「全球最大IPO」として市場の注目を一身に集めていたアント・グループのIPOが上場予定の36時間前に突如として上場停止を発表したことによる動揺から、香港IPO市場はようやく立ち直ってきたようだ。アント・グループの上場停止の発表から、新しいIPOの発表が途絶えていたが、12月22日に新株の発行を伴わない形でハイアール智家(ハイアール・スマートホーム:06690)が上海市場との重複上場を発表し、11月19日上場の大型案件であった融創服務(01516)も無事に公募価格を決定して予定通りの株式上場が実現しそうだ。

 中国最大のEコマース企業であるアリババのグループ会社で、中国最大のモバイル決済サービスである「アリペイ」を展開するアント・グループのIPOは、上海と香港への同時上場、かつ、資金調達額が過去最大の350億米ドル(約3.65兆円)という規模の面からも、世界的な注目を集めた。ところが、IPOが迫る中で行われてビジネスセミナーにおけるアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の中国当局に批判的な発言が問題視されて、その制裁として上場直前での「停止命令」につながったといわれている。

 停止命令の理由として表向きは、「11月2日に発表された小口融資事業に関する規制強化についてアント・グループが大きな影響を受けるため」と説明されているが、時間をかけて議論された規制の発表タイミングは当局の思いのままであるため、この規制の発表タイミングも含めて、「中国当局がアリババグループに強烈なお灸をすえた」というのが、市場関係者の見方だ。香港に上場しているアリババの株価も、アント・グループのIPO見送り発表以来、株価は1週間で約17%も下落している。

 このアント・グループのIPO見送りは、香港IPO市場にとっても大きなショックになった。11月20日まで発表さたIPOの予定以降に、新規の発表が行われず、発表された中からも、10日上場予定のCHII(01940)、16日上場予定の天兆猪業(01248)の上場が見送られることになった。

 ただ、その後、11月16日に家電大手のハイアール智家が香港にH株を上場する計画を明らかにすると、少しムードが変わってきたようだ。ハイアール智家は、香港で既に上場しているハイアール電器(01169)と株式を交換する形でH株を発行して上場するため、新株を発行しての資金調達はない。ハイアール智家は既に上海でもA株(600690)を上場し、香港との重複上場となる。中国国内家電メーカーとしては、美的(Midea)、格力電器(グリー・エレクトリック)に次ぐ第3位。旧・三洋電機の白物家電事業や米ゼネラル・エレクトリックの家電業務などを次々と買収して世界的な家電メーカーとして飛躍したことでも知られる大手メーカーだけに、上場後の株価の行方も注目を集めるだろう。

 また、18日に上場した祥生(02599)は、大手の不動産管理会社で約32億香港ドル(約430億円)を調達。また、19日に上場する融創服務(01516)は、さらに大型で約78.6億香港ドル(約1053億円)を調達するIPOだが、無事に上場スケジュールをこなしている。1000億円を超える資金調達も無事に乗り切ることができれば、市場関係者の愁眉も開かれるだろう。

 今年は6月に、網易(09999)と京東集団(09618)という米国に上場している大手ネット企業が香港に里帰り上場を果たすなど、アント・グループの上場計画発表によって香港IPO市場はかつてない盛り上がりをみせていた。今後も中国版NetflixといわれるiQiyi(愛奇芸)や中国版ニコニコ動画であるBilibiliなども香港上場を狙っているという見方もあるなど、アジアのIPO市場としての香港への期待は小さくない。来週以降は、しばらくIPOが途切れることになってしまうが、新年にアント・グループIPO中断の悪影響が残らないかどうかが注目されるところだ。(イメージ写真提供:123RF)