コロナショックによる外出制限によって、オンラインショッピングをはじめ、オンライン診療やオンライン授業など非接触型のデジタルサービスが急速に発展し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉も社会に浸透した。この確かな需要増を手掛かりに、株式市場ではDX関連などのテクノロジー株が大きく上昇し、その関連ファンドの設定も相次いだ。しかし、同じようにテクノロジー株式に投資するファンドの中で、パフォーマンスに差が出てきている。三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「グローバルDX関連株式ファンド(愛称:The DX)」は好調な運用成績を維持しているが、同ファンドの運用について同社投信営業部の伊藤健人氏と、ファンドの実質的な運用を担うニューバーガー・バーマンのリテール営業部ヴァイス プレジデントの藤波新氏に聞いた。
 
 ――米国の大統領選挙も終わって株式市場の流れに変化が感じられます。ハイテク株の比率が高いNASDAQ総合指数が調整色を強め、オールドエコノミーも含む大型株で構成されるNYダウが大きく値上がりしました。コロナショックで下落した3月以降の市場をけん引してきたDX関連などのテクノロジー株式には一部で割高も指摘されるほど値上がりしましたが、テクノロジー株は調整局面に入ったのでしょうか?

藤波 テクノロジー銘柄には、2極化といえる状況にあります。決算の数値が事前の市場の期待に対して良かったところと、期待を裏切ったところがあり、その内容によっては失望売りによって大きく株価が値下がりしている銘柄もあります。私どもも、各社の状況に応じて保有している銘柄についてウエイトの調整、また、場合によっては銘柄の入れ替えなどキメ細かな対応を行っています。

 特に、米大統領選挙の後、世界のコロナ感染拡大が再び勢いを増していることもあって市場の価格変動率が高くなっています。投資銘柄の見極めは一層慎重に行い、投資判断にはビッグデータ解析情報など確信度の高い情報を重視しています。

伊藤 DX進展の期待が高まって大きく株価が上昇したテクノロジー銘柄には値動きが大きい銘柄もあります。ただ、米国の大統領が誰に決まっても、コロナワクチンが完成しても、デジタル社会の進展を促すテクノロジーの進化は止まりません。このことを否定する方はおそらくどなたもいないのではないでしょうか。オンライン診療やオンライン学習など、コロナ禍のロックダウンが普及を加速させた面はありますが、コロナが収まったからと言って、オンライン診療などが終わってしまうことはありません。便利な機能は使い続けられ、さらに、発展していくと思います。

 また、当ファンド「The DX」では、今DXが最も加速すると考える領域(現在はヘルスケア、レジャー、ワーク、コンシューマー)を見極め、その関連銘柄に投資しています。またこのような銘柄選定だけでなく、個々の投資銘柄についても、保有を続けるのではなく、市場の局面に応じて頻繁に保有株数の調整をしています。値上がりし過ぎた場面では利益確定し、株価が妥当値を下回って下落した局面では買い増しをするなど、市場環境に応じて売買判断してくれるのは、投信を資産運用に活用する大きなメリットだと思います。

藤波 当ファンドは、向こう3年~5年間の業績見通しを立て、中期に成長が確信できる銘柄でポートフォリオを組んでいます。売買回転率は平均30%程度ですが、投資銘柄の顔ぶれはそれほど大きな変化はなく、個々の銘柄においてバリュエーション(企業価値と株価の評価)の変化に応じて柔軟に投資ウエイトを調整する運用をしています。

 ――投資判断にビッグデータを用いるというのは?

藤波 ビッグデータ分析の活用によって、市場に織り込まれていないインサイト(洞察)をいち早くキャッチして投資判断に使っています。クレジットカード・口座情報、オンライン決済情報、求人情報、企業経営陣の発言内容、ウェブコンテンツや検索情報などの多様なビッグデータを分析し、これまで投資分析で使ってきた株価やマクロ経済、企業の決算情報では得られない変化を捉えるように努めています。

 ビッグデータ分析を投資に活用するということは、これまで運用各社で取り組んできていると思いますが、「The DX」の運用においては、非常にビッグデータ分析との相性が良いことが確認できています。

 ――ニューバーガー・バーマンのビッグデータ活用の特徴とは?

藤波 当社では、独立した社内株式リサーチ部門の中に、ビッグデータ・チームを内包しています。運用会社によってはビッグデータ分析チームを調査部の外に独立して持っていたりしますが、当社ではリサーチ部門の中に置くことで、アナリストがチームの分析結果を図書館で必要なデータを取り出すように、気軽に取り出して投資判断のサポートに使っています。

 ビッグデータ・チームを率いるマイケル・レッキは、脳科学博士であり、かつ、コンピュータ・サイエンティストというユニークな学術的バックグラウンドを持っています。(7つの特許取得、20の特許を申請中であり、50以上の学術論文、2013年トーマスエジソン特許賞を受賞など)シンガポール政府投資公社のデータ・サイエンティストとしてビッグデータ・チームを統括するなど、ビッグデータを投資に活かすことに長年携わってきました。当社には2017年4月に入社し、レッキの入社とともにビッグデータ・チームを組織し、現在は9名のデータサイエンティスト・アナリストがいます。

 従来は、企業の決算データから知り得たような情報も、ビッグデータを分析することで、リアルタイムでより精緻に変化を読み解くことができるようになりました。DX関連企業は、デジタル化された市場で事業を展開していますので、ビッグデータで解析しやすいデータが豊富にあり、DX関連企業を把握するには非常に有効な手法になっています。

 ――具体的にはビッグデータ分析をどのようにして投資判断に活用するのですか?

藤波 たとえば、在宅フィットネス向けの器具とアプリを提供するペロトン・インタラクティブ(米国)は、「The DX」の代表的な組入銘柄の1つですが、同社を評価するために、クレジットカード利用データをもとに同社のデジタル・メンバーシップの登録者数を分析しました。その結果、今年2月-3月の新型コロナウイルス感染拡大下でトライアルに登録したユーザーが90日間のトライアル期間を経て課金対象メンバーに移行して課金ユーザーが大幅に増加していることが分かりました。トライアル期間を経て、課金サービスに移行するということは、そのサービスへの満足度が高いということができます。こうしたデータを常時モニタリングすることで、同社サービスへの根強い需要が確認できます。11月に株価が20%下落したタイミングで買い増しに動いた背景には、同社サービスに対する投資チームの確信度の高さが反映されています。

 また、オンライン診療サービスのテラドック・ヘルス(米国)は、クレジットカードの利用データを分析し、1カ月以内に複数回利用したユーザーの比率の変化を調べました。これによって、顧客の定着率を測ったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、同社ユーザーのリピート率が大幅に上昇し、同社への顧客ロイヤリティが高まっていることがわかりました。オンライン診療サービスについては、日本のエムスリー、中国のピンアン・ヘルスケア&テクノロジーなど米国外でもプレイヤーが存在します。日本ではデジタル庁の創設などデジタル化の流れが加速していますので、オンライン診療には普及・拡大の期待が強いと考えています。

 このようなデータは、継続して調査することによって変化が記録されます。その変化を把握することで、経営陣へのインタビューなども実態に合った、より踏み込んだ対話が可能になっています。

 ――今後の見通しは?

伊藤 「The DX」が投資するDXの未来は、非常に身近な近い未来です。世界の経済成長率が鈍化し、年率3%程度の経済成長しか期待できない中、DXによって生まれる経済圏は2035年まで年率15%以上で成長していくと予測されています。コロナによる制限がDXの普及を加速させたことは事実ですが、コロナが終わったからといってDXが終わるわけではありません。この加速は更にスピードを増していくと考えています。

 ファンドは2020年9月15日に設定し、わずか1カ月間で基準価額が13%上昇するスタートとなりました。この間の上昇率は、S&P500(2.49%上昇)などの株価指数を大きく上回り、他のテクノロジー系のファンドの成績をも凌駕しました。このファンドの運用で重要と考えているのは、『中長期的に成長する分野かどうか』『企業が持つ技術やサービスがどれだけ活用され成長していくかの見極め』そして『世の中が知るよりもいち早く情報を捉え活用する』です。特に『ビックデータなどテクノロジーによる情報活用』は従来の運用方法にプラスして良好なパフォーマンスを出すための重要なファクターの1つと私たちは考えます。これは今後運用期間が長くなるほど、より明確な差として表れてくると思います。ぜひ、これからの資産形成に、「The DX」のご活用をご検討ください。(グラフは、「The DX」(資産成長型)とNASDAQ、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスのトータルリターンの推移)(情報提供:モーニングスター社)