「さわかみファンド」が今年8月、設定から20周年を迎えた。独立系の投信会社で直接販売によって長期投資に理解のある投資家を募るという独自の経営で時代を切り開いてきた同ファンドは、その後に続く独立系・直販運用会社の道しるべでもあった。さわかみ投信取締役会長の澤上篤人氏(写真)に、「さわかみファンド」がめざした長期投資のあり方など、創業時の思いを聞いた。
 
 ――そもそも創業のきっかけは?

 欧州プライベートバンク日本法人の社長として1970年代から80年代に運用の仕事で欧州やアメリカを行き来していた時に、オイルショックがあって人々の生活が激変するのを目の当たりにしました。多くの人が1つの仕事では生活が成り立たず、2つ、3つの掛け持ちをするのが当たり前でした。米国の小学校の校長が夜にスーパーでレジ打ちのアルバイトをするような生活をしていました。そのような環境の中でも、投信で運用をしている人たちは、生活が変わらなかったのです。自分の働き以外にお金が働いてくれるから大丈夫だったのでしょう。

 当時、日本は成長経済で飛ぶ鳥を落とす勢いで発展していたのですが、いずれ成熟経済を迎えた時に、何か大きなショックがあれば、当時の欧州や米国の人たちのようなことになってしまうと考えました。その時に、一般の人たちが頼りになるような投信を日本でも作りたいと思いました。

 会社と6年間にわたって交渉したものの、投信は儲からないビジネスだからやらないという方針が変わらなかったので、仕方なく自分で投信を立ち上げることにしました。当時、投信会社は免許制で、預かり資産が3000億円以上ないと投信が作れませんでした。ところが、98年12月に日本版ビッグバンが始まり、投信が認可制になるなど、参入規制が大幅に緩和されました。即座に大蔵省に申請に行ったのですが、最初は全然相手にしてくれません。毎日のように通って2月に投信会社の認可をもらって、99年8月にファンドを設定しました。

 ――投資の結果は、やってみないと分からないのに、外資系運用会社の社長の座を捨てて起業するのは大きなリスクだったのではないですか?

 そんなことはありません。自信たっぷりだから踏み出したのです。世の中一般の運用は、上がったり下がったりする相場を相手にしているから、難しい、リスクがあるといわれます。長期投資は、そうではないのです。企業をひたすら応援していこうということでしかない。長期で応援しようという考えがあるから、暴落でも平気で買えます。安く買って高く売るということを繰り返しているから、成績が出るに決まっています。

 ところが、実際には、こんな単純なことをやらせてくれません。誰もが短期の結果を求めています。その最たる例が年金です。年金の運用が世界の運用を変えてしまったと思っています。

 もともと年金運用は長期の運用が当たり前でしたが、90年頃から、毎年の成績を追いかけるようになりました。年金は大事な資産だから、20年、30年後に間違いでしたというわけにはいかないから、毎年成績をチェックしますということになったのです。毎年チェックして成績の良いものに運用を変えていくと、結局、2-3年程度の成績しか見なくなりました。長期投資の代表であった年金がこのような評価を始めたから、運用業界で長期投資がなくなってしまいました。

 ――どうして日本株なのですか? 外国株の方がよほど値上がりしていて魅力的ではないですか?

 市場がドンと暴落した時に、本当にガンと買えるかどうかが長期投資家の踏み石です。それに対応したリサーチもしなければならないので、あれもこれも手を広げていることはできません。誰もがインドには成長株がゴロゴロあるといいますが、暴落の時に買えるほど知っていますか? まして、新興国は暴落に一番弱いのです。新興国を買えと言っているのは、暴落を乗り越えた経験がないから言っているのだと思います。

 お客様の大事な虎の子を預かっている以上は、常に流動性を考慮します。さわかみファンドには大型株の組み入れが多いのは、いつ何時、多くのお客様から解約が来ても、対応できるようにするためです。これが長期投資の鉄則です。

 また、当社の最高投資責任者の草刈もよく言っていますが、現在投資している107銘柄の売上高の7割は海外です。企業はグローバル化しています。たとえば、スイスの大手食品企業ネスレは、スイス国内の売上は全体の3%に過ぎません。約200カ国でビジネスを行い、世界のあちこちで戦争が起こっているけれど、ネスレはびくともしません。スイスの国民はネスレの株式を持っているだけで、自分の財産が作れます。日本にもいずれ、ネスレのような、筋金入りのグローバル企業が生まれます。もっと日本の企業を評価していいのです。日本人は日本経済や日本企業を卑下し過ぎていると思います。

 ――投資家へのメッセージは?

 さわかみ投信のセミナーに、もっと皆さんに集まっていただきたいと思います。そして、当社のスタッフの笑顔を見てほしいのです。自信たっぷりだから、みな笑顔で説明しています。この笑顔を見てもらうと安心できると思います。「さわかみファンド」20年の実績からくる笑顔です。これから暴落が起こるようなことがあれば、さわかみの笑顔を思い出してほしいと思います。

 石油ショックの時は、戦後1バレル=3ドル以下だった原油価格が10ドル、11ドルに跳ね上りました。第二次オイルショックで、それが34ドルになって、そのまま固定してしまったので、エネルギー価格が11倍になりました。世の中ひっくりかえるほど大変なことでした。

 今、マイナス利回り債券に17兆ドル(1800兆円)が集まっています。ディーリングで、ぐるぐる資金が回っているから値を保っているだけで、一瞬の空白で一直線に下落する恐れがあります。長年金利は下がり続けており、これは異常なことです。昨今のゼロやマイナス金利で経済が成り立つわけがありません。

 ある時金利が反転したら、債券をきっかけに暴落が起こる可能性があります。債券は大丈夫と安心しきっていますが、70年代の債券市場は、アメリカの長期債利回りが10%台で、瞬間18%になりました。過去130年の平均利回りが5.7%です。1.3%まで低下した異常な低金利はいずれ正常化に向かわざるを得ないでしょう。

 市場が暴落しても、一般の方々の生活は続いていきます。オイルショック後の欧米のように2つ3つの仕事を掛け持ちする人も出てくるかもしれません。そんな時に、皆さんの力になれるのは本物の長期投資の投信です。市場が混乱するような時には、「さわかみファンド」を思い起こしていただきたいと思います。どんな時にも、変わらず、長期投資で皆さんの資産を守るファンドです。(情報提供:モーニングスター社)