世界中で新型コロナウイルスに対応したワクチン接種が進められている。とりわけ米国では1日あたり300万人という驚異的なスピードでワクチン接種が行われており、いよいよコロナ後の景気回復が視野に入りつつある。景気指標でも好景気を示す数字が数多く予想されている。3月に引き続いてドルが買われて、円が売られる相場展開となるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に4月の為替相場の行方をうかがった。

 ――米ドルが買われて円安が進んでいますが、背景には何があるのでしょうか? 
 
 やはり、米国のワクチン接種が急速に進んでいることが最大の要因といえます。バイデン政権は4月19日までに米国の成人90%が接種対象になると発表しています。また、ファイザーとモデルナが開発したワクチンが、重症化だけではなく感染自体も高い確率で防ぐことができるという発表があり、パンデミック収束の期待が膨らんでいます。いよいよコロナ以前の世界に戻れるかもしれない、そんなイメージが拡大しています。
 
 現実に、今後数日間で発表される景気指標も、非常に好景気を示す指標が予想されており経済活動の回復が現実のものになるのかもしれません。たとえば、4月1日(木曜日)に発表される3月の「ISM製造業景況指数」では「61.8」という予想が出ており、この数字は1980年代以来の高い数値になると言われています。
 
 さらに、4月2日(金曜日)に発表される「米国雇用統計」では、「非農業部門雇用者数」が先月よりもさらに増加が見込まれる「63.5万人」と予想されています。先週発表された「新規失業保険申請数」は68.5万件となっており、2020年3月の第2週以来となる底水準であったことを考えると、雇用統計も予想通りの高い水準となり、景気回復を示唆するものになると予想されます。
 
 ――心配なのは長期金利の上昇ですが・・・? 
 
 景気回復=長期金利という連想が働くのは当然ですが、中央銀行に当たる「FRB(連邦制度準備理事会)」は、現在は単なる「CPI(消費者物価指数)」ではなく、消費段階での物価上昇圧力を見る「PCE(個人消費支出)デフレータ」を重視するといわれています。とりわけ、価格変動の激しいエネルギーと食品を取り除いた「PCEコアデフレータ」をFRBは最も重視しており、現在はまだ1.4%(2021年2月)となっており、目標としているレベルには相当の開きがあります。

 さらに、長期金利も一時的には1.7%台後半まで上昇するものの、なかなか一直線で上昇していくというようにはいかないようです。FRBは、日本や欧州のように金利をコントロールしているわけではありませんが、簡単に金融市場の思惑通りに高金利になっていくような事態は考えにくいのではないでしょうか。

 またバイデン政権は為替相場に対しては極めて冷静な態度をとっており、金利上昇は株価に影響を与えるかもしれませんが、為替市場にはあまり大きな影響を与えない可能性が高いかもしれません。そういう意味では、為替市場は当面、急激なドル高といった一方的な動きにはなりにくいといっていいでしょう。
 
 ――野村ホールディングスの大きな損失が報道されていますが? 
 
 米国の投資会社「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が、約200億ドル(2兆2000億円)のポジションを強制的に清算されたことで、野村ホールディングスやクレディ・スイスといった大手金融機関が多額の損失を被ったとして金融市場に激震が走っています。かつて2007年8月に起きた「パリバ・ショック」のような事態にはならないのではないかと予想されています。ただ、今後はこうした心配が増えてくるかもしれません。

 今後、コロナの回復に合わせて、何かのきっかけで金融市場の歪みが出てくる可能性はあると思います。とりあえず、スエズ運河の座礁事件は幸いにも回復したようですが、トルコのエルドアン大統領が中央銀行の総裁と副総裁を短期間に立て続けに更迭するなど、為替市場には特有のリスクも存在しています。

 為替市場全体としては、株式市場などに比べてそれほど大きなボラティリティー(変動幅)になっていないため、しばらくは比較的安定した相場が続く可能性がありますが、不測の事態には備えておく必要があります。

 ――4月の各通貨の予想レンジは? 
 
 為替市場という点では、全体的には「揉み合いながらのドル高」と考えて良いのではないでしょうか。「ドル以外の通貨が弱く、とりわけ円が弱い」というスタンスでいいと思います。4月の予想レンジは以下の通りです。
 
●ドル円・・1ドル=108円-111円50銭 
●ユーロ円・・1ユーロ=127円-131円 
●ユーロドル・・1ユーロ=1.15ドル-1.21ドル 
●英国ポンド円・・1ポンド=149円-153円 
●豪ドル円・・1豪ドル=83円-85円50銭 
 
 ――4月相場で注意する点を教えてください。 
 
 比較的穏やかなペースでドル高円安が進み、ボラティリティーもさほど大きくない・・・。そんな相場が予想されます。ただ4月に入ったばかりの数日は、キリスト教徒にとって聖なる日である「グッドフライデー」がある影響で、欧州全体で金融市場が休場となり、米国も株式市場や原油市場などがクローズします。世界の数多くの取引所が休場になるため流動性の少ない相場になります。

 加えて、雇用統計などの重要な指数が発表されるため注意が必要かもしれません。ISM製造業景気指数や雇用統計で予想を超える数字が発表された場合、やや変動幅の大きな相場になるかもしれません。雇用統計など為替市場に大きな影響をもたらしそうな景気指数の発表されるときには、ある程度の緊張感を持って、相場の成り行きを見守る必要があると思います。(文責:モーニングスター編集部)。