モーニングスター <4765> は7月21日、2021年3月期の第1四半期決算を発表した。新型コロナウイルス感染症の影響により、セミナースポンサー収入を中心としたメディア・ソリューション事業の落ち込みなどのため、売上高は4.4%増収を確保したものの、営業利益は8.7%の減益となった。ただ、金融機関の投信販売等で活用されているタブレットアプリ事業などは順調に進展し、かつ、今期から業績にフル寄与する運用子会社の運用受託残高も大幅に拡大している。当日、決算説明会を開催し、同社代表取締役社長の朝倉智也氏(写真)は、「業績の最悪期は脱した。この6月に上場20周年を迎えた記念すべき年度であるので、20年3月期まで続けてきた連続増益・最高益更新の記録更新をめざし、第2四半期以降の巻き返しを図っていきたい」と語っていた。

 同社四半期業績を対前四半期(20年1-3月期)と比較すると、営業利益は12.9%増、経常利益は11.4%増と2ケタ増益となり、1-3月期をボトムとして収益が回復基調に転じていることがわかる。業績のボトムアウトを支えたのは、同社が進めてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)の進化と、19年末に買収した運用子会社2社の成長がある。

 前年同期比との比較では、サービス別売上高でメディア・ソリューション(ウェブ広告&セミナー)が48.5%減収、公募投信を提供するSBIアセットマネジメントが20%減収と振るわなかった。減収幅が大きかったメディア・ソリューションは、例年であれば開催していた大規模セミナーが中止されたことによるスポンサー収入の減額の影響がでている。これに対し、同社はDXの進展によって拡大しているウェブサイトのページビュー(PV)やスマートフォンアプリの拡大を背景に、YouTubeチャネルの積極展開などに注力し、オンラインセミナーを積極的に推進。今後も対面セミナーの開催を慎重に進める必要があることにも配慮して「対面」と「オンライン」を組み合わせた「ハイブリッドセミナー」を企画推進している。

 また、SBIアセットメネジメントは、「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」が19年9月の設定から10カ月で残高が500億円を超える規模に成長。7月に「SBIポストコロナファンド」を新規設定し、さらに、ピクテ投信投資顧問と初めて協業した「SBI-ピクテ アジア・ハイテクベンチャー・ファンド」の募集が始まるなど、復調に向けた取り組みを進めている。

 一方、順調に拡大しているタブレットアプリは、前年同期末と比べて提供社数は320社から444社に38.8%増加。提供タブレット台数も7.76万台から9.22万台へと18.8%増となった。タブレットアプリ向けのファンドデータ収入も前年同期比14.2%増と2ケタ増収になっている。タブレット台数が9万台を超えたことによって、同端末ネットワークの広告宣伝としての価値が高まり、運用会社が独自に制作する動画等を広告として掲載するニーズも高まってきている。また、金融機関が対面販売を慎重に進める中、オンラインで投信販売を推進するためのツール(ライフプランシミュレーション、ロボ・アドバイザー、相続シミュレーションなど)への関心も急速に高まっているという。

 そして、昨年末にSBIボンド・インベストメント・マネジメントとSBI地方創生アセットマネジメントを加えた同社グループの運用資産残高は7月20日現在で2兆円を突破した。19年6月末は1兆3171億円だったため、53.5%増となっている。特に、新たにグループに加わった2つの子会社は、地域金融機関から受託する運用資産の残高が大きく伸びている。6月末時点で2社合計の運用残高は1兆2562億円とグループ加入前の8282億円から51,7%増。19年6月末比では約92%増とほぼ倍増している。この背景には、地域金融機関が地方での融資拡大に苦慮し、資産運用を強化していることがある。金融庁も地域銀行の経営改革の視点として、有価証券運用の外部専門家・外部機関の活用をあげており、地域金融機関向けの専用私募ファンドを提供する運用会社へのニーズが高まっている。

 朝倉氏は、運用子会社2社の成長について、「昨年、東証1部への指定替えを見送った理由として、運用子会社2社の買収を優先したことがあった。その折に買収した2社が、グループ化の後に、急速に業績を伸ばして、今期の厳しい業績を下支えする役割を担っている」と語っている。同社では運用子会社の戦略として「株式、債券等の流動性の高い資産と相関性が低く、利回り向上が見込まれるヘッジファンドやオルタナティブ(金や再生可能エネルギー、暗号資産など)をラインナップにそろえ、より広い運用ニーズに応えられるようにしていきたい」と語っている。一段と運用会社の育成にも注力する意向だ。