三井住友トラスト・アセットマネジメントは1月11日、東京・六本木で「5G フォーラム」を開催した。同社が設定・運用する「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)」の取り扱い販社を対象に、総務省総合通信基盤局電波部移動通信課の清尾勇哉氏(写真:左)が講演した他、AI(人工知能)の未来について国立情報学研究所社会共有知研究センターセンター長の新井紀子氏(写真:中央)が解説。また、三井住友トラスト・アセットマネジメント執行役員投信営業第二部長の大野宏央氏(写真:右)が、「2019年は5G元年になる」として同ファンドの運用について紹介した。

 総務省の清尾氏は、米国、中国、韓国とともに5G(第5世代移動通信システム)実現の先行4カ国に数えられる日本の取り組み状況について、2019年中に本格展開を予定している韓国、米国、中国に対し、「2019年9月に開催されるラグビーワールドカップでプレサービスを実施し、2020年の東京オリンピックパラリンピック競技大会前には本格展開をめざし、この3月末頃に5G用の国内周波数割当を実施する」と語り、5Gの普及において世界の先頭集団として走り続ける考えとした。

 このように、5G分野で世界先端レベルのインフラ構築に積極的に取り組んでいる背景は、「日本が1990年代後半以降にGDPが成長していない現実があり、成長していないから賃金も増えていない。また、日本の産業成長は、ICT(情報通信産業)に依存してきたという側面もある。これから拓ける5Gのビジネスモデルは、B2B2Xであり、情報通信のみならず幅広い産業を巻き込んで全体として成長を遂げることができる。この分野で日本の成長を確かなものにしたいという思いが強い」と語っていた。

 一方、社会共有知研究センターの新井氏は、2010年に世界に先駆けて「ホワイトカラーの仕事の半分がコンピューターに置き換わる」というメッセージを発信した数学者として知られ、AIで東大入試に合格するというプロジェクトのリーダーも務めていた。早くからAIの可能性に気づき、第一線の研究を続けている研究者だが、「シンギュラリティなどといわれ、いずれコンピューターが人間を超えるというようなことを言う人がいるが、機械が人智を超えるようなことはない。機械学習は、論理と確率と統計を使ったf(x)=yの関数で表すことができるものでしかない。汎用AIは不可能である。囲碁のAIは、どこまで突き詰めた機械学習をしても囲碁でしか勝てず、将棋用には別のAIを使う必要がある」とAIの限界を語った。

 ただ、その反面で、人間の読解力が低下している現実も指摘。「大規模なリーディングスキルテストを実施した結果、ホワイトカラー50万人の平均はAIに負けていることが分かった。AIは決して意味を理解してはいない。理解する能力があるはずの人間が機械に負ける現実を前にすると、AIを使いこなす側の人間と、AIにいわれるままにAIに使われる側の人間というように、人間が分断されてしまうような世界がやって来るかもしれない」と、機械学習によってAIの能力が年々向上していくことに対して「人間は向き合っていかざるを得ない」と警鐘も鳴らしていた。

 三井住友トラスト・アセットマネジメントの大野氏は、同ファンドの運用成績を振り返り、「世界の株式市場の調整局面において、国内の主なテクノロジーファンドと比較して下落幅が抑制されていることが確認できた」とした。たとえば、2018年1月末-3月末まで世界株式(MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス<配当込み、円換算>)が8.3%下落する中で、同ファンドは3.4%の下落にとどまった。また、同9月末から12月末までに世界株式がマイナス15.9%下落した局面で、同ファンドの下落率も15.9%だったが、フィンテック関連株ファンドは22.3%下落するなどテクノロジー関連株ファンドは世界株式の下落率を上回るものが少なくなかった。

 大野氏は、「株式市場のボラティリティ(価格変動率)が高まり、個別企業の利益成長率を重視した物色が強まると、5G関連企業には追い風になる。また、米中覇権争いが激しくなったとしても、両国にとって5Gは重要な産業であり、その発展は妨げられない」と5G関連株のポテンシャルの高さを強調した。そして、新しい観点として、「世界の中でも高い経済成長が期待できるアジア地域の5G関連株に特化して投資するファンドにも可能性がある」と語った。「中長期の視点で大きな成長が見込まれる5G関連株に引き続き注目していただきたい」と今後も積極的な情報提供に努めると約束していた。(情報提供:モーニングスター社)