ドル円は東京時間の午後からNY時間の朝方まで107円台前半で推移したものの、トランプ大統領の中国に対する制裁が思ったほど厳しい内容ではなかったことからドルは上昇。107円89銭まで買われる。ユーロドルは続伸。一時は1.1145までユーロ高が進む。ユーロ圏の景気回復期待がユーロショートの巻き戻しを誘発。

 株式市場はまちまち。ダウはマイナスで終わったが、ナスダックとS&P500は反発。債券相場は続伸。長期金利は0.65%台へと低下。金は大幅に反発。原油は続伸し35ドル台に。

4月個人所得               → 10.5%
4月個人支出               → -13.6%
4月PCEコアデフレータ         → 1.0%
5月シカゴ購買部協会景気指数       → 32.3
5月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 72.3

ドル/円   107.09 ~ 107.89
ユーロ/ドル 1.1081 ~ 1.1145
ユーロ/円  119.16 ~ 119.90
NYダウ   -17.53 → 25,383.11ドル
GOLD   +23.40 → 1,751.70ドル
WTI    +1.78  → 35.49ドル
米10年国債 -0.037 → 0.653%

【本日の注目イベント】

中  中国5月財新サービス業PMI
米  5月ISM製造業景況指数
米  5月マークイット製造業PMI(改定値)

 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」・・・トランプ大統領は中国が「香港国家安全法」を導入したことをこのように批判し、29日には中国に対する制裁の内容を発表しました。既に報じられていたように、香港に対する関税や渡航の優遇措置を撤廃し、安全保障上のリスクと見なした中国人の入国を停止するなどの制裁を発表しました。ただ、この内容は貿易関税引き上げなどには触れておらず、思っていたほど厳しいものではなかったことから、株式市場ではナスダックなどが上昇して引けています。

 これに対して中国は直ちに反発し、中国共産党の機関紙人民日報は「29日に示した計画は中国に対する言語道断の介入であり、失敗する運命にある」と報じています。また香港政府も、中国政府による国家安全法制定の方針は、同国の「合法的な権利」の一部だとしてトランプ大統領の措置は「正当化されない」との立場を表明しました。中国の崔天凱駐米大使は、ブルームバーグとのインタビューで、香港の安全に最終的に責任を持つのは中国中央政府だと説明し、国家安全法は「法律を順守する市民を守る」と主張し、その上で「香港での抗議活動は中国政府にとって越えてはならない一線を越えた」とし、「香港は混乱状態、中国の国家安全はリスクにさらされている。このため、中国政府は行動を選んだ」と述べています。

 トランプ大統領はまた、WHOとの関係を終わらせることも表明しています。かねてからトランプ氏はWHOについて、「中国寄りだ」と批判しており、新型コロナウイルス感染拡大について正確な情報提供ができなかったと主張していました。29日のホワイトハウスでの会見では、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」と述べました。

 ドル円は先週金曜日にはトランプ大統領の中国への制裁を警戒する動きから、107円09銭まで売られる場面がありましたが、その後は発表された制裁の内容がそれほど厳しいものではなかったことで、107円台後半まで値を戻しています。ただ気になるのは「香港国家安全法」の制定だけではありません。米国では、白人警官の暴行による黒人死亡事件をきっかけに抗議活動が広がり、一部の地域では暴動化しています。ミネソタ州ミネアポリスで発生した暴行事件に抗議する活動は、NY市などで大規模なデモとなり、全米25都市では「夜間外出禁止令」が出されています。新型コロナウイルスの感染拡大がようやく収まりかけ、経済活動の再開が段階的に行われている状況ですが、今後抗議活動がさらにエスカレートするようだと、米景気の足を引っ張ることにもなり、ドル安要因になる可能性があります。

 それにしてもドル円は動きません。円以外の主要通貨ではドル安が進み、ユーロドルは1.08前後から、2カ月ぶりに1.1台半ばまで買われています。この間ドル円は107円台でほとんど動いていなかったことから、ユーロだけ上昇した分、ユーロ円は120円近辺まで「ユーロ高・円安」が進行しています。また、豪ドル円も71円台半ばを超えてきました。クロス円上昇のほとんどが、ドル円が107円台で動かないことが「主因」になっていると考えられます。「円の出遅れ感が、将来の円高へのマグマになっている」と言ったら言い過ぎかもしれませんが、注意する必要はあろうかと思います。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)