7月の雇用統計は良かったものの、米中貿易戦争の行方に対する不安からドル円はさらに下落し、106円51銭を付ける。長期金利が急低下するなど、リスク回避の流れが強まり、円が買われた。ユーロドルもドル安の流れから反発。1.1116までユーロの買い戻しが進む。

 株式市場は続落。米中通商問題が一段とエスカレートしたことが懸念され、S&P500は5日続落し、ダウも4日続落。債券相場は一段と上昇し、長期金利が1.84%台まで低下。金は大幅に続伸。一時は1461ドル台まで買われ、2013年5月以来となる高値を記録。原油は反発。

8月失業率        → 3.7%
8月非農業部門雇用者数  → 16.4万人
8月平均時給 (前月比) → 0.3%
8月平均時給 (前年比) → 3.2%
8月労働参加率      → 63.0%
6月貿易収支       → -522億ドル
7月消費者信頼感指数   → 98.4

ドル/円   106.51 ~ 107.28
ユーロ/ドル 1.1079 ~ 1.1116
ユーロ/円  118.26 ~ 118.92
NYダウ   -98.41 → 26,485.01ドル
GOLD   +25.10 → 1,457.50ドル
WTI    +1.71  → 55.66ドル
米10年国債 -0.048 → 1.845%

本日の注目イベント

中  7月財新サービス業PMI
中  7月財新コンポジットPMI
独  7月サービス業PMI(改定値)
欧  ユーロ圏7月総合PMI(改定値)
欧  ユーロ圏7月サービス業PMI(改定値)
欧  企業決算 → HSBC
米  7月ISM非製造業景況指数

 トランプ大統領が中国に対する関税問題をさらにエスカレートさせたことで、金融・商品市場ではリスク回避の流れが一段と加速しています。ドル円は6月に記録した円の直近高値を抜き、106円51銭までドル安円高が進みました。これで、次の目安は今年1月3日の早朝に記録した105円近辺ということになり、やや円高に弾みがつきそうな雰囲気です。

 米中貿易戦争は解決が長引くとは見られていましたが、この段階で中国製品に対する制裁関税第4弾が発動されるのは想定外でした。一部のメディアも報じているように、2020年の大統領選を意識しての行動かもしれません。「全ての政策は、2020年の大統領選に勝利するため」といった見方も、決してオーバーなことではないのかもしれません。今回のトランプ氏の決定を受け、円だけではなく、安全資産の金が1461ドル台まで急騰し、2013年5月以来、実に6年3カ月ぶりの高値まで買われました。また、米国債も買われ、長期金利は2016年11月以来の低水準まで低下してきました。安全資産が買われ、リスク資産が売られる展開です。

 中国に対する関税第4弾を9月から実施するという決定で、先週末の雇用統計の影がやや薄くなった印象でしたが、7月の雇用統計は比較的良好でした。失業率は3.7%と予想通りで、非農業部門雇用者数は16.4万人とまずまずの結果でした。また賃金の伸びも好調で、平均時給は前年同月比で3.2%増と、こちらも市場予想を上回っており、労働市場は引き続き堅調だということが確認できます。今後の焦点の一つがFRBの利下げ回数になりますが、好調な労働市場が続けば、利下げに対する抑止力にはなると見られます。年内1回から2回の利下げが見込まれる中、今後は雇用統計の結果がこれまで以上に注目されるのではないでしょうか?昨年後半あたりから雇用統計の結果が市場に与えるインパクトが小さくなりましたが、再び「名門復活」の日もそう遠くない気がします。

 米国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は4日FOXニュース・サンデーとのインタビューで、FRB議長の今回の利下げに対してトランプ大統領と同じ認識を示しています。同氏は、「実際はパウエル議長が1ポイント利上げをし、量的引き締めを行ったことがGDPの伸び率を少なくとも1ポイント押し下げており、議長の責任にほかならない」と、7月31日のFOMCで25bpの利下げを決めた根拠として、パウエル議長が米中貿易問題の緊張を挙げたことを批判しています。(ブルームバーグ)

 ドル円は年初来の安値が視野に入ってきたと思われます。上でも述べたように、105円前後が大きな節目と見ていますが、この水準を割り込むのかどうかは、今後の相場の動きにとっても重要です。今月はFOMCがありません。次回は9月17~18日に開催されますが、ここで引き続き利下げが実施されるのかどうかが今後の焦点です。それまでには様々な経済指標も発表されますので、この結果を分析することは当然必要ですが、9月FOMCでの当局の政策スタンスを汲み取るのには、今月22日~24日に行われる恒例の、カンザスシティ連銀主催の「ジャクソンホールでのシンポジューム」が注目を集めます。この会合に世界中から中銀総裁やエコノミスト、あるいは企業経営者が集います。今年の会合は「Challenges for Monetary Policy」(金融政策への挑戦)と題してシンポジュームが行われます。詳細はまだ分かっていませんが、パウエル議長の講演も予定されると思われます。

 本日のドル円は106円10銭~107円20銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)