8月は1日に米トランプ大統領が唐突に対中追加関税の第4弾を発表し、追い打ちをかけるように中国を為替操作国に認定したことで、米中関係が一段と緊張した。減速傾向を強めている中国景気は、回復が可能だろうか? 大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は8月21日、「中国:期待外れの『利下げ』と景気サポート」と題したレポート(全11ページ)を発表した。直近までに発表された経済指標を分析し、景気減速が続く中、自動車販売は最悪期を脱した可能性があると指摘している。レポートの要旨は、以下の通り。
 
◆米トランプ大統領が第4弾の追加関税を発表した8月1日以降、元安が進展し、5日には11年ぶりに1ドル=7元を突破した。米財務省は同日、中国を為替操作国に認定した。ただし、中国政府による元安容認は短期間で収束するとみている。元安期待が続けば、中国からの資金流出が強まり、輸入物価上昇にも警戒が必要になってくる。輸出促進という利よりも害の方が大きくなると考えられ、為替レートの安定が再び重視されるようになろう。
 
◆2019年7月、もしくは1月~7月の主要経済統計は景気の減速が続いていることを示している。7月の鉱工業生産は前年同月比4.8%増(以下変化率は前年同月比、前年同期比、前年比)と、同じ統計で遡れる1995年1月以来の最低の伸び率となった(旧正月の時期のずれによる影響を避けるため1月と2月は平均値で比較)。7月の輸出は3.3%増と6月の1.3%減から増加に転じたが、輸入は5.6%減と3カ月連続して前年割れとなった。輸入の減少には内需の弱さが反映されていよう。
 
◆8月17日、中国人民銀行は貸出市場オファーレート(LPR=Loan Prime Rate)の制度変更を発表した。最大の変更点は、参照する金利が、国務院が変更の権限を持つ貸出基準金利から、中央銀行の公開市場操作金利に変更されたことである。今後は金利政策の機動性が大きく増すと期待できる。8月20日に発表された1年物LPRは従来の4.31%から4.25%に低下したにとどまり、今回の「利下げ」は期待外れであった。ただし、参照とする中期貸出ファシリティ(MLF)1年物金利が2017年1月以降上昇し、2018年4月以降は3.3%で高止まりしていたことを考えると、LPRの低下は、中国人民銀行が景気サポート姿勢を明確にしたことを示しており、注目される。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)