大和総研金融調査部の研究員 矢作大祐氏は12月27日、「中国北京市で感じた2つの変化-中国経済の期待と不安-」と題したレポート(全2ページ)を発表し、この11月に訪中して感じた中国の変化をレポートしている。1年ほど前と比較してキャッシュレスやシェアリングエコノミーが一段と進展する中、中国市民の財布のひもは少し固くなっているようだ。レポートの要旨は以下のとおり。
 
 11月半ばから後半にかけて中国北京市及び河北省石家荘市を訪れた。1年ぶりの訪問だったにもかかわらず、北京市や石家荘市にはポジティブ・ネガティブな変化が起きていた。
 
 ポジティブな変化に関しては、日常生活の利便性が向上していたことである。例えば、従来は空港や新幹線の駅では正しく並んでいても横入りなどがたびたび起き、油断はできなかった。今回の訪中での驚きは、主要な公共の場において、誘導役の係員などが配置されたことである。中でも、ショッピングセンターではヒトではなく、ロボットが巡回し、誘導役を担っていた。
 
 また、シェアリングエコノミーに関しては、街中でシェアリング自転車ではなく、シェアリング電気自動車をたびたび見かけた。都市部では渋滞抑制のためのナンバープレート規制があり、自家用車で自由に行動できない中、シェアリング電気自動車は新しい交通手段になるかもしれない。
 
 宅配サービスに関しても変化があった。住宅地には宅配ボックスが置かれるようになった。以前は宅配サービスを頼んでも、配達員と配達時間を電話で交渉する必要があった。また、配達員も注文者と連絡がつくまで待つ必要があり、時間のロスが発生した。しかし、宅配ボックスがあれば、配達員も注文者もストレスを感じることはない。なお、宅配ボックスは着払いにも対応可能であり、注文者は宅配ボックスに表示されるQRコードを読み取り、支払うことでボックスを開けることが可能である。
 
 筆者が北京に滞在していた2017年頃は、キャッシュレスやシェアリングエコノミーの普及、ロボットの活用が街中で少しずつ増え始めた段階であった。わずか1年足らずで人々の生活の質をさらに向上させる変化を遂げていたことは大きな驚きであった。
 
 翻って、ネガティブな変化は景気の悪化である。例えば、北京市の繁華街である三里屯などは普段は多くの買い物客であふれているが、人影はまばらだった。北京市の人気のレストランに食事に行った際も、週末にもかかわらず空席が目立った。独身の日(11月11日)のネットセール直後だったことが、人々の消費意欲を抑制した可能性もある。ただし、現地でのヒアリングによれば、2018年のネットセールでは耐久財ではなく、消費財を購入する人が増えたとのことであった。人々の財布の紐は固くなりつつあるのかもしれない。
 
 こうした背景には、収入の伸びの鈍化があるのかもしれない。中国では、給料アップを目的に転職することは一般的である。北京市においては、経営状況を良く見せるために人材を募集し面接まではするが、実際には採用しないといった企業もあり、転職市場が停滞しているという声もあった。また、都市部を中心に不動産価格の上昇は抑制されており、株価も冴えないことから、資産効果が期待しにくいことも要因かもしれない。
 
 ネガティブな変化に対して、いざとなったら中国政府がインフラ投資などでテコ入れをするので過度な心配は必要ない、との声がほとんどであった。急激な景気の悪化には対応が必要だが、インフラ投資等に代表されるオールドエコノミーへの回帰は望ましくない。
 
 2019年まであと数日。中国経済は今後どのような様相を見せるのか、期待と不安が入り混じる。(情報提供:大和総研)(イメージ写真は三里屯の子ども。提供:123RF)