新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)で実施された世界主要都市のロックダウン(都市封鎖)は、各国の経済や雇用に甚大な影響を与えた。5月以降に経済活動は緩やかに回復しつつあるが、感染拡大の終息には長い時間がかかりそうだ。J-REITマーケットにもコロナショックは大きな影響を及ぼした。東証REIT指数は3月19日には2013年1月以来の安値となる1,145.53pt(終値)を記録した。その中で、物流系REITや住宅系REITは、相対的に堅調なパフォーマンスを示している。住宅系REITを代表してコンフォリア・レジデンシャル投資法人を運用する東急不動産リート・マネジメント常務執行役員コンフォリア運用本部長の伊澤毅洋氏(写真)にポートフォリオの魅力や足元の運用状況のほか、今後の戦略を聞いた。

 ――コロナショックとも呼ばれる今回の金融不安についてどのように捉えていますか? また、J-REITマーケットの見方は?

 3月はリーマンショック時に経験したときと同じような感覚を受けました。3月16日に日銀が緊急で金融政策決定会合を開催し、J-REITの年間買入枠を従来の倍となる1,800億円まで増額させたにもかかわらず、3月19日にはJ-REIT指数が1,100pt台まで急落し、この局面で不動産以外の要因で急落していると感じました。実際、3月23日に米FRBが臨時FOMCを開き、量的緩和を当面無制限とする措置を決定して以降、J-REIT指数は急激に回復しました。3月のJ-REITマーケットは、新型コロナをきっかけとして、金融市場の信用リスクが改めて見直された局面だったのではないかと思っています。

 また、コロナ禍による不動産市況への影響がどのようにJ-REITマーケットに影響するかといった点は、まだ不明な点も多く、明確なことはいえません。ただ、不確実性が強まっているので、これまで以上にリスクプレミアムが上乗せされた水準で取引されているように感じます。一方で、住宅や物流セクターのような安定性の高いアセットタイプは、値持ちのよい状態が続いています。これは、収益の安定性を求める投資家のニーズが根強いことを表しており、コロナ禍の収束が見通せるまでは、こうした傾向が継続すると考えています。

 ――賃貸住宅は安定性が評価されているとのことでしたが、そもそも賃貸住宅はどのような点が安定的ということでしょうか?

 賃貸住宅の特徴の一つに、他のアセットタイプと比べ、テナント数が非常に多いことが挙げられます。比較的小規模な賃貸住宅でも30~40戸程度の規模となっています。コンフォリアの場合、約1万戸のテナント様がご入居されており、契約締結時期が分散しているため、一度に大量の空室や、大幅な減収が発生しにくい構造になっています。

 また、マクロ的にみると住宅の家賃は、景気や企業業績に左右されやすい事務所家賃に比べ、相対的に安定性がみてとれます。この理由は、戸数が多く分散している点に加え、家賃負担の原資となる賃金収入等が、企業業績ほどには変化しない点、また近年では、ダブルインカム家庭も増えており、世帯としては家賃負担力が増している点などが挙げられると思います。なお、家賃については保証会社の活用により、未収リスクもヘッジしています。

◆東京23区に駅徒歩5分以内という稀有の住宅ポートフォリオ

 ――安定セクターの中でもコンフォリアはどのような点について評価されているとお考えですか?

 コンフォリアは保有物件の立地に特徴があります。東京23区比率91.6%、かつ、最寄り駅までの平均徒歩分数は5分を切っており、賃貸マンションの競争力において、もっとも重要な利便性に重きを置いた立地戦略をとっています。これは、この地域の賃貸マーケットの需給が非常にタイトな点に着目しているからです。

 東京23区は、若年層(15歳~39歳)の人口流入が日本の大都市の中で突出しており、2019年には約9万人の転入超過となっています。住宅の需要面で住人が増え続けていることは大きなポイントです。一方、供給面となる賃貸住宅の着工戸数では、リーマンショック前の2006年に年間約4万戸をマークしましたが、その後は年間2-3万戸と、少ない水準に留まっている状況です。いわば、需要が供給を上回る状況が累積的に続いており、需給がタイトになっています。こうした需給環境を背景に、近年では比較的競争力のある物件の空室率は低位で推移している状況と認識しています。

 更にコンフォリアでは、便利な駅近物件を多く保有し、競争力を備えるようにしています。一般的に賃貸住宅は築年数の経過とともに賃料が下がっていく傾向がありますが、近年では築10年を超えても賃料は逆に上がり続けており、直近期の決算ではテナント入替時の賃料上昇率は8%程度上昇するなど、賃貸住宅の本来の魅力である安定性に、成長がプラスされた形となっています。

 また、コンフォリアのもう一つの特徴は、包括的なスポンサーサポートです。デベロッパーである東急不動産によるコンフォリアシリーズの新規開発、東急住宅リースによる物件の運営・管理、そして東急リバブルによる売買情報の提供など、東急不動産ホールディングスグループのリソースを最大限活用しています。そもそも東京23区の駅近物件自体、希少な存在であり、新規開発が難しいのですが、デベロッパーである東急不動産が大きな役割を果たしており、コンフォリアの資産成長を確かなものにしています。

 このほか、財務面においても安定性を意識しています。借入れについては、長期化・固定化を意識した運用を実現しており、直近期末時点(2020年1月末時点)で平均残存年数4.2年、固定金利比率93.6%となっています。また、総資産有利子負債比率(簿価ベース)は、50%前後を意識して安定的な運用を心掛けており、2020年3月末時点で49.4%となっています。なお、一般的に住宅REITは、総資産に占める有利子負債の比率が相対的に高くなる傾向があります。これは他のアセットタイプと比較して、1物件あたりの規模が小さいことにより、市況悪化時においても換金性が高い資産であることが背景にあると考えています。

 ――実際、コロナ禍の状況において運用状況はどのような状況になっているのでしょうか? 

 3月から4月にかけては、人事異動等で引っ越しシーズンがピークを迎えたわけですが、前年同期に比べると入替件数はやや少なめとなりました。コロナ禍により人の移動制限が要請される中、転勤等必要に迫られた方を除き、転居する人が少なかったことや、仲介店舗の営業が縮小していたことが、その理由と考えています。

 賃貸住宅の場合、例えばデパートの休館のように、人の利用がなくなるわけではなく、むしろステイホームが推奨される中、引き続き高い稼働状況が続いていくとみています。まさに、安定性の高いアセットタイプとしての特性はこうした状況において、一層発揮されているのではないかと考えています。

 一方で、コロナの影響が長期化し、経済全体が下振れた時に想定される運用上のリスクとしては、(1)企業業績の悪化に伴う賃金水準の低下による賃料への影響、(2)企業の業績の悪化を契機とした信用コストの増加等があげられます。このうち、賃金については一定程度、下方硬直性が認められることから、大幅な下落はないと考えています。また、信用コストについては、今後の経済環境次第で、なんとも言えない所ではありますが、大幅な信用不安が生じた場合であっても、比較的余裕のある手元資金を活用して対応できるよう日頃から留意しています。

 ――現下の状況における運用戦略は?

 賃貸住宅の特性を活かし、これまでと同様に安定した運用を意識していきたいと考えています。具体的には、「東京23区」所在の「駅近」物件を中心とした質の高いポートフォリオを維持しつつ、スポンサーである東急不動産を中心とした東急不動産ホールディングスグループのサポートを最大限に活用し、着実に投資主価値向上を図ってまいります。

 コンフォリアの資産規模は、J-REITの中では中堅クラスの資産規模であることから、ポートフォリオの安定性拡大の観点からも資産規模の拡大は必要であると考えています。スポンサーは、現在東京23区を中心として26物件を開発、リースアップ中です。このような開発物件を継続的に組み入れることで、さらに競争力のあるポートフォリオを構築していきたいと考えています。

 また、運用面は、引き続き、テナント入替時を中心として賃料収入を積み増していきたいと考えています。東急不動産ホールディングスのグループ会社には、東急スポーツオアシスや、福利厚生サービスを提供するイーウェルなど、入居者向けサービスを提供する企業があります。コロナの環境下ですが工夫しながら知恵を出し、グループリソースを活かしながら、入居者満足度を高め、入居期間の長期化に繋げてまいります。

 一方、コロナ禍による影響は財務面への影響も懸念されるところではありますので、手許現預金の有効な活用も検討していきたいと考えています。コンフォリアは、比較的築浅の物件が多く、大規模な工事支出が相対的に少ないことや、物件入替時の売却益を一部内部留保していること等により、日ロジさんと同様にフリーキャッシュを多く保持しています。フリーキャッシュは、優良物件の取得資金のほか、金融不安時における借入金の返済資金等、様々な選択が可能なため、市況を踏まえ、適切に活用していきたいと考えています。

 ――物件の特性を活かしつつ安定的な運用を心掛けていることが確認できました。そもそも、J-REITは賃料というインカムゲインを中心に安定的な配当を享受することを想定して作られた制度といえます。「安定」というキーワードは特に現下のマーケット環境において最も重視されるキーワードといえ、これからの取組みには注目していきたいと思います。最後に投資家の方々へのメッセージをお願いします。

 コロナ禍で先行き不透明な折、住宅REITの特性を発揮するとともに、アフターコロナを見据え、戦略的に次の成長に備えたいと考えています。危機だからと内に籠ることなく、成長機会を逃すことなく、更なる投資主価値の向上に努めてまいります。(情報提供:モーニングスター社)