ニューヨーク市場のダウ平均株価は、1週間で3500ドル超、12%もの下落となり、リーマンショック以来の下げ相場となった。新型コロナウイルスによるパンデミック(感染爆発)懸念が、金融市場にも及んだ結果だが、世界経済は大きな正念場を迎えたと言っていいだろう。そんな中で、この3月の為替相場はどんな展開になるのか。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に3月の為替相場の行方をうかがった。

 ――株価の下落が止まりません。今後の展開は・・・?

  新型コロナウイルスによる感染拡大が世界中に蔓延し、WHOはパンデミックの可能性を「極めて高い」とするなど、世界中でこの新しい感染症に警戒心を強めています。実際に、2月24日の週はニューヨーク平均株価が3583ドル、12%を超す大暴落となりました。

 これは、リーマンショックの下落相場を超える下げ幅となり、金融市場は大きな節目を迎えたと言っていいでしょう。ニューヨークダウに限らず、ナスダックやS&P500もいずれも12%を越す下落幅となり、売りが売りを呼ぶ展開となりました。

 その一方で、米国長期国債の金利は過去最低レベルまで進み、1.163%(2月28日)まで下落。3月17-18日に行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.25%以上の金利引き下げがあるのではないかという期待が広まり、2月28日になってやっと売りの速度が弱まりました。とはいえ、利下げ期待の相場持ち直しは、新型コロナウイルスの影響とは直接の関係はなく、今後の動向は不透明です。

 実際に、2月29日に中国国家統計局が発表した2月の「製造業購買担当景気指数(PMI)」が、 前月より14.3ポイントも低い35.7となり、予想を10ポイント以上も下回る過去最低の低い数値となりました。今回のPMIは、新型コロナウイルスの拡大を全面的に反映した初めての経済指標であり、今後は予想を大きく裏切る景気指標が次々に出てくる可能性があります。今後も予断を許さない状況と言っていいでしょう。
 
 ――日本円は一時的に売られたものの、また円高に振れましたが・・・?

 ニューヨーク市場の株価が大きく下落し、世界的なリスクオフの状態では、円は安全資産として買われるのが普通ですが、今回は一時的に売られる状況になりました。特にドル円では、米国の感染拡大懸念の少なかった状況で、一時的に1ドル=112円台までドルが買われて円が売られました。しかしながら、その後株式市場の大きな下落とともに米国の長期金利が下落し、こうした状況の中では安全資産として日本円が買われたようです。

 2月の終わりに発表された米国の統計は、米国景気の強さを証明するものが数多くありましたが、新型コロナウイルスによる懸念は、それらをすべて払拭するものとなりました。ここまで来ると、景気指標の結果も市場からは無視される存在になってしまいます。

 3月17-18日に行われるFOMCで利下げが行われるのは確実と言っていいでしょう。FRBの利下げが決まれば少なくとも株式市場はやや落ち着くものとみられます。株価が下げ止まれば、米国の金利も下げ止まってドルが買われることになります。

 ――大きな下落相場の中で、今後の為替市場はどう動くのでしょうか?

 米国株が大きく下落する中で、為替相場は相変わらず1ドル=108~112円のレンジ相場になっています。2月28日には、さすがに米国市場で107円台をつけましたが、再び108円台に切り返すなど神経質な動きが続いています。

 ただ、今回の株価市場の大きな下落は、リーマンショックや東日本大震災時と比べて、その先行きが見えないところに大きな特徴があります。先行きが見えない不安を考えると、為替市場も今後どうなるか極めて不透明です。場合によっては、日本の感染拡大が大きくなり、再び円が売られるような展開になる可能性もあります。

 そうなったときに、かつて日銀の黒田総裁が示した円安の目安とも言える1ドル=125円、いわゆる「黒田ブロック」に近づくような円安もあるかもしれません。場合によっては、突破して更なる円安が進む可能性もあります。逆に、展開次第では円が大きく買われるような事態もあり得ます。そういう意味では、今の段階では相場の先行きが見通せません。

 ――3月の各通貨の予想レンジを教えてください。

 日銀の金融政策決定会合も3月18-19日にかけて行われますが、残念ながら日銀はあまり金融緩和の余地を持っていません。マイナス金利の拡大は、逆に社会不安を煽る形になってしまう可能性もあり、追加の金融緩和も限界に来ています。そういう意味では、米国よりも日本の不透明感の方が高いかもしれません。3月の予想レンジは次の通りです。

●ドル円・・1ドル=106円-110円
●ユーロ円・・1ユーロ=115円-121円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.09ドル-1.12ドル
●ポンド円・・1ポンド=135円-142円
●豪ドル円・・1豪ドル=67円-73円

 ――3月相場で注意する点を教えてください。

 今後しばらくの間は、新型コロナウイルス関連の情報によって、金融市場が大きく揺れ動く可能性が高いと思います。今回の金融市場のショックはリーマンショック級であり、しかも長期に及ぶ可能性も拭いきれません。

 リーマンショックや東日本大震災の際の相場の動きなどを参考にしながら、様々なニュースに対応していくことが必要であり、不確かな情報や思い付きで投資に走らない方がいいかもしれません。ポジションを控えながらニュースに注目していく方法が良いのではないかと思います。

 これまでの経験が役に立たない相場と言ってもいいのかもしれません。安易な逆張りはダメージを受ける可能性があります。(文責:モーニングスター編集部)。