世界中の株価が年初来最安値を割り込むなど、株安が止まらない。今年4回目となる米国の金利引上げは、予定通り12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で実施されたものの、米中貿易交渉の結果はどうなるのか。そして、採決が延期となったブレグジット(英国のEU離脱)はできるのか・・・。結果次第で2019年は年初から大きな変動も予想される。米国を始めとして順調だった経済成長も、ここにきて減速する兆候が現れてきている。19年1月はどんな相場になるのか、そして19年はどんな1年になるのか・・・。19年全体の予測も含めて、外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)にうかがった。

 ――12月後半になって株価や金利、原油価格など大きく揺れ動いていますが・・・?

 やはり、現在の世界経済が直面している様々なリスクに対して、市場が反応しているとみていいと思います。とりわけ、この12月の大きな下落はFOMCが、今後の金利政策をどういう形にするのか、市場が警戒したためと思われます。

 結果的に、12月の金利引き上げは予定通りあり、来年も3回の利上げから2回に減少したものの、2020年に1回というスケジュールは維持されました。ただ、市場が予想したよりも金融政策に消極的な姿勢を示す「ハト派」ではなかったために市場がやや混乱しました。米国の金利上昇が来年も引き続き示されることで、株式市場や債券市場で警戒感が強まったと見ていいでしょう。

 もっとも、トランプ大統領が金利引上げに強い口調で反対してきたにも関わらず、FRB(連邦準備制度理事会)が金利を引き上げてきた背景には、あくまでも実体経済が依然として強い、という現実がありました。ところがここにきて米国不動産市場の一部に停滞が見え、ISM製造業景況感指数も2017年5月以来の数字に悪化したことで、市場には不安感が広がっています。最近では、トランプ大統領がパウエルFRB議長の解任を検討しているといった情報まで流れており、今後の動向に注視する必要があります。

 ――株価が下落を続けている背景には何があるのでしょうか?

 現在、世界経済が抱えているリスクは非常に数多くあります。1月の中旬には英国とEUが取り交わしたブレグジットの交渉案が英国下院で裁決されます。今のところ承認される見通しは立っていないようですが、仮に英国議会で否決されるようなことになれば、合意なきEU離脱(ハードブレグジット)となり金融市場には大きな不安定な要因になります。

 さらには、トランプ大統領と習近平国家主席の話し合いによって90日間延長された米中貿易交渉も、2月末には期限を迎えることになります。お互いにどこまで妥協できるのかわかりませんが1月中にも何らかの情報が出てくるはずです。

 カナダ政府が、世界シェア第2位の中国大手通信「華為技術(ファーウェイ)」の最高財務責任者(CFO)を逮捕したことで、米中貿易交渉が決裂するのではないかと言われていますが、この成り行きにも注目する必要があります。また、日本では米国との間で「物品貿易協定(TAG)」の交渉もスタートします。その結果次第ではドル円が大きく動いてくる可能性があります。

 この他、米国の利上げがどこまで進むのか、 あるいは米国経済そのものがどうなるのかについても注目したいものです。最近になって、景気後退の予兆と言われる「逆イールド現象」が現れました。短期金利が長期金利を上回る現象で、米国景気が減速するのではないかと心配されています。米国経済が減速すれば、当然ながら世界経済全体が景気後退に入っていくことになります。

 ――具体的に、この1月はどんな動きに注意すべきでしょうか?

 まずは、1月4日に米国の雇用統計があり、この結果次第では米国の景気減速が鮮明に見えてくる可能性もあります。米国経済に鈍化の可能性が出てくれば、米ドルが売られて円高が進むかもしれません。ドル円相場は、これまでほとんど動いてこなかったものの、ここまで株価が大きく揺れ動くとボラティリティ(変動幅)が拡大してきました。

 さらに、1月中旬には英国でブレグジットの採決がありますが、その前にメイ首相の不信任案が出される可能性があります。仮に、メイ首相の不信任案が採決されるようなことになれば、ポンド市場はむろん、為替相場全体も大きく揺れ動く可能性があります。ドル円で言えば、米ドルが売られて円高になる可能性もあります。

 加えて、米軍関係者や政権内の反対を無視してシリアからの米軍撤退を命令したかと思えば、時間をかけると言い直すなど、トランプ米大統領の様々な言動も「トランプリスク」という形で出てきます。また、メキシコとの国境に壁をつくる予算を盛り込まなければ補正予算案に署名しないと宣言し、すでに一部の政府機関が閉鎖されています。下院の多数派となった民主党がどんな動きをしてくるのか、注目されるところです。

 ――日銀は相変わらず大きな動きを見せていませんが、1月の予想レンジは?

 12月に行われた日本銀行の金融政策決定会合では、目新しい動きはありませんでした。1月には日米物品貿易協定もスタートします。トランプ大統領の言動に世界が振り回される「トランプリスク」は健在で、海外の動向次第で「円」は動くことになると思います。1月の予想レンジは次の通りです。

●ドル円・・1ドル=109円-113円
●ユーロ円・・1ユーロ=123円-129円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.120ドル-1.155ドル
●ポンド円・・1ポンド=138円-144円
●豪ドル円・・76円-79円

 ――2019年はどんな1年になるとお考えでしょうか?

 セミナーなどでは、メインシナリオとリスクシナリオの2種類の予測をお話しています。メインシナリオでは、米中貿易交渉が全面解決とまではならず、ある程度妥協が成立して貿易戦争に終止符が打たれる状況。米中貿易交渉は、知的財産の問題など多岐に渡るので、交渉には長い時間がかかると思います。お互いに報復関税をかけあうと言った戦いに終止符が打てれば、相場も落ち着きを取り戻してくるはずです。

 もう一方のリスクシナリオでは、米中貿易交渉が決裂して、さらなる貿易戦争が拡大するシナリオです。米中貿易戦争がヒートアップし、お互いに25%の関税をかけあうような事態になれば、ドルが売られて円高となり、1ドル100円-105円程度まで円が上昇するようなシナリオがあるかもしれません。

 欧州も合意なきブレグジットになるかどうかの瀬戸際を1月中旬には迎え、それを乗り切ってもフランスのマクロン政権の政策に反対するイエローベスト運動の行方がどうなるのか。イタリアの財政問題はEUとの間でとりあえず妥結しましたが、メルケル独首相の後任問題もクローズアップされてきます。来年1年間の予想レンジとなると次のようなレンジが考えられます。

●ドル円・・1ドル=100円-118円
●ユーロ円・・1ユーロ=115円-135円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.100ドル-1.180ドル
●ポンド円・・1ポンド=128円-155円
●豪ドル円・・72円-85円

 ――最後に、2019年のFX投資の注意点を教えてください。

 とりあえず、この年末年始は投資家が少なくなるため、流動性が枯渇し、変動幅の大きな相場になることが予想されます。ある程度、ポジジョンを抑えて市場の動向を見据えましょう。

 年間を通しては、リスクシナリオを常に頭の片隅において、投資のタイミングを決めることが大切です。独断と思い込みを捨てて、ニュースなどにも頻繁に目を通して、余裕を持った投資が必要です。とりわけ、トランプリスクは2019年も健在のようですから、要注目です。(文責:モーニングスター)。