インベスコ・アセット・マネジメントは9月5日、ブロックチェーンをテーマにした金融機関向け特別セミナーを東京・六本木で開催した。ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクール オルタナティブファイナンス・ケンブリッジ・センター(CCAF)のエグゼクティブ・ディレクター兼共同設立者のブライアン ジェン・チャン(Bryan Zheng Zhang)氏(写真:中央)、そして、日本アイ・ビー・エムのブロックチェーン・ソリューション事業部長の高田充康氏(写真:右)を講師に、世界で急速に拡大しているブロックチェーンの活用事例を紹介した。

 インベスコ・アセット・マネジメント代表取締役社長兼CEOの佐藤秀樹氏(写真:左)は、「ブロックチェーンは、その具体的な内容については良く知られていない。ブロックチェーンは今後3450倍に市場が拡大するといわれ、想定される市場の規模が桁違いに大きい。ブロックチェーンの実際のビジネス化について、専門家の方々の講演によって明らかにしたい」とセミナー開催の意図を語った。同社は、今年7月に「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド」を設定し、ブロックチェーン関連の情報発信を強化している。

 ケンブリッジ大学のジェン・チャン氏は、ブロックチェーンについて「正確に記録し関係者間で共有し、唯一無二の信用が置けるレコード・キーピング・システム」と定義し、「ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)とは違う」と強調。(1)記録の共有(2)複数参加者の合意(3)独立した検証(4)改ざんの発見(5)改ざんが困難――という5つの特徴があると解説した。そして、「ブロックチェーンの実用化は、現在は金融・保険分野が43%を占めて中心ではあるものの、物流・小売・サプライチェーンなどに急速に拡大している」と現状を報告した。

 また、現在までに実用化されているブロックチェーンの活用目的は、「コスト削減(照合作業の改善でオペレーションコスト削減)」が中心だが、今後は、「新しいプロダクトによる収益機会創出」が重視され、イベント(活動)の改ざんできない記録管理の機能などを使って、業界や国境を越えた企業をつなぐ情報プラットホームとしての活用が急速に立ち上がると予測している。

 たとえば、デンマークの海運コングロマリットであるマークス社とIBMが主導した国際貿易のブロックチェーン・プラットホーム「TradeLens」は、「アボガドのケニアからオランダへの輸送には、30業者が関与し、200種類の書類が使われていたが、これらをペーパーレスにし、全過程の記録・管理がオープンになった」という。現在では世界の海運輸送の50%シェアを占める6つの海運業者と40の港湾施設、8つの税関が利用し、年間3億5000万件を取り扱うネットワークになっているという。

 あるいは、米国のブロックチェーン企業R3が開発したブロックチェーン・プラットホーム「コルダ」を使った「LenderComm」は、世界のシンジケートローン(共同融資)市場の自動化に貢献し、BNPパリバ、BNYメロン、HSBC、ING、ステートストリートなどの大手銀行が参加し、シンジケートローンの43%が同アプリケーションを使って実行されているという。

 IBMの高田氏は、「現在は案件としては全体の7-8割が金融以外の業界でブロックチェーンの活用が検討されている」と現状を紹介。ブロックチェーン技術としては、「パブリック(公開)で使われる技術にはビジネス処理速度や情報の公開性などが事業化の制約として意識され、プライベートやコンソーシアムで利用者を特定するビジネス向けブロックチェーン技術が性能とセキュリティを強化しつつ、大きな成長を遂げつつある」と解説した。

 具体的な事例として、米ウォルマートによるトレーサビリティ実験では、マンゴーが農場から国際貿易を経由してスーパー店頭に並ぶまでのサプライチェーンの管理ポイントで情報を登録し、従来は約1週間かかったトレーサビリティがブロックチェーンを使うと2.2秒で完結。「マンゴーに問題が発生すると、従来は全てのマンゴーを陳列棚からおろす必要があったが、現在では特定のマンゴーだけを販売中止にすればよく、廃棄ロスや販売機会ロスの大幅な削減が期待できる」という。この結果、ウォルマートの競合スーパーも含めて米国上位4社の小売りや仏カルフールが使う「食の信頼」を担保するプラットホームになっているという。

 また、電気自動車の発展で注目されるコバルトのサプライチェーンをブロックチェーンで可視化してOECD基準に従った調達かどうかを確認できる仕組みが実用化していると紹介した。
提供:モーニングスター社