今年も間もなく1年が終わろうとしているが、外為市場は相変わらず安定した値動きに終始している。米中貿易交渉も一段落したように見える。2020年はどんな年になるのか・・・。来年の展望も含めて、外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、1月の為替相場の動向をうかがった。
 
 ――米中貿易交渉が合意に達したと報道されていますが。今後の展開は?
 
 米国側の報道によると、米国と中国の貿易交渉は第1段階の合意に達し、トランプ政権は12月15日に予定されていた中国からの輸入品に対する追加関税の引き上げを見送ると発表しました。これまでの追加関税については2500億ドル分に対する25%の関税は維持するものの、1200億ドル分については15%から7.5%に引き下げられました。
 
 トランプ米大統領と習近平中国主席との会談で、正式に署名されることになるはずですが、現時点ではまだ日程も決まっていません。とりあえず、最悪のシナリオは回避されたわけですが、米中貿易交渉はまだまだ続くことになりそうです。来年には、また何度か貿易交渉による経済的な混乱が繰り返される恐れも残っています。
 
 こうした背景には、来年11月に行われる大統領選挙が絡んでおり、支持基盤である農業従事者を喜ばせる意味でも、米中貿易交渉は今後少しずつ進展していくものと考えられます。そういう意味では、米中貿易交渉の行方はこれからが本番とも言えます。
 
 ――年末年始は突発的な相場展開になることが多いようですが、今年は・・?
 
 今年の年初、日本がまだ正月休みの間に、瞬間的に1ドル=104円台をつけた「フラッシュクラッシュ」現象が起きました。年末年始の東京市場が閑散としている瞬間を狙って仕掛けられた相場とも言えますが、来年はその可能性は低いように思われます。
 
 各金融機関や市場も様々な準備をしており、フラッシュクラッシュが起こる可能性は少ないと考えて良いでしょう。とはいえ、日本が休みになる12月30日、31日、1月2日、3日については念のため注意しておく必要があると思います。
 
 特に日本が正月休み中に発表される米国のISM製造業景況指数は、サプライズがあった場合は注意した方がいいかもしれません。ちなみに、雇用統計は1月10日になります。米国経済は、史上最高値を更新し続ける株式市場の好調さもあり、個人消費は絶好調といっていいでしょう。一部ではバブルではないかという指摘もありますが、年明けの為替市場や株式市場の動きには注意を払っておく必要があります。
 
 ――1月相場、注目しておきたいポイントは?
 
 まずは、米中貿易交渉の行方がどうなるのか・・・。それ以外では、英国のブレグジットの行方も注目されます。先日の英国総選挙で保守党が勝利したために、ブレグジットは英国国内では可能になりましたが、EUとの協議がうまくいくかどうかが焦点になってきます。最悪の場合、「合意なきブレグジット」が行われる可能性もあります。
 
 それ以外の部分では、各国の中央銀行の動きが気になります。日銀の金融政策決定会合は、1月20-21日に行われ、米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が1月28-29日にかけて実施されます。日銀の動きはまずないと考えていいのではないでしょうか。金利も安定しており、当面日銀が動く気配はないように見えます。
 
 同時に、米国のFOMCでは利下げの可能性は少ないと思います。米国の株式市場は連日史上最高値を更新しており、GDP成長率も7-9月期で2.1%に達しており、これ以上の利下げは必要ないと考えるのが自然です。
 
 一方、ECBもクリスティーヌ・ラガルド新総裁が、1月23日に行われる理事会で、これまでのドラギ前総裁の体制を総括し、踏襲するのかどうか方向性を示すものと考えられます。景気が戻りつつあり、やはり大きな動きはないと考えられます。同様に、豪ドルも比較的狭いレンジで動いており、大きな動きはないと考えて良いのではないでしょうか。
 
 ――1月の各通貨の予想レンジを教えてください。
 
 1月の予想レンジは次の通りです。合意なきブレグジットの可能性が残る英国ポンドは、ややボラティリティ(変動幅)の大きな相場になると考えられます。
 
●ドル円・・1ドル=108円-110円50銭
●ユーロ円・・1ユーロ=116円-122円 
●ユーロドル・・1ユーロ=1.10ドル-1.12ドル
●ポンド円・・1ポンド=138円-147円
●豪ドル円・・1豪ドル=74円-77円
 
 注意が必要なのは、年末年始の日本が正月休みの間の為替相場になります。急激な動きにあらかじめ対応しておく必要があります。ポジションを抑えるなど、いざという時に備えましょう。 
 
 ――今年1年の為替市場、そして来年の展望についてお教えください。
 
 今年1年を振り返ってみると、やはり歴史的なレンジの狭さであったということでしょうか。今年のドル円では、最高値が8月4日の104円46銭、最安値が112円40銭。7円93銭という狭いレンジでの相場となりました。FX投資としては、苦しい1年だったと言ってもいいかもしれません。
 
 こうした背景には、米中貿易交渉や北朝鮮問題などが絡んでおり、トランプ米大統領の気まぐれな政策が世界中を振り回した影響も見逃せません。問題は来年ですが、やはりトランプ大統領に振り回される1年になるかもしれません。弾劾裁判が始まり、大統領選挙も11月に実施されるわけですから、選挙の情勢次第ではどんな政策を打ち出してくるのかわかりません。
 
 これまで同様、見当もつかない政策が打ち出されてくる可能性もあります。狭いレンジの中で、細かな利益を積み上げていくノウハウが来年も求められる、と言っていいでしょう。(文責:モーニングスター編集部)。