オリックス銀行が投資信託発売1周年を記念して6月に開催した「ESG投資セミナー」において、ESGに関する専門家がESG投資の現状と課題について意見交換を行った。パネリストは、QUICK社のESG研究所 リサーチヘッドである中塚一徳氏(写真:左端)、監査法人トーマツのリスクアドバイザリー事業本部 シニアマネジャーの鶴渕広美氏(写真:左から2人目)、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの日本オフィス統括責任者である牧野義之氏(写真:左から3人目)、朝日ライフアセットマネジメント リサーチ運用部ESG運用グループのチーフ兼チーフファンドマネジャーの速水禎氏(写真:右端)。ファシリテーターは、オリックス銀行のアセットマネジメント部長 森敦仁氏が務めた。パネルディスカッションの要旨は以下の通り。

<日本のESG投資が急増中>

 ESG投資とは、投資の判断材料に非財務情報であるESG(環境・社会・ガバナンス)を加えること。日本のESG投資は、2016年の4740億ドルから、18年には2兆1800億ドル(約232兆円)と約5倍に増加している。QUICKの中塚氏は、「日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年に、PRI(責任投資原則)に署名したことで一気にESG投資が盛り上がりました。企業の経営にも波及することになったと捉えています」とESG投資拡大の要因を解説した。

 また、トーマツの鶴渕氏は、「企業にとっては、ESGに取り組むことによって企業価値が高まるのですから、ないがしろにはできません。『自分たちの努力をESGのスコアなどに反映してもらえるか?』という相談が増えています」とESGについて企業の姿勢が変わってきているとした。

<投資家の視点でESGへの評価は?>

 一方、ESGへの配慮が企業のコスト増になっているのではというネガティブな見方について、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの牧野氏は、「ESGに配慮することが、企業の収益に必ずしもマイナスにはなりません。指数ベースの投資では、財務上と非財務情報を含めて企業を見つめ直すというアプローチがスマートベータです。たとえば、ESGとROEを掛け合わせて『ROESG』という提案もあります」と指摘した。

 朝日ライフアセットマネジメントの速水氏は、「EGSの観点が入っていると、新たなビジネスチャンスを早く見つけ、逆に、リスクや脅威について早めに準備ができると思います。つまり、企業の収益があまりブレずに持続的成長していく。企業の価値が持続的に成長していく会社をしっかり選んで投資をしていれば、市場全体を大きく上回るリターンが得られる」と、ESG投資のメリットは小さくないと語った。

<ESG投資は一過性のブームに終わらない>

 速水氏は、ファンドマネージャーとして「昨今、ESG残高が世界的に拡大している背景には、ショートターミズムといわれる短期主義の是正という側面があります。ESGの拡大と並行して中長期投資への回帰という動きが続いています。世の中が、10年先にどう変わっていくのか。インデックスに勝つため、ESGの視点を取り入れることは、アクティブ運用に残された道になってきています」と語った。

 中塚氏は、「今、起こっているのは、各運用会社が投資原則にESGを組み入れるということ。一時的なブームとは次元が全く違います。財務分析を否定せず、その分析の中に、ESGの要素を体系的に入れ、中長期の企業価値をしっかり評価するという考え方が『ESGインテグレーション』です。リターンを棄損するような手法は『ESGインテグレーション』とは言いません。リターンはしっかり守って、その上でESGを考慮するのです」とESGが投資原則に組み入れられる意味を語った。

 そして、鶴渕氏は「最近の動きは、企業が環境や社会に対して、どのような取り組みをしているのか、キチンと説明をするということが大事だといわれています。相手に伝わるようにキチンと分かりやすく説明していくことが大事です。一方、データがあるのに出していないというケースもあります。自ら説明する、データをオープンに開示することが大事になります」と今後の課題を指摘した。

 牧野氏は、「5年以上、ファンドを持っている人が多数を占めるようになってきているので、今後、ESGへの理解は広がると思います。財務情報のみであれば、格付け会社で国や企業で大幅に異なることはないのですが、ESG評価はバラツキが大きく出ます。どういうアプローチをして各企業に投資しているのかに注目して投資判断をされるとESGへの理解も深まると思います」と投資家にメッセージした。(情報提供:モーニングスター社)