新型コロナウイルスによる緊急事態宣言から3週間が過ぎた。他の欧米先進国と異なり、国民の自主性に頼った感染症対策だが、相変わらずPCR検査の実施数が少なく、陽性者を見つけて隔離すると言う感染症対策の基本ができていない日本では、パンデミック収束のメドは立っていない。ここのままズルズルと緊急事態宣言が解除できずに、経済の低迷が続くことが予想される。こんな状況で5月の為替市場はいったいどんな動きになるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に5月の為替相場の行方をうかがった。

 ――日本銀行が金融緩和の体制を強化しましたが、為替市場に影響はあるのでしょうか?

 日本銀行は、27日の金融政策決定会合で国債買い入れの上限であった80兆円を撤廃し、制限なく必要な量を購入すると発表しました。事実上の無制限買い入れが可能になります。さらに社債やコマーシャルペーパー(CP)の買い入れも7.4兆円から20兆円に拡大。社債やCPの市場規模に対して20兆円は大きな金額になりますが、新型コロナウイルスによる景気の落ち込みを防ぐ意味が強いと思われます。

 政府は、新型コロナウイルスへの対応策として事業規模117兆円の緊急経済対策を示しましたが、日銀が今後予想される国債の大量購入に対応することで、金利上昇を抑制し、財政政策と金融政策の相乗効果を高める狙いがあるといえます。

 とは言え、市場にとってサプライズはなく、想定の範囲内であったために、為替相場には大きな動きはありませんでした。

 ――米国は世界最多の感染者数になりましたが、景気はどうなるのでしょうか?

 4月29日に公表された米国の2020年1-3月期のGDPは-4.8%。外出禁止令が出た3月が入っていたため注目されましたが、そう大きなマイナスではありませんでした。しかし、米議会予算局(CBO)が4-6月期のGDP前期比を-39.6%と予測しており、リーマンショック直後の2008年10-12月期の-8.4%を大きく下回る数字になっています。

 この4月28日-29日にかけて行われたFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、金利据え置き、量的緩和維持の方針を打ちだしました。すでに、前回のFOMCで政策金利のFF金利の誘導目標を0-0.25%としており、事実上のゼロ金利政策を維持しています。パウエルFRB議長は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を中期的にも著しいリスクととらえて、「あらゆる手段を行使する」と改めて発言しています。

 一部の州で外出禁止令が緩和されつつありますが、最も感染者数の多いニューヨーク州など、まだまだパンデミックの収束には時間がかかりそうです。とはいえ、CBOの予測では年後半には回復するとみており、7-9月期には+23.5%という強気の予測が出ています。ニューヨーク市場のダウ平均株価はすでに2万4600ドル(4月29日現在)まで回復しつつあり、すでに半値戻しの段階まで来ています。

 ――欧州ではスペインが試験的に経済活動を回復させつつありますが・・・?

 英国はまだまだ時間がかかりそうですが、スペインなどは条件付きで外出を許可する動きが出ています。先行き不透明ですが、徐々に外出禁止緩和の動きが出て、景気は回復への道をたどっていくものと思われます。

 ECB(欧州中央銀行)は、3月の理事会で今年の債券買い入れ規模を1兆1000億ユーロに拡大する資産購入プログラムの導入を決めていますが、4月30日の理事会でも主要政策金利と中銀預金金利を据え置き、さらに市中銀行への長期資金供給については金利をマイナス1%まで引き下げる方針を示しました。

 ECBは国債だけではなくジャンク債に至るまで買入れることを表明していますが、ドイツなどは強く反対しており、今後の推移が注目されるところです。欧州連合(EU)統計局がこの30日に発表した1-3月期のユーロ圏内のGDP速報値では、前期比-3.8%の減少となり1995年の統計開始以来、最大の減少率を示しました。

 オーストラリアなども、4月に入ってから新型コロナウイルスの感染者増に歯止めがかかっており、加えて中国の経済が動き始めたこともあって、やや豪ドル市場に勢いが出ているようです。

 ――日本では5月7日に自粛が緩和される見通しは立っていませんが・・・?

 中国、韓国、台湾という具合に東アジアでは、日本を除いて新型コロナウイルスによる感染拡大から復活する動きがみられています。ここに欧米の回復も顕著になってくれば、日本だけがパンデミック回復の兆しが見えていない状況となり、日本経済にとっては不透明な状況が続くと考えられます。

 とはいえ、これが為替相場に影響して大きく円が売られる、あるいは長期金利が上昇するといった流れにはならないと考えて良いでしょう。1ドル=110円台が壁となっており、なかなかこれを超えて円安に振れていく可能性は低そうです。

 110円台を超えたとしても、112円40銭という昨年来の「壁」があり、この上値を超えていくのは難しそうです。問題は円高がどこまで進むかですが、PCR検査が進まず、感染拡大の実態が正確につかめていない現状では、なかなか円を買っていく動きにはなりそうもありません。

 ――5月の各通貨の予想レンジを教えてください。

 国債の無制限買入れや社債、CPの買入れを表明した日銀ですが、米国の金利もゼロとなったいま、市場は膠着状態が続くと考えられます。新型コロナウイルス収束のめどが立たない限り、市場はいつ想定外の動きをしてもおかしくないと考えた方がいいでしょう。

●ドル円・・1ドル=106円-110円
●ユーロ円・・1ユーロ=113円-120円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.05ドル-1.11ドル
●英ポンド円・・1ポンド=130円-139円
●豪ドル円・・1豪ドル=66円-70円

 ――5月相場の注意点を教えてください。

 結論から言えば「こまめにやるしかない」と思います。ドル円の想定レンジでは1ドル=106円-110円と予想していますが、何かのニュースでその想定を簡単に超えてくるのが、こうしたパンデミックの時代の特徴です。ポジションを抑えて、こまめに売買を繰り返す取引がいいと思います。

 また、注意したいのはゴールデンウイーク期間中のボラティリティーの大きさです。例年であれば、日本市場がクローズとなるゴールデンウイーク終盤には、大きな変動幅が想定され、円安、円高共に大きく振れる可能性があります。緊張感をもって投資しましょう。(文責:モーニングスター編集部)。