三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「コモディティ・アルファ戦略ファンド」が12月14日に新規設定された。インフレ時に価格が大きく動きやすいコモディティの特性を捉えたロングポジション(買建て)に、先物のショートポジション(売建て)を加えることによって安定的な投資収益の獲得をめざすファンドだ。同ファンドの開発の意図と運用の特徴について、三井住友DSアセットマネジメント投信営業部の塩出景子氏と、実質的な運用を行っているバークレイズ・グループのバークレイズ証券金融商品営業部の武藤紗季氏に聞いた。

 ――「コモディティ・アルファ戦略ファンド」を設定した狙いは?

塩出 長く続いた低金利環境下で、株式や債券等の主要な資産への投資だけでは十分なリターンを獲得することは難しくなっています。また、経済活動が再開しつつあり、インフレに対する備えも必要となっています。

 米国を中心に金利が上昇する方向にあると安定的な収益を求める債券での運用が難しくなります。安定収益獲得の代替手段として、お客さまの資産を守るためにも主要資産との相関が低いコモディティを資産ポートフォリオに加えていただきたいと考え、設定いたしました。

 バークレイズ・グループが提供している「コモディティ・アルファ戦略」は、欧米の機関投資家の間ではインフレヘッジ手段の1つとして広く利用されています。また、主要資産との相間関係の低さと流動性から、ヘッジファンドの代替といったオルタナティブ(代替資産)枠での採用もあるそうです。そのような運用のプロが活用する運用戦略を、世界で初めて個人のお客さま向けの公募投信として提供することができました。

 ――「コモディティ・アルファ戦略」とは?

武藤 コモディティのロングポジションで工夫をこらしてインデックスにプラスアルファのリターンを目指すと同時に、23品目の商品を対象にした「ブルームバーグ商品指数」をショートにする「ロング・ショート」にすることで、市場の変動に関係なく「米国インフレ率プラスアルファ」の安定的な収益の獲得をめざしています。

 コモディティ市場は参加者の偏りが大きく、株式などの伝統的資産と比べて超過収益獲得の機会(価格の歪み)が生じやすい傾向があります。コモディティ先物市場は、生産者や原材料調達業者など実需家が過半数を占める市場となっており、これら市場参加者はヘッジ目的・安定調達目的など、純粋なリターン獲得目的とは異なる目的で市場に参加しています。これら市場参加者のそれぞれの目的に基づく売買が価格に歪みを形成し、超過収益獲機会が継続的に生み出されると考えられます。

 コモディティ市場に顕著な「価格の歪み」に着目し、当戦略で採用する「バックワーデーション戦略」は、先物市場の限月が先に進むほど価格が安くなるような現象が起こることを収益機会にします。また、「タームセレクト戦略」は、例えば、灯油などは冬の需要期に価格が上がる傾向があるので、先物の限月では12月頃に価格が高くなりやすいなどといった傾向を利用して収益機会にします。このようなロングポジションでインデックスを上回るポジションを作ることをめざします。

 ――2021年の運用成績は好調ですが、その理由は?

武藤 2021年(9月末まで)の当戦略のパフォーマンスは米ドルベースで10.3%の上昇と、過去10年間で最も良好なパフォーマンスとなりました。バイデン政権の大型経済対策、新型コロナによる供給制約や経済再開需要などを受けてエネルギーや銅などの工業品金属などが大きく値上がりするとともにインフレ率も大きく上昇しました。これら大きく値上がりした品目は、ロングポジションから高いリターンを得ると共に、金利上昇懸念から上値の重いゴールド・シルバーのショートポジションから高いリターンを獲得しました。

 ――ファンドのパフォーマンスは、経済環境によって成績が良くなる時と悪くなる時の傾向がありますか?

武藤 当ファンドの類似戦略は2011年8月以来の過去10年の運用実績があります。経済状況の変化によるパフォーマンスの変動には傾向があります。(1)インフレ高進時、コモディティ価格急上昇時(2021年が該当)は、急激なバックワーデーション等の大きな収益機会が生まれ高いリターンが期待されます。

 (2)インフレ高進から低インフレ、もしくは、デフレへと転換局面(21年11月など)は、先物指数ショートを通じた期近ショートポジションからリターンが期待される一方でバックワーデーション戦略は緩やかなリターンとなることが想定されます。

 (3)低インフレ時(2011年~14年)は、大きなリターンは期待しにくいと考えられます。

 (4)デフレ時(2015年、2020年、また、2008年~09年)は、先物指数ショートを通じた高いリターンが得られる形となり、またバックワーデーション戦略によるリターンも期待でき、合わせて高いリターンが期待できます。

 (5)デフレ時から低インフレ時もしくはインフレ時へと転換局面(2016年)は、先物ショートを通じてショートしている期近ほど価格が上昇しやすいためマイナスリターンとなる可能性が高いと考えられます。

 ――実質的な運用を行っているバークレイズがコモディティの運用で優位にある理由は?

武藤 バークレイズは2002年からコモディティ指数に連動する商品の提供を幅広く行っており、現在50億ドル(約5700億円)程度の残高があります。2006年にはコモディティ指数関連として初の上場商品であるコモディティ指数に連動するETNを米国で上場しました。

 ――現在の金融環境は、「コモディティ・アルファ戦略」にとって追い風ですか?

武藤 現在の金融環境はインフレの進展、来年にかけて米FRBの利上げが見込まれる環境です。脱炭素政策により化石燃料の供給が限定的となりエネルギー価格が上昇しやすい環境にあること、労働参加率が引き続き低迷していて人件費が上昇していること、経済再開に伴う強い需要など高いインフレが継続する要素はまだ残っています。その場合には本戦略のもっとも得意な局面であり、追い風と考えられます。

 一方、FRBの利上げによりインフレが急速に落ち着いたり、デフレとなるような場合においても、当戦略はリターンが期待できる環境であり、現在の環境はどちらに転んでも追い風の環境と考えられます。

 また、インフレヘッジということであれば、例えば金投資なども挙げられますが、ゴールドは通貨のような性質を持ちながら金利を生まない資産であるため、実質金利の上昇時にパフォーマンスが悪化する傾向にあります。現在、実質金利は歴史的に見て極めて低い水準にあり、今後利上げにともない実質金利が上昇してくると金のパフォーマンスは期待できないと考えられます。そうした比較感で見ても「コモディティ・アルファ戦略」は極めて魅力的と考えられます。

 ――「コモディティ・アルファ戦略ファンド」の使い方のアイデアはありますか?

武藤 インフレを懸念している投資家様やポートフォリオの分散を図りたい投資家様、また、金利上昇に強く債券の代替的な安定的な運用を探している投資家様に幅広くご検討頂きたいファンドです。今までになかったリスクリターン特性を持ち、インフレ時以外も安定的なリターンが期待できることから長期で投資家様のポートフォリオに組み込んでいただく意義のあるファンドであると考えています。

塩出 足元ではインフレへの備えとして是非ご活用いただきたいファンドです。日本では長らくデフレでしたので、インフレに対する備えがまだ不足しているお客さまも多くいらっしゃると考えられます。そのため、まずは当ファンドでインフレから資産を守る準備をしていただきたいです。

 また、主要資産含め幅広い資産との相関が低いので、様々な資産と併せ持ちしていただくと分散効果が高まるといえます。ここ数年の米国ハイテク大型株式の値上がりで、国内の投資家の方々は北米株式の投資比率が相対的に高くなっていると思います。株式との相関性の低い「コモディティ」を資産の一部に加えていただくことで、株価変動のリスクを一部緩和することが可能になります。

 かつて「REIT(上場不動産投信)」が登場した時、REITで最も大きな収益を獲得できた人は、REITが市場に出た頃に購入した人たちでした。現在、市場には「コモディティ」に投資できる機会は非常に限られています。まだ、一般に利用されていない希少な資産クラスは、過去の経験から大きな収益機会のチャンスがあるのではないでしょうか。そのような観点からも、是非、ご検討いただきたいファンドです。(情報提供:モーニングスター社)(グラフは代表的なコモディティ指数と株式指数、債券指数の推移)