ドル円は前日とほぼ同じ水準で推移。良好な経済指標にドルが買われ106円15銭まで上昇したものの、米金利の低下に上値が抑えられる。ユーロドルは続伸し、2018年5月以来となる1.2台に乗せる。1.2014まで上昇した後、達成感とECB高官の発言から反落。

 株式市場は反発。ダウは215ドル上昇し、ナスダックとS&P500は最高値を更新。債券は続伸。長期金利は0.66%台へと低下。FRB理事の発言が買い材料に。金は小幅ながら3日続伸。原油は反発。

8月ISM製造業景況指数        → 53.1
8月マークイット製造業PMI(改定値) → 56.0

ドル/円   105.79 ~ 106.15
ユーロ/ドル 1.1901 ~ 1.2014
ユーロ/円  126.13 ~ 127.07
NYダウ   +215.61 → 28,645.66ドル
GOLD   +0.30   → 1,978.90ドル
WTI    +0.15   → 42.76ドル
米10年国債 -0.036  → 0.669%

【本日の注目イベント】

豪  豪4-6月期GDP
欧  ユーロ圏7月生産者物価指数
英  ベイリー・BOE総裁ら、議会委員会に出席
米  8月ADP雇用者数
米  ベージュブック(地区連銀経済報告)
米  ウィリアムズ・NY連銀総裁、オンラインセミナーで講演
米  メスター・クリーブランド連銀総裁講演(バーチャル形式)
米  デイリー・サンフランシスコ連銀総裁講演

 8月のISM製造業景況感指数は「56.0」と、今年最も良好な数字でした。これで3カ月連続で節目の「50」を上回りました。特に新規受注の伸びが「67.6」と好調で、全体を押し上げた格好になっています。一方、雇用は「46.4」と、依然として「50」を下回っており、製造業における人員削減が続いていることを示しています。

 ブレイナードFRB理事はバーチャル形式のイベントで講演し、「今後数カ月は、金融政策が安定から緩和的に転換することが重要になろう」と述べ、新型コロナウイルスの感染拡大からの米国の回復を支えるため、金融当局と財政当局の両方からの支援継続を呼びかけました。また、先週2%を超えるインフレ目標を容認する姿勢を見せたFRBの金融政策についても、平均的に2%を上回る物価目標を目指す旨の発言を行っています。この発言を受け、債券が買われ長期金利が低下したことから、ドル円はやや軟調な展開となっています。追加の景気対策の規模を巡って対立が続いている議会でも、メドウズ米大統領首席補佐官がCNBCで「上院共和党は約5000億ドル(約53兆円)規模の法案を来週提示する可能性がある」と語り、一部民主党議員との協議が進展していることを示唆しています。株式市場ではこの発言を好感し、ダウは大きく反発し、ナスダックとS&P500は最高値を更新しました。特にナスダックは6月末に1万ポイントの大台を達成しましたが、アマゾンやアップルなど、IT株が上昇をけん引する形で1万2000ポイントも視野に入ってきました。金余りに加え、コロナの影響による「すごもり効果」だけでは説明できない水準と、言えなくもありません。

 一方地政学的リスクはこれまでになく高まっています。中国とインドによる国境の係争地域でのにらみ合いは続き、お互いに相手側が実行支配線を侵略したと批判し合っています。インドの外務大臣は「(国境紛争が起きた)1962年以降で最も深刻な状況だ」と述べています。また内モンゴル自治区で「標準中国語」による学校教育を強化する中国政府の方針に反対する抗議活動は、中国で30年ぶりの規模に達しているとの報道もあります。この様な中、急速に増強を続けている中国の軍事力について、米国防総省は年次報告書で警告しています。中国は大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)と潜水艦発射ミサイル(SLBM)、巡航ミサイル搭載戦略爆撃機の3本を柱とする核戦力「トライアド」の確立が目前に迫っていると指摘し、「今後10年で核戦力を拡充および多様化させ、保有核弾丸の数を少なくとも倍増させる公算が大きい」と分析しています。さらに、「台湾を武力で統合する能力を磨くことに重点の多くが割かれている」と主張しています。(ブルームバーグ)先週は、南シナ海にミサイルを威嚇的に4発発射するなど、米国側も警戒を強めているようです。

 ユーロドルが2018年5月以来となる1.2台に乗せました。この欄でもユーロには強気だと述べてきましたが、1.19台後半では何度も跳ね返されてきたものが、昨日のNYでは1.2014までユーロ高が進みました。ただその後はECBのレーン理事が、「ユーロドルのレートは重要だ」と発言したことが伝わり、大きく値を下げています。1.2まで上昇したことで「達成感」が出たことと、持ち高が大きくユーロ買いに偏っていることから、利益確定の売りに押されましたが、トレンドは継続されそうです。ユーロドルは上方にあるレジスタンスをことごとく突破して上昇して来たため、チャートでは「月足」に頼るしかありません。その「月足」では、雲が1.20台後半から1.21台前半にあります。当面はこの水準が重要なレジスタンスになろうかと思います。また今後昨日のレーン理事のように、ECB高官からユーロ高をけん制する動きも予想されます。ドイツを中心とするユーロ圏経済は輸出依存度が高く、ユーロ高はコロナから回復基調にある景気に水をさすことになり、さらにユーロ高が続くと、ユーロ圏の景気にとってマイナス効果となるからです。

 本日のドル円は105円40銭~106円30銭と昨日と同水準を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)