三井住友DSアセットマネジメントは2020年7月に本社を現在の虎ノ門ヒルズに移転し、11月に運用部門の組織再編を行った。コロナ禍で様々な活動が制約を受ける中、2020年4月に代表取締役社長兼CEOに就任した猿田隆氏(写真)は、2019年4月に三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問の合併によって誕生した新会社の骨格を整えたようにみえる。昨年8月には従来の「フィデューシャリー・デューティー宣言」にESGを含むサステナビリティの要素を加えた「FD・サステナビリティ原則」を制定し、ESG投資が広がり始めた投信業界でトップランナーとしてサステナビリティ投資に取り組む姿勢を表明した。猿田氏に、今後の事業運営の方針について聞いた。

 ――グローバルな機関投資家がESGへの取り組みを加速させる中、三井住友DSアセットマネジメントの取り組みは?

 運用会社にとってESGへの取り組みは、相当時間をかけてやってきていると思います。2000年頃には「SRI」という社会的責任投資について強く意識させられる時代がありました。私は当時、信託銀行にいましたが、機関投資家としてSRIをどのように実行するかということは、ずいぶん議論をした覚えがあります。

 また、水や環境問題に注目する「エコファンド」が人気化した時代もありました。そして、スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)やコーポレートガバナンス・コード(上場企業が守るべき行動規範)についても、世界金融危機(リーマンショック)を経て厳しく問われる時代になりました。

 このように、時代の流れの中でE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)のそれぞれを強く意識した運用や経営を20年以上にわたって続けてきていますが、いずれも運用業界に定着したといえるほど根付かなかったように思います。ところが、現在の動きは過去のそれとは大きく異なります。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が率先してESG投資を取り入れていることも大きいとは思いますが、ESG投資は運用業界としてやらないわけにはいかないという動きになっています。

 かつてのブームでは、「SRI」や「環境」などの大切さは十二分にわかっていながら、加えてパフォーマンスの良し悪しが問われていました。ところが、今回の「ESG投資」は、パフォーマンス以前の問題としてサステナビリティが重要視されていて、世界中の投資家が揃ってESG投資を求めています。

 私は当社に2019年10月に入ったのですが、当社に来てまず感じたのは、ガバナンスについては十二分な対策がなされ、議決権行使についても厳格に運営されているということでした。ESGのベースができているので、運用に取り入れていくことは難しくないと感じました。昨年8月に「FD・サステナビリティ原則」を制定・公表して、当社の姿勢を明らかにするとともに、現在、全ての運用商品についてESGの考え方を取り入れていっています。

 ――アクティブファンドに特化した運用会社として、ESGやSDGsへの取り組みが超過収益の源泉となるでしょうか?

 ESGの観点を運用に取り入れることによって、プラスアルファのリターンが得られているかということは、現時点で証明された根拠があるというものではありません。ただ、パフォーマンスに対する良し悪しに関わらず、ESGの観点を運用に取り入れていかなければならないということが、昨今の動きです。このような機運になったからこそ、今度こそ、ESG投資が国内に根付くのだと思います。私どもも現在進めている運用改革をブレずに完遂していきます。

 もちろん、ESGの要素は企業のサステナビリティ(持続可能性)に重要な意味を持つものですから、企業の存続にかかわるという点で、中長期で考えるとプラスの効果があることは間違いないと思います。ただ、短期的に考えれば、たとえば、環境に配慮した経営によって再生可能エネルギーだけを使うことにすると、企業が負担するコストは増加します。短期的には、収益を圧迫する要素になることもあるのです。企業の社会的な価値と、業績との関係をどのように評価していくのか、また、投資家の皆さまにパフォーマンスとしてお返しできるかということは、これからの取り組みだと思っています。

 ――国内の運用会社としては、アジア関連のリソースはトップクラスだと思いますが、今後の海外展開は?

 国内の株式市場の規模は、世界の中では7%程度を占めるに過ぎません。他の93%は海外市場なのですから、お客さまに運用商品を提供するにあたっては、海外資産も合わせて運用する商品を提供する必要があります。海外資産における運用力は、これから運用会社として生き残るために不可欠な要素であると思って取り組んでいます。特に、世界のどこよりも高い成長力のあるアジアは、海外戦略の雌雄を決するポイントとして強化しています。

 ――三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)とSBIグループの関係会社における資本業務提携が発表されています。SMFGの運用会社として今後の展望は?

 SBIグループもSMFGも、それぞれに強力な販売ネットワークを有するグループですが、運用会社としては、販売会社に選んでいただき、使っていただくという他はありません。運用商品や運用サポートの面でサービスの質を高めて、販売会社から認めていただくということが全てだと思います。

 また、国内の投資信託市場全体として、現段階は、どこの販社がというよりも、全ての関係者が一体となって協力し、市場全体の底上げを図る段階だと思います。GDP比で見た国内の投信残高は、まだまだ拡大の余地が大きいと考えています。市場全体が拡大発展していく中で、運用会社として選んでいただくにはどうあるべきか、私どもの特徴をより明確にしていきたいと思います。

 ――コロナ禍によって資産運用を開始される方が増加しています。運用会社としての取り組みは?

 銀行や証券会社など幅広い販売会社で当社の商品をお取り扱いいただき、また、当社独自の直販チャネルも設けるなど、様々な販売チャネルを通じて商品を提供しています。また、日本株式をはじめ、外国株式や債券など様々な資産クラスに投資する商品ラインナップを揃え、お客さまのあらゆる運用ニーズにお応えできる体制にあります。

 今後も主力である日本株のアクティブ運用と、実績を重ねてきたアジアの運用商品を軸に、特徴のある魅力的な商品を提供していきたいと思っています。

 お客さまには見えにくい部分ですが、昨年11月に運用部門の再編成を行いました。社内の人間には、組織を変えることは強いメッセージ効果がありますし、それを事業のコアである運用部門に対して行ったということで、大きな変革として受け取られました。私は、この組織変更によって、世界で戦える運用会社になるという強い意志を示したつもりです。今後、お客さまには高い志を持って運用の成果をご提供することで、これからの時代に選んでいただける運用会社になっていきたいと思います。ぜひ、今後の三井住友DSアセットマネジメントにご期待ください。