世界中で「新型コロナウイルス」による感染拡大が止まらない。感染爆発している地域もイタリア、フランス、ドイツ、英国といった欧州に次いで米国にも拡大し、いまや米国だけで20万人が死亡するのではないか、という予測まで出ている。そんな中で、日本だけが異様なほど感染者数が抑えられているが、ここに来て急速にその数を増やしている。ドル円相場をはじめとして金融マーケット全体が、変動幅の大きい、不安定な値動きを続けている。こんな状況で、4月の為替市場はどんな動きになるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に4月の為替相場の行方をうかがった。

 ――パンデミックの勢いが止まらず、金融市場は大きく変動していますが・・・?

 新型コロナウイルスによる感染者数は、いまや70万人(3月31日現在)に達し、死者数も3万人(同)を超えています。そんな状況の中で、3月下旬に各国が一斉に景気刺激策を発表しました。株式市場をはじめとして為替市場や債券市場でも、先行きを好感し、価格を元に戻す動きが目立ちました。大きく下落した金価格や原油価格もやや元に戻る動きがみられました。

 とりわけ、米国は総額で2憶8000億ドル(302兆円)という、リーマンショックを遥かに上回る規模の景気刺激策を発表。米国GDPの13%にも及ぶ大きなものになりました。一直線の下落にやっと歯止めがかかった、という状況です。

 とはいえ、4月3日に予定されている米雇用統計の「非農業部門雇用者数」ではマイナス10万人と予想されており、新型コロナウイルスの影響が反映されていなかった2月のプラス27万3000人からは様変わりすることになります。失業率も3.5%から3.8%へと悪化が予想されていますが、4%程度まで拡大するかもしれません。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、日に日にひどくなっており先行きが見通せない不安が広がっています。すでに米労働省が3月26日に発表した「新規失業保険申請件数」は330万人となり、その前の週とは桁違いに増えています。それでも、政府の経済政策期待から株式市場をはじめ、債券や為替、金価格、原油相場などが一斉に価格を戻し、一直線に下落する恐怖感からやや解放されたと言って良いでしょう。

 ――為替市場、特にドル円相場は分かりにくい展開が続いていますが・・・?

 やはり新型コロナウイルスのような世界的な危機では、大きなトレンドとしては「ドル買い」傾向が強まるのは確かですが、加えて日本円も円高になる傾向があります。簡単に言えば、ドルと円が買われると考えていいでしょう。

 一時期、ドル円は1ドル=111円台まで円安が進みましたが、この動きはドル資金の調達不安から金融不安に拡大したため「リスクプレミアム」が高まり、ドルが急に高くなりました。その後、FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行といった中央銀行が、大量のドル資金供給に動きドル高相場が落ち着きを取り戻しました。

 とはいえ、今回のパンデミックでは、その収束時期が見えておらず、5月や6月になっても現在のリスクが続いている状況は十分に考えられます。そういう意味では、今後またリスクプレミアムが高まるようなことがあれば、再びドルや円が買われる可能性があります。

 ――日本ではいまだ感染爆発は起きていませんが、今後、想定される状況とは?

 緊急事態宣言がまだ発令されていない状況とはいえ、いつ日本がイタリアやスペイン、米国のような状況に陥るかわかりません。仮に日本で感染爆発がおこれば、やはり株、円、債券が売られる「トリプル安」いわゆる「日本売り」の状態に陥ると考えるのが自然です。

 感染爆発が起きた後のドル円相場は、極端な円高が進むか、もしくは超円安に陥ると考えがちですが、円高進んだとしても1ドル=105円程度、円安になっても110円程度ではないかと考えています。仮に、この想定範囲を超えた場合はさらなる円高、もしくはさらなる円安のステージに上がってしまうかもしれません。最近の株式市場がそうだったように、一直線の円高、もしくは、円安という可能性は低いように思います。

 また注意したいのは、日本がここで年度替わりをすることです。たとえば、「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」は、年度が変わったことを機に「外国債券」運用で、年金積立金に占める外債比率を25%に引き上げています。これまで最大19%だった外債運用が拡充されることになります。

 さらに、この4月からは、資産ごとの運用比率をいずれも25%とし、国内債券の比率などを10%引き下げて外国債券の投資に回すことになりました。為替変動の影響をまともに受ける年金資金を、リスクの高い金融商品で運用することになります。大きな賭けにならないといいのですが、為替市場への影響はあるかもしれません。

 ――1月の各通貨の予想レンジを教えてください。

 外国為替の企業決算などに合わせた「レパトリ」はすでに大半が済んでおり、大きな影響にはならないと思います。パンデミックの状況次第という条件付きですが、4月の予想レンジは次の通りです。

●ドル円・・1ドル=105円-110円
●ユーロ円・・1ユーロ=116円-122円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.06ドル-1.12ドル
●ポンド円・・1ポンド=130円-140円
●豪ドル円・・1豪ドル=63円-69円

 ――4月相場で注意する点を教えてください。

 金融市場には、「落ちてくるナイフは掴むな」という投資格言がありますが、この格言はこういう時期に当てはまるものと考えて良いでしょう。為替相場が予想レンジ内で動いてくれれば、勝機もあるかもしれませんが思い通りにはいかないのが相場です。

 ここはやはり、「慎重に判断すること」そして「ポジションを減らすこと」が大切です。たった1日で1ドル=2円も動いてしまうような、変動幅の大きな相場であることを重々理解した上で、安易な投資を避けたいものです。

「コロナ騒動が終わればV字回復」と言った言葉をよく聞きますが、リーマンショック同様に何か危機が起きた場合は、本当の危機はその後にやって来ると考えた方がいいのかもしれません(文責:モーニングスター編集部)。