レオス・キャピタルワークスが運用する「ひふみ投信」は、シリーズ(同じマザーファンドに投資する「ひふみプラス」、「ひふみ年金」)で約7400億円の残高となり、アクティブ型の株式ファンドとして日本最大級になった。新たに海外株に投資する「ひふみワールド」を設定する狙いなど、同社代表取締役社長の藤野英人氏に、今後の展望を聞いた。
 
 ――そもそも独立系の運用会社を興した思いは?

 もともと野村投資顧問の出身で、当時は独立した投資顧問として年金運用のビジネスをやっていました。投資顧問で慣れていたから、投信の直販の世界に入りやすかったと思います。

 投資信託は証券会社や銀行が販売しているので、運用者がお客様と相対することはあまりないのですが、投資顧問は相対でお客様に運用の方針や状況を説明するという文化がありました。

 「ひふみ投信」をつくったのは、それまでに長期的にお客様視点で長く運用する良い投信がなかったということがあります。当時は、ファンドを立ち上げてお金が集まっても半年から1年くらいで次に新しく出た投信に乗り換えるために解約されてしまいました。それではまともな運用はできませんので、何度も証券会社や銀行と交渉したのですが、長期で運用することに協力してもらえる販売会社はゼロだったのです。

 本当に良い商品とは、長く持ってもらうためにブランド品としてお客様に信用・信頼してもらうものですし、それは他の業界では当たり前だと思います。しかし、それを投信の業界でやろうとする会社がなかったので、自分たちでやるしかないと思いました。

 「ひふみ投信」には、3つの特徴があります。「成長企業に投資する」、「守りながらふやす運用」、「顔が見える運用」。これはブレることがありません。

 よく小型株式に特化しているようにいわれますが、企業の規模にかかわらず、成長する企業に投資します。残念ながら日本の超大型株は成長期待が見込みにくいため、中小型株が比較的多い運用になっているのです。3年くらい前から業績が良くなり、海外出張も十分に行けるようになったので一部、外国株式を組み入れ始めています。アマゾン、グーグル、フェイスブックなど、アメリカでは時価総額の大きな企業で成長している会社がたくさんあります。日本の時価総額の大きな会社の成長性の不足を、主に海外株で補おうというコンセプトがありました。もちろん、海外株も実際に会社訪問して調査します。アマゾンやフェイスブックが良さそうだと思うだけでは投資しません。

 ――「ひふみ投信」設定から11年ですが、現状の評価は?

 運用という面では、十分に力を発揮していると思います。営業も一生懸命やってきました。残念なのは、「年金2000万円問題」で、問題を追求する野党、対応する与党、また、メディア、国民の反応など、金融リテラシーの低さが予想をはるかに下回っていたことです。

 つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などの国の制度が充実してきたので、これを機会に長期投資をやってもらいたいと、懸命に長期投資の必要性を訴え続けてきたはずなのに、その訴えが社会一般にはほとんど届いていないことを痛感し、力不足を感じました。

 「ひふみ投信」は全体で7500億円くらいの残高になっていますが、まだ少なすぎると思います。運用総額として少なくとも10兆円くらいの規模にならないと社会的責任を果たせないと思っています。現在、独立系運用会社の資産規模は、合計しても全体の3%に届きませんが、もっと独立系が残高を増やして、信頼を勝ち得て成果を出し続けることが大事です。それを果たしていく必要があると思っています。

 また、商品のラインナップにも問題を感じていたので、新たに世界株式に投資する「ひふみワールド」を10月に設定し、分散投資の機会を提供します。

 一方、社内体制も強化しています。より、お客様本位の運営をするため、リーガル・コンプライアンスの面では、社内弁護士3名の体制にしました。コンプライアンスやリーガルの部分では、運用会社の中でもかなり分厚い体制になったと思います。

 昨年、上場申請して結果的に延期をすることになった際に、その必要性を感じました。私自身、「ピカピカの運用」、「ピカピカの営業」をやっている自信があったのですが、コンプライアンスと業務運営に関しては、「ミスがなければいい」、「法律違反がなければいい」とやや目線が低かったのかもしれないと反省しました。国内最大規模のファンドを運用しているのですから、「ピカピカの業務運営」、「ピカピカのコンプライアンス」をめざさなければならないのです。

 ――「ひふみ投信」が、直販、公販、年金と分かれている理由は?

 テクニカルな話ですが、直販の「ひふみ投信」は5年で信託報酬の0.2%、10年で0.4%お返しするという画期的な仕組みを入れているのですが、直販の独自システムだから可能なことで、銀行や証券会社の販売システムではできないのです。

 そこで、イレギュラーではない仕組みのものを作ってもらいたいというニーズに応えて、「ひふみプラス」という公販ファンドを作りました。「ひふみプラス」は残高が増えるとフィーが下がる仕組みを入れました。運用はマザーファンド形式なので同じなのですが、直販の「ひふみ投信」は長く持てばフィーが下がる、「ひふみプラス」は残高が大きくなるとフィーが下がるということになっています。

 「ひふみ年金」は、iDeCoに対応する必要があったのでつくりました。自分自身で年金を積み立てることを応援するために、他の2つのファンドよりも信託報酬は若干低く設定しています。

 ――「ひふみプラス」は外部で売ってもらっていますが、長期投資とは違う性格の資金が入ってきませんか?

 金融庁がフィデューシャリーデューティを厳しくチェックしていることもあって、直販を始めた時と違って、長期で運用しなければならないと考える販売会社が増えています。直販が長期投資家で、銀行・証券が短期投資家ということはまったくありません。私たちの考え方に賛同していただける販売会社とは一緒にやっていきます。

 ――新しく始める「ひふみワールド」とは?

 「ひふみワールド」は、「世界にあふれるビックリ!をみつけにいこう」をテーマに、海外の成長企業に投資します。「守りながらふやす」「顔が見える運用」という「ひふみ投信」と基本の運用姿勢は変わりません。「ひふみ投信」同様に、足で稼いで企業を発掘するという活動を世界の市場に広げて行います。

 海外株式への投資は可能性しか感じません。今年上半期に約1900社の企業調査を実施しましたが、うち30%は海外企業です。かなり分厚く海外の調査を行っています。たとえば、アジアの会社をリサーチすると、日本人では初めて調査に来たという大手企業が少なくありません。アジアには成長企業が多く、企業家のレベルも高いと思います。3-5年の間に、アジアで一番信頼される運用会社になりたいと考えています。

 また、アメリカもインデックスファンドが主流となり、アクティブファンドも時価総額の大きな企業ばかりに投資しているので、中西部の中小型企業に行くと、久しぶりにファンドマネジャーが来たというところがあります。「どの運用会社も短期の業績ばかりを聞くようになっているけど、ビジョンやミッションという話を聞きたがるのは君らくらいだ」といわれます。このような現実に接すると、アメリカ株の運用でアメリカの運用会社の成績を上回ることもできると思っているのです。

 8月末にNYに調査拠点を置きました。これを拡充し、アメリカとヨーロッパをカバーする調査拠点にする計画です。いずれは、インド、アセアンにも拠点を設けます。

 ――これからのレオスに期待してほしいことは?

 投資の本来持っている「ワクワク感」や「驚き」を提供したいと思っています。社内体制も充実し、運用・営業・業務運営・コンプライアンスの4つのピカピカをそろえ、ワクワクしながらも、安心もしてもらえる会社として一段と成長をめざします。

 日本のキャッシュは個人金融資産のうち約1000兆円も積みあがっています。これを資本市場に流すということに当面は集中して取り組んでいきます。(情報提供:モーニングスター社)