東京オリンピック・パラリンピック開催まで残り1年となり、国内の観光関連事業者の間でインバウンド需要を最大限に取り込むための施策の模索が続いている。日本でインバウンド向けの業務支援を行っているアライドアーキテクツ <6081> が7月25日、インバウンドセミナーを開催し、テンセントジャパン、アライドアーキテクツ、ペイクが、最新のインバウンドマーケティングの手法や支援策について説明した。
 
 2018年の訪日外国人は3119万人に達し、日本での消費支出は4兆5189億円だった。日本政府は、このインバウンド消費を、2020年に8兆円、2030年に15兆円に引き上げる目標を持っている。現在の4.5兆円の市場が10年で3倍以上に拡大する計画だ。そして、訪日外国人に占める中国人は838万人で全体の27.2%、また、中国人の消費額は1兆5370億円と頭抜けて大きく、インバウンド消費攻略のポイントは中国人旅行者といえる。
 
◆中国のネット滞在時間の55%はテンセントのサービスを利用
 
 テンセントのインターナショナルビジネスグループの叶志松氏は、「中国のモバイルインターネットで第1位か第2位のアプリをテンセントグループで提供しているため、自ずと中国の人々のネット利用に占めるテンセントのシェアが高まる」と解説。中心アプリのWeChat(日本のLineに相当)のMAU(月間アクティブユーザー)は10.82億に達し、1日当たり平均で約90分利用されている。また、テンセントが提供するアプリは、QQ(中国版メッセンジャー)、Qzone(中国版フェイスブック)、テンセント動画(中国版ユーチューブ)など様々な利用シーンに広がり、その利用時間を合計すると、ユーザーのネット接続時間の55%をテンセント関連アプリが占めるほどテンセントは中国の消費者に絶対的な存在感がある。

 テンセントのデータ分析による訪日中国人旅行者の特長は、コアユーザーは、35歳~39歳。男女比率は半々だが、女性の方が消費性向・リピート率が高い。訪日する中国人は大卒以上が68%で、高学歴の人が多い。居住地は上海、北京、天津、江蘇省、浙江省という沿岸部ということがわかる。この沿岸部の住民に、事前に(旅マエ)広告宣伝を行うことによって、来日時(旅ナカ)に自社製品・サービスを効果的に販売することが可能。かつ、離日後(旅アト)に中国国内でのECサイトで販売を継続することも可能だ。

 また、日本に旅行している中国人は、タイ、韓国、アメリカ、シンガポール、オーストラリア、フランスに旅行に行っている傾向が強いため、「韓国に旅行経験があるのに、日本にはまだ旅行していない人は、今後、日本に旅行する可能性が高い。そのような人に重点的に広告をするということも効果的な方法といえる」(叶氏)と紹介した。

 そして、最近のサービス事例として、「海外旅行者の多くが親族や友人から旅先での買い物を頼まれるので、自分自身が旅行を楽しめないというネックがあった。そこで、オンラインで買い物内容を事前に予約してもらい、空港のロッカーにそれら商品を一括して届けるというサービスを香港で実施した。訪日した人は、離日時にそれら商品を一括して受け取って帰国し、お土産にできて好評だ」(叶氏)と、新サービスの開発にも積極的に取り組んでいると語っていた。

◆中国人消費者の興味・関心を高めるKOLの活用

 アライドアーキテクツは、中国インバウンド、中国越境EC支援、中国本土への進出支援など日本企業を対象とした中国向けマーケティング支援をトータルで提供している。また、中国でのマーケティングで重要な位置づけにあるSNSインフルエンサーをサポートするVstar Japanを設立し、有力なインフルエンサーとのリレーションも構築している。

 モバイルインターネットが発達した中国では、消費者が信頼する情報源として「クチコミ」の影響力が大きい。商品やサービスの「認知・購買喚起」から「検討」、「購入」にはクチコミの影響が強い。そして、購入した結果の感想等を発信する「クチコミ」が多くの人たちに共有され、商品・サービスの「認知・購買喚起」につながるという情報シェアが回転している。そのインフラがSNSであり、情報の発信源として大きな影響力を持つKOL(キーオピニオンリーダー)が存在している。

 アライドアーキテクツのグローバル事業部部長兼Vstar Japan代表取締役の番匠達也氏は、「中国インバウンドで売り上げが伸びている小売企業の成功パターンは、営業ツールとして公式SNSを開設し、SNS広告を実施することで公式SNSのフォロワーを増やすだけではなく、WeChatやWeibo(中国版フェイスブック)、RED(中国版インスタグラム)、ドウイン(TikTok)などのクチコミを使った商品・店舗等の紹介を効果的に実施している」と、中国国内で定着したマーケティング手法を紹介。

 中でも、KOLによる情報伝達効果は大きいとし、「KOLは他のKOLの投稿もチェックして反響が高い商品は自身のSNSで紹介するなど、結果としてKOLによる商品紹介は、多くの一般ユーザーに商品情報を伝えることに大きな効果がある」と語った。そして、「中国インバウンド向けのマーケティングは、『旅マエ』『旅ナカ』『旅アト』のステージで、効果的なソリューションを組み合わせて展開することが基本。また、クチコミのチャネルの1つとして在日中国人の情報発信力を利用するという方法もある」と同社が展開する「チャイナタッチ」というサービスを紹介していた。(写真は、テンセントジャパンの叶志松氏(左)とアライドアーキテクツの番匠達也氏)