旗艦ファンドである「コモンズ30ファンド」が、つみたてNISAの対象ファンドに選ばれ、残高拡大に弾みがつきつつある。同ファンドを運用するコモンズ投信の取締役会長兼ESG最高責任者の渋澤健氏(写真)は、「消費者と企業の対話の場があれば、お互いに気づきが生まれ、ウェルビーイングの実現に近づく」と語っている。渋澤氏に、「そもそも独立系運用会社を立ち上げようと考えた理由」について聞いた。インタビューの要旨は以下の通り。
 
 ヘッジファンドの東京代表を辞してシブサワ・アンド・カンパニーを立ち上げた2001年頃、金融サービスの将来に思いを巡らした時に、ちょうど小売業界でデパートや百貨店に代わってブティックが流行ったことと同じような変化が金融にも起こると考え、運用者が簡単に自らの運用を形にできるプラットフォームが作れないかと考えました。そこで、レオス・キャピタルワークスの藤野英人さんと一緒に、すでに独立系運用会社「さわかみ投信」を立ち上げていた澤上篤人さんを訪ねて、投信の運用や販売に関するシステムなどについて相談に行きました。そこで、澤上さんからあなたたちが投信を立ち上げなさいと背中を押されました。

 また、当時は、私に子供が生まれ、子供が成長した時に応援するための資金を作りたいと、投資信託の積み立てを始めていました。ただ、毎月の積立金から必ず手数料がとられることに疑問を感じて、ノーロードで商品提供をしていた「さわかみファンド」に積立商品を切り替えたりしました。実際に、積み立てを続けていると、市場が下がると量を多く買える積み立て投資の効果を実感しました。

 一方、経済同友会に所属して経営者の方々と会話すると、当時の投信について「短期で投資資金を引き揚げるハゲタカのようだ」と厳しい評価を受けました。そんな人ばかりではないと反発を感じたのですが、運用会社には、より短くより高いパフォーマンスを良しとする考えがあることは否定できません。さらに、当時は村上ファンドが話題で、企業に対して一方的に要求を突き付けて対立していました。企業とファンドと社会の関係が良くない方向に向かっていると感じていました。

 ファンドの受益者である個人消費者と、企業が商品・サービスを提供する消費者は同じ存在です。ファンドが消費者と企業の対話の場を作る役割を担えると考えていました。これは、プライベート・エクイティ(PE:未公開株式)の出資者総会に参加した時に、PEファンドの運用者と企業経営者がトークセッションを聞き、投資した資金が企業によって生かされるリアルな経済の営みを感じたことに発想の原点があります。金融商品は数字に置き換えられるので、リアルな経済に投資資金が生かされている実感がないのですが、投資先企業の事業活動を知ることで、投資家には様々な気づきが生まれます。

 このような様々な思いを、社長の伊井哲朗らと議論して「コモンズ30ファンド」という形あるものにしていったのです。ファンド設立当初から対話の場を提供することを重視し、投資先企業を選ぶ際には、今でいうESG(環境・社会・ガバナンス)など目に見えない価値をしっかり評価しています。

 今、日本企業のPBR(株価純資産倍率)は1倍です。企業が目に見える資産と同じだけにしか評価されていないのです。経営者や社員の評価はゼロ、または、PBR1倍以下では会社の存在にとってマイナスでしかないということになります。このような評価は、本当に正しいのでしょか? コモンズの活動に賛同していただける方がもっと増えて、もっと多くの方々に「お金のリアル感」や「企業の見えない価値」について知っていただきたいと思っています。(情報提供:モーニングスター社)