米中貿易交渉がまもなく再開されそうだが 、トランプ米大統領に対する弾劾裁判が始まるなど、米国を取り巻く経済環境は相変わらず揺れ動いている。そんな中で、ドル円相場をはじめとする為替市場は様子を見る停滞感が強い。 米中貿易戦争の行方はどうなるのか・・・、日銀は動くのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、10月の為替相場の行方をうかがった。
 
 ――10月相場のポイントを教えてください?
 
 まず大きなポイントになるのは「米中貿易交渉」の再開です。10月10日、11日の両日に、閣僚級の協議が再開され、劉鶴副首相が米国に出向いて直接交渉するという情報も流れています。
 
 この交渉がうまくいかないと、これまで10月15日まで延期されていた米中両国の輸入品のほぼ全てに対して、制裁・報復関税が拡大されることになります。トランプ大統領は、中国が交渉妥結を望んでいる、といった発言をしていますが、中国がそう簡単に妥結するかどうかは疑わしいとみられます。
 
 とりわけ、 トランプ大統領が打ち出した米株式市場に上場している中国企業の上場廃止という交渉カードは、すぐに商務省が否定するなど、トランプ大統領が思い描くシナリオ通りにはいかないようです。
 
 ――トランプ大統領が弾劾裁判にかけられましたが、影響はあるのでしょうか?
 
 現実問題として、トランプ大統領が罷免されるには上院の3分の2の賛成が必要になります。20人程度の共和党議員が造反しなければ成立しないために、まず民主党が意図するような大統領罷免まで行く公算は低いと思われます。
 
 それでも、民主党が弾劾裁判に踏み切った背景には、来年の大統領選挙をにらんでのことと思われます。今後の動向に注視する必要はありますが、大統領の弾劾裁判が発表された時も金融マーケットはほとんど反応しませんでした。
 
 米中貿易交渉が暗礁に乗り上げる中で、米国の景気はFRB(連邦準備制度理事会)による金利引き下げの効果もあり、個人消費などは堅調さを保っています。とはいえ、この10月1日に発表された9月のISM製造業景況感指数は47.8となり、10年ぶりの低水準となりました。3年ぶりの悪化となった8月に続いて、2カ月連続で好不況の境目である50を下回り、米中貿易戦争などの影響が製造業に出ていることを物語っています。 
 
 10月29日-30日には、FOMC(連邦公開市場委員会)が開催されますが、雇用統計などの景気指標や米中貿易交渉の動向によってどんな変化が起こるのか、注視しておく必要があります。
 
 ――消費税が導入された日本経済はどうでしょうか?
 
 10月1日より消費税率が食料品など一部を除いて10%にアップされましたが、同時にキャッシュレス決済には最大5%のポイント還元が実施されるなど、今回は万全の準備がされており、そう大きな変化はないと思います。
 
 ただし、10月30日-31日に実施される日本銀行の金融政策決定会合では、何らかのアクションがあるかもしれません。9月の会合で黒田日銀総裁は、海外経済の下振れリスクの強まりを背景に、前回7月の会合よりも追加緩和に前向きな姿勢を示し、現行政策の範囲内で対応する意向だと発言しました。
 
 場合によっては、マイナス金利の深堀り(マイナス金利幅の拡大)があるかもしれません。そうなると、当然「円安」に振れるわけですが、その時点でどう動くのかを見極める必要があります。
 
 一方、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)が外債投資拡大と報じられました。外債投資が拡大されれば、ドル高要因となりますが、外債を購入して為替ヘッジをかけることで「国内債扱い」にするようで、外為市場に対してはあまり影響を与えないようです。
 
 ――10月31日には英国のブレグジットの期限を迎えますが、影響は?
 
 英国のボリス・ジョンソン首相は、新たなブレグジット案をEU側に提示すると報道されていますが、相変わらず何が何でも10月31日にブレグジットを実行すると言い続けています。議会が決定したブレグジットの期限延長もどうやら守る意思はなさそうです。
 
 仮に、 ブレグジットが強行された場合、 英国には大きな影響が出てくると考えられます。英国の金融機関の中にはロンドンのシティーを離れるところも出てきており、ブレグジットの影響が心配です。
 
 為替市場も、英国ポンド、ユーロ共に売られる可能性があります。10月24日にはECB(欧州中央銀行)理事会があり、10月末で任期満了となるドラギECB総裁が、どんな発言をするのか注目されます。
 
 すでにメディアでは、「財政政策からの支援がなければ、現在の金融緩和は長引くかもしれない」という見通しを表しており、ブレグジットの期限が近づいていく中でどんな発言をするのか注目したいところです。
 
 ――10月の各通貨の予想レンジを教えてください。
 
 これまで比較的ボラティリティ(変動幅)が大きい相場が続きましたが、ここに来て落ち着いた相場になっています。米中貿易戦争や北朝鮮、イランといった「地政学リスク」が落ち着きを取り戻しつつあり、10月も引き続き取引高の少ない相場展開になるとえられます。各通貨の予想レンジは次の通りです。
 
●ドル円:1ドル=106円-109円
●ユーロ円:1ユーロ=116円-120円
●ユーロドル:1ユーロ=1.07ドル-1.11ドル
●ポンド円:1ポンド=130円-136円
●豪ドル円:1豪ドル=71円-74円
 
 ――10月相場の注意点を教えてください。
 
 やや落ち着いているとはいえ、やはり今の世界経済の大きなリスクはトランプ大統領自身ですから、彼の言動次第でどう動いていくのか予想はできません。細かな動きが続いているからといって、油断せずに情報はきちんとチェックしておきましょう。
 
 10月4日の米雇用統計や10月末の日銀の金融政策決定会合についても、きちんと動きをチェックしておきましょう。(文責:モーニングスター編集部)。