ロシアはすでに「金融危機」に陥っているとの見方もあります。ロシアは「SWIFT」から排除されたことで、ドル、ユーロ、円などの外貨準備をコントロールすることが出来ません。国際金融協会(IFF)によると、制裁措置でロシアが準備資産の40-50%にアクセスできなくなった可能性があると報告し、2月半ば時点で6432億ドル(約74兆円)あったロシアの外貨準備は、少なくともその半分が週末の制裁措置合意によって失われたと見られます。ロシア中銀のナビウリナ総裁も、通貨ルーブルの急落を阻止できず、西側諸国の同中銀に対する制裁措置が意味するところを認めています。(ブルームバーグ)今後紛争がさらに長引けば、ロシア経済に与える影響は甚大で、場合によっては国内で、「暴動」や政権に対するこれまでにない強い批判も出て来る可能性がありそうです。

金融・商品市場は大荒れです。ドル円は114円70銭まで売られ、リスク回避の円買いが見られましたが、ユーロドルで大きく「ドル高ユーロ安」が進んだ影響もあり、下値は限定的でした。一方WTI原油価格は昨日の取引きで、ウクライナ情勢の激化で原油の供給量が減るとの見立てから、2014年以来となる106ドル台後半まで買われました。IEA(国際エネルギー機関)は、世界各国の石油備蓄から計6000万バレルの放出を決めましたが、現時点でそれほど効果はありません。原油価格の上昇は米国を始め、各国のインフレを一段と高めるリスクがあります。その意味では3月のFOMC会合では「0.5%の引き上げ」が支持を集めそうですが、一方で紛争が景気に与える影響も少なくはないと見られます。

米長期金利は昨日の債券市場では一段と低下し、一時は1.6%台まで下げる場面もありました。景気の減速懸念と安全資産への逃避から債券が改めて見直された格好ですが、この観点からすれば、次回の会合での「0.5%引き上げ」の可能性は大きく後退します。本日はパウエル議長の議会証言がありますが、ウクライナ情勢をどのように政策変更に織り込むのか、非常に難しい判断を迫られます。

本日のドル円は114円40銭~115円20銭程度でしょうか。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)