大阪で開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で米中首脳会談が実現。互いに追加関税を掛け合うなど、もめていた貿易交渉だが、トップ会談によって交渉を継続することになった。米中貿易交渉が再開したことで、市場には安心感も出ている。とは言え、今後の見通しは立っていない。G20サミット後の外為市場はどうなるのか。トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の電撃的会談も成功したものの、具体的な成果はまだのようだ。外為オンラインアナリストの 佐藤正和さん(写真)に7月の為替相場の行方をうかがった。

 ――G20の結果はどう評価されますか?

 G20前には、瞬間的にせよ1ドル=106円77銭まで円高が進みました。この背景には、米国の長期金利が年1.98%まで下落したことが大きな原因になっています。FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを止めただけではなく、利下げの観測が強まったためといえます。

 利下げの背景には、米中貿易交渉の不透明感の高まりによって、経済の先行きに不透明感が出てきたことです。そういう意味で6月28日-29日にかけて行われた、大阪G20は大きな注目を集めたわけですが、トランプ米大統領と習近平中国国家主席との直接会談は大きな意味があったと思います。

 結果的には、貿易交渉を再開することで合意。制裁関税第4弾の発令は見送られ交渉継続という結論に至りました。米国が準備していた3000億ドル(約32兆3600億円)相当の追加関税も見送りとなり、米中交渉決裂という最悪の事態は免れたと考えていいと思います。G20直後の7月1日のドル円相場は、さすがにドルが買われて1ドル=108円半ばまで円安が進みました。今後は米国の景気次第ということになり、同時に米国大統領選挙の動向等によって変化していくものと考えられます。

 ――今後のドル相場の見通しは?

 米中貿易交渉では、ファーウェイに対する禁輸措置を緩和し、米企業に同社への部品売却を一部認めるなど、ある程度の進展はあったと考えられます。根本的な貿易不均衡や知的財産権の問題については、何ひとつ解決はしていませんが、トランプ大統領も2020年11月の大統領選挙を意識して、成果を意識した安定的な政策に舵を切ってきたというところでしょうか。

 問題は、今後の為替市場がどう動くのかですが、6月28日に発表されたシカゴPMI(シカゴ購買部協会景気指数)が前月から4.5ポイント低下して49.7となり、2年5か月ぶりに景況感の節目となる50を割り込みました。

 7月5日に発表される米雇用統計がどんな数字になるのか、今後発表される米国の景気指標に注目する必要があります。米国経済が減速しているのかどうかを見極める重要な指標になります。

 雇用統計では、3月、4月、5月の3ヶ月連続で予想を下回っており、とりわけ5月は非農業部門の雇用者数が17万5000人増の予想が7万5000人という結果になりました。こうした経済統計の悪化が、FRBの金利引下げにつながり、長期国債の金利が2%以下に下落。1ドル106円台まで円高が進んだわけです。

 ――7月は、米国の金利引き下げが確実視されていますが?
 
 最近は年4回の金利引き下げがあるのではないか、といった予想も出てくるなど、米国の金利引き下げは大きな流れになっています。年内に複数回の利下げがあると考える方が自然かもしれません。とりあえず、7月30日-31日にかけて行われる「FOMC(連邦公開市場委員会)」では、0.25%の利下げがあるのは確実と考えられます。

 7月のFOMCの利下げを金融市場はすでに折り込みつつありますが、FRB理事の中には0.5%の引き下げが必要とコメントする人もいます。景気が減速しつつあること、そして保護貿易や地政学リスクの高まりで将来に対する見通しが不透明であることは確かです。とはいえ、そこまで経済は深刻な状況には陥ってはいないと考えられます。

 いずれにしても、雇用統計や景況感指数といった経済統計をきちんと把握することが大切です。これらの結果によって米国国債の長期金利が2%を割り込んでいくような日が続けば、結果的に円高が進むと考えられます。
 
 ――7月は参院選挙がありますが、為替市場への影響は?

 7月21日に開票される参議院議員選挙は、与党の意思と異なって2000万円の老後資金問題が争点になりそうな気配ですが、選挙結果は開けてみないとわからないと思います。
 
 仮に自民党が負けるようなことになれば、衆参ねじれ現象が起こることになり、当然株価は下がることになると思います。問題は為替ですが、円高になるのか、それとも円安なるのか――選挙結果の内容次第というところですが、予想が難しい。とは言え、あらかじめ結果を予想して決め打ちのような形で投資する方法は、なかなか成功しません。柔軟な姿勢がいいと思います。

 ――イラン情勢が緊迫しており、地政学リスクが気になるところですが・・・?

 米国がイランの最高指導者ハメネイ師を含めた強硬な追加経済制裁を科したことで、イランと米国は一触即発の段階とも言えます。その影響もあって、原油価格や金価格が上昇しています。こうした資源価格が上昇したときには、円高が進む傾向にあり、そういう意味ではしばらくは円高に注意することが大切と言えます。

 おそらく当面は107円前後の相場が続くことになり、1ドル=109円代あたりが円安の上値メドと言っていいかもしれません。しばらくは円高に注意すべきですが、一方的な円高や円安は考えにくく、一定のボックス圏での動きになることが予想されます。

 ――7月の予想レンジを教えてください。

●ドル円・・1ドル=106円50銭-109円
●ユーロ円・・1ユーロ=121円-125円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.12ドル-1.15ドル
●ポンド円・・1ポンド=133円-138円
●豪ドル円・・1豪ドル=74円-76円50銭

 ――7月相場の注意点を教えてください。

 参院選の結果は蓋を開けてみないとわかりませんが、ポイントになるのは7月末のFOMCで、米国の金利がどの程度引き下げられるのか。7月はFOMCの判断が出るまでは投資家の思惑が錯綜する相場になりそうです。

 米中貿易交渉や日米貿易協議の行方も気になるところですが、イラン情勢にも注意が必要です。ただ、いずれにしても米国の金利引下げの可能性が大きいため、ドル円相場では円安に触れる可能性はあまりないと考えて良いでしょう。

 投資のスタンスとしては、たとえば109円代まで円安が進んだときにはドルをいったん売るといった投資法があります。ドルの戻り売りにかける投資スタンスで良いのではないでしょうか。円高に進んだ時は1ドル=105円が目安になると思います。105円を下回るようなことになれば円高もピークに近いと考えていいと思います。(文責:モーニングスター編集部)