ドル円は5月の雇用統計で、予想を大きく下回る雇用者数が発表されたことで107円88銭まで下落。ただその後はメキシコとの関税を巡る問題が好転したことで108円台を回復し、108円20-25銭近辺で越週。ユーロドルでもドル安が進み、1.1348までユーロが買われる。

 株式市場は利下げ観測と、トランプ大統領がメキシコに対する関税を見送ると発表したことで大きく上昇。ダウは5日続伸し、S&P500なども4日続伸。債券相場は続伸し、長期金利は一時2.05%台まで低下。引けにかけては2.08%台まで反発。金は8日続伸。原油価格も続伸し、54ドル近辺まで上昇。

5月失業率        → 3.6%
5月非農業部門雇用者数  → 7.5万人
5月平均時給 (前月比) → 0.2%
5月平均時給 (前年比) → 3.1%
5月労働参加率      → 62.8%
4月消費者信用残高    → 17.497b

ドル/円   107.88 ~ 108.50
ユーロ/ドル 1.1269 ~ 1.1348
ユーロ/円  122.08 ~ 122.71
NYダウ   +263.28 → 25,983.94ドル
GOLD   +3.40   → 1,346.10ドル
WTI    +1.40   → 53.99ドル
米10年国債 -0.036  → 2.081%

本日の注目イベント

日  4月貿易収支
日  5月景気ウオッチャー調査
中  5月貿易収支
中  5月マネーサプライ
英  4月貿易収支
英  4月鉱工業生産
英  4月月次GDP
加  5月住宅着工件数
加  4月建設許可件数

 5月の雇用統計はサプライズでした。非農業部門雇用者数が、予想の17.5万人に対して、7.5万人と、大きく下振れしていました。民間の雇用統計である「ADP雇用者数」でも大きく予想を下振れしていたことから、「ひょっとしたら・・・?」との観測もありましたが、この両者は必ずしも連動していないことから、楽観視していただけに驚きでした。今回の内容は5月分が予想を下回っただけではなく、4月分、3月分もともに大きく下方修正され、むしろこちらの方がより驚きが大きいかもしれません。

 ここから読み取れることは、米労働市場は今年の春先からすでに後退局面入りしていた可能性が高いということです。米経済指標に関しては、昨年ほどの好調さは見られず、それでも今年は強弱まちまちで、相対的には日本や欧州など、他の主要国と比べ優位性を維持していました。これが、米中貿易戦争が激化したにも関わらずドルが堅調に推移していた理由の一つでした。今後この労働市場が縮小に向かうとすれば、当然金融当局が金融政策の舵を再度切り直すことは想像に難くありません。事実、雇用統計が発表された先週金曜日の債券市場では、FRBが年内に2~3回の利下げに動くといった観測から長期債が買われ、長期金利は一時2.05%台まで低下する場面もありました。

 FRBの使命は「物価の安定」ということに加え、日銀やECBにはないもう一つの使命である「雇用の最大化」という使命が法律で課せられています。2015年末にリーマンショック後初めて利上げに踏み切って以来、政策金利に連動する形で雇用は順調に拡大してきました。その雇用にも、そろそろ暗雲が立ち込めてきたということですが、今後米中貿易戦争が激化するようなら、労働市場はさらに縮小ペースを速める可能性もあり、「雇用統計」が再び市場の注目を大きく集める日が来そうです。

 トランプ大統領は7日、メキシコからの輸入品への関税発動を見送ると発表しました。メキシコが移民を食い止める強硬な措置を取ることで合意したことが、その理由になっています。トランプ氏はまた、「メキシコが大量の農産品を購入することで合意した」とも述べ、メキシコとの「ディール」が成功したことをアピールしています。NY株式市場はこの報道を好感し、ダウは263ドル高で取引を終えました。ダウはこの結果、先週5日間を通じて全て上昇し、この間の上昇幅は1168ドルと、4.7%の上昇率を記録しています。

 上記メキシコとの関税問題が解消したことに加え、FRBが利下げを行うとの見通しが急速に高まり、足元ではFRBが年内に利下げを行う確率は「97.9%」まで上昇しています。早ければ今月の会合でその議論を行い、7月の会合での利下げといった見方が有力です。さらに年内に2回利下げを行う確率も、34%程度まで高まっています。「米中貿易問題の不透明さ」と、「雇用の悪化」が利下げ観測を高めたという、やや皮肉な結果になっています。

 ドル円は先週末にも107円台後半を試しましたが、押し戻されています。これで107円80-90銭の水準を4回ほど試しましたが、全て押し戻されており、この水準がかなりしっかりしたサポートレベルと見られています。一目均衡表ではまだ下落基調を維持していますが、「MACD」では、8時間までの足でゴールデンクロスを示現してます。まだドルの上値は重いものの、何かのきっけでは109円に向かう可能性もあるかもしれません。「戻り売り」のスタンスを維持しながらも、「日足」のゴールデンクロスには注意したいところです。

 本日のドル円は108円~108円70銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)