英国に本拠を置くアバディーン・スタンダード・インベストメンツは、約61兆円の運用資産残高を有し、英国最大級、かつ、世界でも有数の大手運用会社だが、小型株式に特化した運用チームを持っている。コロナ禍からの立ち直りつつある世界経済を背景に、株式運用では個別銘柄の選別能力が問われる中、同社の世界小型株式戦略は、昨年1年間でベンチマークのMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス・スモールキャップ(ドルベース)に対して20%ポイント以上の超過リターンを稼ぎ出した。小型株式運用チームが発足してから25年近くの経験で生み出されたユニークで実践的な世界小型株式戦略について、アバディーン・スタンダード・インベストメンツのインベストメント・スペシャリストであるグラハム・マックロウ氏(写真)に聞いた。

 ――2020年の世界小型株戦略のパフォーマンスは、特に3月のコロナショックから立ち直る過程でベンチマークを大幅に上回る成績になったが、この好パフォーマンスの要因は?

 コロナ禍にあって投資先企業や投資候補先の企業に対し、それぞれがどのような企業アクションを起こしているのかをきめ細かく調査して、その対応力によってポートフォリオのリバランスを行ったことで、年前半に世界的に株価が大きく反落する中で対ベンチマークでの下落率を抑え、年後半のパフォーマンスを押し上げた要因になったと考えている。

 もともと小型株式運用チームは、経営陣との面談をベースにした企業訪問を繰り返し、足で稼ぐ調査活動を基本としている。この調査活動で築いてきた企業とのリレーションシップによって訪問活動が制限されたコロナ禍にあっても、オンライン会議システムなどによって、直接企業の経営層との情報交換が継続できている。

 当社の世界小型株式戦略のパフォーマンスは、2020年12月末を起点として過去3年で年率16.0%とベンチマークの7.95%を上回り、過去5年でもベンチマークの年率11.8%に対して年率18.0%だった。2012年2月からの設定来では年率15.9%と同期間のベンチマーク10.9%を大きく上回っている。設定来ではチャイナショックや昨年のコロナショックなどの危機があったが、この下落局面で市場平均よりも下げ率が60%程度にとどまるという下げに強い性格がある。

 ――小型株式運用チームの特徴は?

 チームは1997年にホームマーケットである英国の小型株式の調査・運用をスタートし、2007年には欧州全域に調査範囲を広げ、2012年からは世界全体の小型株式を対象とした運用を始めている。実績とともに投資対象を広げてきた形だ。投資対象を世界に広げるにあたっては、世界24拠点の1000人を超える運用スタッフとの連携を行い、各地域でのリサーチを活用している。

 企業の「質」を重視した銘柄選定を行うことで、短期の市場動向には左右されず、中長期投資をめざしている。運用ポートフォリオが下げに強いのも質を重視した銘柄選択の効果だと思う。中長期的な成長機会のある市場に立脚し、健全なバランスシートと経営体制を持ち、かつ、ESGに優れた会社であるかどうかなど、個別面談等で見極め長期保有が可能な確信度の高い銘柄に厳選投資している。

 独自のスコアリングツールによって対象銘柄を絞り込み、赤字企業、債務比率の高い企業や景気変動によって業績・株価が変動しやすい企業などを除外している。長期で業績の成長が見込まれると判断される投資対象銘柄に対し、企業調査や面談インタビューなどによって、最終的に投資する40~80銘柄に絞り込んでいる。

 運用担当者の9人は、性別や年代を問わない老若男女の様々な投資経験を有する多様な人材のチームだ。それぞれに地域別にリサーチを担当し、それぞれのエリアの現地運用拠点とも連絡を密にしている。小型株式担当者が英国の1つの拠点に揃っていて、全世界を対象としたポートフォリオを運用していることが特徴といえる。他で聞くのは、アメリカ、欧州、アジアなどのエリアごとに中小型株式担当者がいて、それぞれのエリアから選りすぐりの銘柄を持ち寄ってポートフォリオをつくるというものだ。当社ではチームで常にディスカッションができるので、投資アイデアや企業評価、ポートフォリオの構築・リスク特性などについてチーム横断で複眼的な検討ができるというメリットがある。

 ――小型株式投資の魅力は?

 大型株式の運用は、2020年のように米国のハイテク企業など一部の銘柄群に偏る傾向があるが、小型株式は、それこそ世界中にセクター分散を効かせた上で様々な投資機会を求めることができる。また、特定のセグメントで世界有数の技術やシェアを有していたり、大企業に負けない競争力を持つ企業を発掘することもできる。そして、世界経済の好不況の波に関係なく持続的な成長を遂げる企業があることも魅力だ。

 また、現在の株価水準は大型株と比較した相対PERと相対パフォーマンスの推移をみると、大型株と比較して小型株は歴史的な割安の水準にある。小型株式に投資するタイミングとしては、非常に魅力的な水準といえる。

 ――2021年の小型株式の展望は?

 新型コロナウイルスのワクチン接種が世界で始まったものの、景気回復までの道のりは一筋縄ではいかないと考えている。20年に見られたような大きなリバウンドと同じようなパフォーマンスを出すことは難しいと考えている。特に、バイデン米大統領の政策に注目している。中国の影響力拡大とそれを抑制するために講じられる対策、巨大ハイテク企業に対する規制強化の可能性などには注意を払う必要がある。そして、新興国の経済がどのように回復していくのかについても、注意深く見ていく必要がある。

 その中で、トピックスとして、日本のデジタル化、工場や倉庫の自動化、環境に優しいエネルギーやテクノロジーへのシフト、屋外とつながりたいという消費者のアウトドア需要などに注目している。全体のパフォーマンスは慎重にならざるを得ないが、個別には魅力的な銘柄がある。銘柄間のパフォーマンス格差が目立ってくると考えられるので、運用者には銘柄選択の能力が問われる1年になるだろう。

[編集後記]
 アバディーン・スタンダード・インベストメンツの世界小型株式戦略は、日本の公募投資信託では三井住友DSアセットマネジメントが設定している「世界小型株厳選ファンド」で採用されている。資産形成の手段として魅力的な投資タイミングにある世界小型株式に注目したい。(情報提供:モーニングスター ファンドニュース)