パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が、金融政策を決定する「FOMC(米連邦公開市場委員会)」後の記者会見で、これまで予定していた金利引上げのスケジュールを撤回し、金融引き締めの政策を大きく転換した。この発表によってニューヨークの為替市場はドル安円高に大きく動き、1月4日に続いて、またしても想定外のボラティリティー(変動幅)がマーケットを襲った。様々なイベントが控える2月だが、どんな為替市場になるのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に2019年2月の為替相場の行方をうかがった。

 ――FRBが大きく「ハト派」に転向した背景には何があるのでしょうか?

 大きな要因は、米中貿易交渉に代表される保護貿易主義の動向、そして米国景気の先行きに後退懸念があることだと思われます。さらに、金利引上げが続くという懸念から米国株が大きく下落したこと。加えて、トランプ大統領の不透明な政策などが影響したのではないかと思います。

 注目したいのは、パウエル議長がFOMC後の記者会見で、金利引上げを一時的に停止すると発言したこと。さらに、バランスシートの縮小にも言及しました。これまでのタカ派的な言動が一気にハト派に転換したことを意味しています。

 とは言え、金利引上げの可能性がゼロになったわけではなく、パウエル議長もデータを尊重していくと述べていますから、場合によっては年内にも1回程度あるかもしれません。そういう意味では、2月に発表される統計などにきちんと注目していく必要があります。

 ――米中貿易の行方はどうなるのでしょうか?

 2月中に最も注目すべきことと言えば、やはり米中貿易交渉になると思います。1月30日~31日に実施された閣僚級貿易協議の結果、トランプ大統領が再び中国の習近平国家主席と会談し、最終的な合意を目指すことになりました。

 トランプ大統領自身が、中国代表団を率いる劉鶴副首相と会談しており、貿易不均衡以外の課題である知的財産侵害問題や技術移転の強要、人民元相場等についても議論し、互いに合意したといわれています。

 米中貿易交渉の期限は3月1日ですから、2月中はこうしたニュースを注意深く見ていく必要があると思います。たとえば、米中貿易戦争の影響や政府機関の閉鎖といった影響を受けて、今後の米国経済の先行きには大きな懸念があるとも言われます。

 ――実際のところ、米国経済の先行きは?

 2月1日に発表された雇用統計では、非農業部門雇用者数が16万5000人増の予想のところ31万4000人の大幅増でした。一方で、失業率は7か月ぶりの高水準となる4.0%となり0.1%上昇しました

 ハト派に転換したばかりのFRBにとっては、最悪のタイミングとも言えますが雇用者数の大幅な増加は米国景気の好調さを象徴しており、FRBが今後どんなコメントを出してくるのかが注目されます。もっとも、企業業績の先行きは不透明であり、すでに業績を悪化させたアップルなどの「FAGA」、そして、中国銘柄と呼ばれる企業業績に関しても不安が拡大しています。

 加えて「トランプリスク」と呼ばれるトランプ大統領の政策にも不安があります。「INF(中距離核戦力)全廃条約」の破棄を一方的に発表するなど、地政学リスクの高まりを演出し、さらにメキシコの壁建設のためには非常事態宣言も検討中と報道されています。延期されていた一般教書演説も、現地時間で2月5日(日本時間2月6日早朝)に決まり、どんな演説になるのか注目したいところです

 ――米国以外のリスクとしてはブレグジットの行方があります。為替市場への影響は?

 英国議会は、メイ政権が出したブレグジットの修正案を可決しましたが、早速トゥスクEU(欧州連合)大統領やマクロン仏大統領が、再交渉には応じないと言うコメントを発表しました。

 仮に、合意なき離脱(ハードブレグジット)が起こった場合、どういった事態が起こるのか・・・。誰にも予想できないところに不気味さがあります。ハードブレグジットに陥った場合、当然ながら英国ポンドやユーロは売られることになり、ドルが上昇して円も連動して安くなる可能性があります。

 ブレグジットの期限は2月29日ですから、2月はひょっとしたら大荒れになるかもしれません。ブレグジットの行方は注意深く見ておく必要があるかもしれません。

 ――日本国内の動向はどうでしょうか。踏まえて2月の予想レンジは?

 貿易戦争の影響が出て中国経済の陰りが鮮明になれば、日本経済にも少なからぬ影響が出て来る可能性があります。とりわけ、日立建機やコマツといった中国銘柄については、注意深く見ておく必要があるかもしれません。株価が下落すれば、ドル円相場などにも影響が出てきます。2月の予想レンジは次のような数値を考えています。

●ドル円・・1ドル=107円-110円
●ユーロ円・・1ユーロ=122円-127円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.12ドル-1.16ドル
●ポンド円・・1ポンド=137円-147円
●豪ドル円・・1豪ドル=77円-81円

 ――最後に、2月相場の注意点を教えてください。

 1月相場はある意味で非常に大きく荒れた市場になりました。1月4日の急激な円高では、数多くの人がロスカットの対象になりました。

 1月30日のニューヨーク市場の急激な円高も、瞬間的に大きく動く相場展開となりました。米中貿易戦争やブレグジットといった将来予測の難しいイベントが数多く控えているなかで、ボラティリティーが大きくなることは避けられないでしょう。

 そういう意味では、1月同様に2月相場も大きな波乱が起こる可能性があります。ポジションを低く抑えて、大きな変動に備えましょう。(文責:モーニングスター)。