岸田文雄自民党総裁が誕生し、数十兆円規模の経済政策を年内にも実施すると新総裁が表明。任期満了の総選挙も迫っており今後の政局が注目される。一方で、米国では長期金利が上昇してドル高円安が進行。株価が大きく下落し、久しぶりに円安が進行している。加えて、中国では不動産バブル崩壊を思わせる「中国恒大集団」の資金繰り悪化も大きくクローズアップされている。様々な変化が一気に出てきた感のあった9月相場だったが、果たして10月はどうなるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に10月の為替相場の動向をうかがった。 

 ――久しぶりに1ドル=112円台をつけましたが、背景には何があるのでしょうか?

 最大の要因は、何といっても米長期金利の上昇があります。10年債利回りは一時1.565%台まで上昇し2カ月半ぶりの高水準をつけました。その影響もあって、ドル円相場は1ドル=112円の大台を1年7カ月ぶりにつけることになりました。

 2020年2月に付けた112円23銭には届きませんでしたが、ドル円相場は112円08銭まで上昇。その後、金利はやや下落してドル円相場も112円を挟んで上下する形で推移しています(日本時間9月30日現在)。この円安傾向がいつまで続くかが問題になりますが、とりあえずは2018年12月に付けた113円台という円安の水準を意識することになると思います。

 金利上昇の背景には、やはり米国の金利上昇をイメージさせる「テーパリング(資産購入縮小)」があります。10月は、「FRB(米連邦準備制度理事会)」の金融政策を決定する「FOMC(連邦公開市場委員会)」がなく、次回の11月2-3日に予定されているFOMCでテーパリングの実施がアナウンスされ、そのスケジュールが発表されると考えられています。現在の金利高は、そのテーパリング開始を先取りした動きとみられます。

 ――円安は今後も続くということでしょうか? 

 早ければ年内にもテーパリングが開始される可能性も出てきたいま、1ドル=112円台、113円台へと徐々に円安が進んでいくことが予想されます。問題は、どこまで円安が進むかですが、ここからさらにドルが買われて115円台まで円安が進むためには、テーパリングの実施に加えて、長期金利の「利上げ」が不可欠になるだろうと予想されます。

 金融正常化への第一歩を踏み出したものの、急速に利上げまで突き進むとは考えにくいものがあります。実際、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁も「利上げに至るには2022年遅く、もしくは2023年の早い時期まで利上げを見込んでいない」と語っています。

 そう簡単には、急速な円安が進むとは考えにくく、ここ数カ月のドル円相場がそうであったように、穏やかなスピードでドルが買われていく相場になると考えられます。

 ――10月の金融相場は、どんな動きになるのでしょうか?

 ゆっくりとしたドル高円安が進むとはいえ、様々な経済指標によって相場が動くことは当然想定されます。たとえば10月8日の米雇用統計では、ある程度のサプライズがあれば為替相場も動くことになります。

 実際に、9月に発表された雇用統計では、非農業部門雇用者数で23万5000人の増加となり大きく予想を下回りました。10月8日に発表予定の9月の非農業部門雇用者数は50万人の増加と予想されていますが、予想を大きく下回るようなことがあれば、一時的な動きとはいえ相場が大きく動くかもしれません。

 アメリカではこのところ新型コロナウイルスのデルタ株による新規感染者数が増え続けており、バイデン大統領も自身が3度目のワクチン接種、いわゆるブースター接種を受けたことがニュースになりました。新型コロナウイルスの影響はまだ根強く残っており、収束の域には達していない。つまり一直線でのドル高円安は、可能性が低いと言うことです。

 また、インフレ懸念も依然として継続しており、FRBが重視する「PCEデフレーター」といった指標が大きく動けば、テーパリングのスケジュールにも変化があるかもしれません。為替市場にも当然大きな影響を与えます。

 ――中国恒大集団のデフォルト懸念が世界の株価に影響しています。為替への影響は?

 中国大手の不動産デベロッパー「中国恒大集団」の債務問題は、この9月29日にグループが保有する銀行の株式を国有企業に100億元(約1700億円)で売却するという発表があり、とりあえず資金繰りにめどが立った状況になっています。

 ただ、連結ベースでのバランスシートの規模は33兆円にも上り、その規模の大きさから、世界経済にも影響を及ぼすのではないかと懸念されています。とりあえず利払いができなくなる状況を回避できたとしても、今後の展開次第では不透明な部分が多いと思います。また、同集団以外の不動産デベロッパーなども債務危機に陥る可能性があり、政府の救済策が注目されています。

 とはいえ、中国の不動産会社のほとんどは、国内の国有銀行で資金調達しており、世界の金融機関に影響を与える可能性は少ないと考えられます。唯一、債券を保有している個人や金融機関は影響を受けるかもしれません。いずれにしても、株式市場には多少の影響があっても、為替市場に大きな影響が及ぶとは考えにくいと思います。

 ――10月相場の予想レンジを教えてください。

 日本では今後、岸田新政権が誕生してどんな政策を打ち出してくるかが注目されますが、あまり為替市場には影響がないように思われます。また米国では、債務上限問題というリスクが持ち上がっていますが、共和党と民主党がどこで折り合いをつけるかで、解決が長引くかどうかの分かれ目になるようです。いずれにしても、投資家も慣れている問題といえます。10月の予想レンジは次の通りです。

●ドル円・・1ドル=110円-113円 
●ユーロ円・・1ユーロ=128円-133円 
●ユーロドル・・1ユーロ=1.15ドル-1.19ドル 
●英国ポンド円・・1ポンド=147円-153円 
●豪ドル円・・1豪ドル=79円-82円

 ――10月相場で注意する点を教えてください。 

 10月相場で問題になるのは、やはりどこまで円安が進むのか、ということだと思います。チャート上ではすでに、日足、週足ともに一目均衡表の雲を抜けており、残るは月足のみとなっています。月足の雲の上限が1ドル=112円60ー70銭というところです。この月足の雲を抜けると、さらなる円安が進む可能性があります。

 ただそこまで進むには、ある程度時間がかかるかもしれません。あまり、何が何でも円安というイメージを持たないで、相場の状況を細かく判断して、売買のタイミングを判断することが大切だと思います。ポジションを細くして、こまめな売買を心がける、そんな売買がオススメです。(文責:モーニングスター編集部)。