米国大統領選挙が、いよいよ1カ月後に迫りつつある。トランプ現大統領と民主党候補バイデン氏による一騎打ちの戦いになるわけだが、テレビ討論会も3回予定されており、その都度どちらが優勢になるかで世界中が一喜一憂の動きを見せるかもしれない。とりわけ、為替市場や株式市場などの金融マーケットは、乱高下することも予想される。大統領選挙がある10月のお決まりの動きだが、大きな変動幅が予想される為替市場の動向を外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)にうかがった。

 ――10月相場のポイントはやはり米大統領選挙でしょうか?

 11月3日に実施されるアメリカの大統領選挙は、世界中が注目するビッグイベントと言って良いでしょう。為替市場や株式市場にとっても、この1カ月は、大きな変動幅が予想されます。とりあえず、現地時間の9月29日に行われる予定の「テレビ討論会」には大きな注目が集まるはずです。

 3回行われる予定のテレビ討論会ですが、政策内容や人物像、考え方などが分かるため、株式市場や為替市場にも少なからぬ影響与えると考えられます。とりわけ、トランプ大統領にはコロナ対応策の失敗や最近明らかになった所得税未払い問題、連邦最高裁判事の人事問題などなど・・・、攻撃される材料が数多く揃っており、バイデン氏がどこまで追いつめられるかに注目が集まっています。

 ただ、最近になってトランプ大統領とバイデン氏との間の支持率に縮小傾向が見られており、州によっては支持率逆転の報道もあります。バイデン氏圧勝とはいかないようです。とりわけ、トランプ大統領はあらかじめ郵便投票は不正の温床だという主張を繰り返すなど、接戦になれば法廷闘争に持ち込む意向を示しています。選挙が終わっても混乱が予想されており、例年以上に市場の混乱が予想されます。

 ――米大統領選の結果よって、為替市場にはどんな影響があるのでしょうか?

 トランプ大統領がそのまま大統領職に留まれば、株価は上がり、米ドルが売られて円高になる可能性があります。4年前の大統領選挙では、トランプ氏が当選したことが伝わった段階で、ドルが売られ1ドル=100円を切りましたが、瞬間的にドル高に戻り、今日まで1ドル=100円台を切ったことは1度もありません。そういう意味でも、トランプ大統領勝利は、株高、ドル高になる可能性があります。とは言え、ドル高円安の目安は1ドル=120円程度で、この壁を突破するのは難しいかもしれません。

 一方、バイデン氏が大統領選挙に勝った場合、株は売られ、ドルも売られると考えられます。米国株式は暴落し、急速な円高が進む可能性が指摘されています。ただし、現在のコロナに対する経済対策で、民主党は共和党以上の大規模な経済支援を打ち出しており、仮にバイデン氏が当選すれば、大規模な経済対策が実施されることになります。株価を押し上げてドルが買われることになり、言い換えれば、どちらが勝っても金融マーケットには大きな影響が出ない可能性もあります。

 むしろ、トランプ氏が先日指名した連邦最高裁判事のエイミー・バレット氏の影響の方が大きいかもしれません。米国の連邦最高裁判事の任期は終身ですから、40代のバレット氏は今後30年間以上に渡って、最高裁判事の職に就く可能性があります。トランプ大統領が指名した保守系判事はこれで3人となり、9人中6人が保守系判事となります。オバマケアの廃止や銃規制の後退、大統領選挙の法廷闘争などなど、大きな影響が予想され、米国全体の価値観が今後数十年に渡って保守に傾倒することになるかもしれません。

 ――米大統領選以外で注目したいのは?

 やはり、新型コロナウィルスによるパンデミックの第2波が世界的に始まりつつあることが大きな懸念と言えます。第1波以上に実体経済に影響をもたらすことが予想されます。感染者数第1位の米国では、ペロシ米下院議長が、大統領選前に追加経済対策でムニューシン米財務長官と協議をしていますが、経済対策の規模で1兆ドル(約106兆円)の隔たりがあり、大統領選前までに合意できるかは微妙です。

 10月2日に発表される9月の米雇用統計も非農業部門の新規雇用者数は86万人増と予想されており、前月の137.1万人より減少すると予想されています。失業率も、前回の8.4%が好結果過ぎて今回はやや揺り戻しが来て悪化するかもしれません。

 米国以外で注目すべきは、1月末に欧州連合(EU)を離脱した英国とEUとの自由貿易協定(FTA)の行方でしょうか。ジョンソン英首相が設定した合意期限の10月15日までに合意できなければ、英国は合意なき離脱となります。仮に、FTA延長で合意できなければ、英国の自動車等にかかる関税は10%以上と言われています。合意なき離脱になった場合は、やはりユーロや英国ポンドに大きな影響が出ると予想されます。

 ――10月の各通貨の予想レンジは?

 9月相場では、ユーロの強さが目立ち「1ユーロ=1.20ドル」を超えるところまで進みました。ただ、今後はコロナ第2波の影響や英国の合意なき離脱問題があるため、これまでとは違った展開になるかもしれません。いずれにしても米大統領選の不透明感が日に日に高まっていくことが予想され、相場はボラティリティーの大きな荒れた相場になる可能性もあります。ある程度ポジションを抑えながら、大統領選の本番に備えたいものです。

 菅政権に変わった日本では、10月28日-29日に日銀の金融政策決定会合があります。大きな変化はないと予想されますが、一応要注目です。10月の予想レンジは次の通りです 

●ドル円・・1ドル=103円-107円
●ユーロ円・・1ユーロ=121円-128円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.15ドル-1.20ドル
●英ポンド円・・1ポンド=131円-139円
●豪ドル円・・1豪ドル=73円-77円

 ――10月相場で注意する点を教えてください。

 10月相場は、11月3日の米大統領選を迎えるにあたって、その前後は変動幅の大きな展開が予想されます。4年前もそうであったように、事前の予想は極めて難しい選挙になると考えた方がいいでしょう。言い換えれば、10月は米大統領選の混乱をどう回避するのか・・・、そのための準備期間と考えられます。

 できれば10月いっぱいまでに、どんな状況にも対応できるように準備したいものです。米大統領選の情勢を注意深くチェックしながら、ポジションを整理して本番を迎える準備をしましょう。

 また、北半球が冬に入るにあたって、コロナのパンデミックがどの程度拡大していくのか・・・。場合によっては景気の低迷が深刻となり、これも為替相場を見る上で大切になります。(文責:モーニングスター編集部)。