シュローダー・インベストメント・マネジメント日本株式運用の副責任者である荒井卓氏(写真)は、今年1月に開催された個人投資家向けのセミナーで、「これからの株式運用では、ESGの視点が成長企業を見極める上で一段と重要になってくる」と語った。荒井氏の講演の要旨は以下の通り。

<ESGの視点が株式運用や資産運用で持っている意味>

 ESGというワードを最近、見聞きすることが増えていると思う。環境・社会・ガバナンスの3つの単語の頭文字をとってESGだ。最近では廃プラスチックが環境を汚染しているということで、外食でストローの廃止が進んでいる。総合商社で石炭ビジネスをやめるところもある。ESGが企業経営や経営判断の中に入ってきている事例だ。

<ESGが株式運用、資産運用のリターンにつながるのか?>

 株式投資で投資先を選ぶ伝統的な基準に、ESGを加えている。法令順守や環境・社会への配慮が足りない企業には投資を回避している。昨今では、いろんな不祥事があり、株価が大きく下落している。事前に見極めるのは難しいが、投資家としてはできるだけ避けて、優良企業に投資をしたい。

 株式運用において長期投資を重視している。株式運用で大事なことは、企業が業績をあげていくことだ。長期投資だからこそ、配当や株価の上昇でリターンを得ることができる。短期的に投資すると、株価の動きを予測することは非常に難しい。反対に、この企業が業績を伸ばせるのだろうかという長期の視点では考えやすい。これがリターンにしっかりつながっていくと考えている。

<ESGを取り入れた銘柄選定の考え方>

 長期で投資するからESGに注目する価値もある。「環境」は、温暖化、自然災害などのリスクに対応しているか、キチンと考えているかなどに注目している。「社会」は、社会としっかり共存する姿勢を持っているか。また、従業員がハッピーで気持ち良く働いているかなどに注目。「ガバナンス」は、指名委員会、報酬委員会などが体制としてしっかりしているのかなどを見ている。このような視点が、将来の勝ち組企業を見極める上で大事だと考えている。

 しかし、ESGの評価だけを基準に企業を選んで良いわけではない。本業がしっかりしていることが前提になる。将来にわたって成長の期待が高いこととESGの両方を、総合的に判断する必要がある。

 インパクト投資やエコファンドなど、社会に良いことをしている企業に投資しようという考え方もある。しかし、最終的にリターンをあげたいと考えていると、ESGだけではダメだ。本業がしっかりしていることが大事になる。

 たとえば、ガバナンスの視点で、社外取締役は、少数株主の利益を代表し、第三者として経営をチェックする重要な役割がある。経営者と経営やガバナンスの状況を聞く時には、あえて社外取締役に話を聞くようにしている。形式だけ整えても意味がない。社外取締役の独立性に疑念があったり、取締役会へのチェック機能が有効ではない場合は、ガバナンスに問題がありということになる。

<ESGが運用成績に良いリターンにもつながる>

 ESGの視点が株価への影響は、(1)持続的に成長する企業が選別できる(2)リスクの高い企業を回避することができる。問題が表面化してしまうと、なかなか逃げられない。リスクはできるだけ避けるようにしたい。そして(3)課題解決による株価の上昇期待がある。

 (1)は一般的に株価が高い。(3)のケースは株価が割安なことが多い。経営者の考え方が変わってきて企業が変わろうというケースは、投資家としては1番おいしい。株価が安いところから正常化する過程で利益が得られるからだ。

 ESG投資が長期的なリターンにつながると考えている。世界の投資家も重視していて資金流入が続いている。ESG指数のリターンも通常の株式よりも良いリターンが得られ、リスクも低いという傾向がある。

 「シュローダー・アジアパシフィック・エクセレント・カンパニーズ」は、日本を含む、アジア・パシフィックの企業に投資している。アジア・パシオフィックは人口増、イノベーションも活発で魅力的な地域といえる。加えて、環境問題や社会的な問題も出てきている。いろんな問題に企業がしっかり対応している企業に投資することが大事だ。

 ESGにしっかり取り組んでいるアジア・パシフィックの企業はROEが高くなる傾向がある。ROEが高いと株価が割高になる傾向もあるが、足元は株価が下落して割高感はない。これからの投資の視点としてESGに注目していただきたい。(情報提供:モーニングスター社)