大和総研政策調査部の主任研究員 神尾篤史氏は11月30日、「安倍首相の訪中と一帯一路と新たな冷戦と」と題したレポート(全1ページ)を発表し、通商問題で角突き合わせている米国と中国の間で、日本に求められる役割について考察した。レポートの要旨は、以下の通り。
 
 米中が対立を深めている。通商摩擦が大きな問題とみられているが、貿易だけでなく安全保障、そして国際秩序を巡る全面的な争いへと発展し、新たな冷戦と称されている。対照的に日中関係は急速に好転している。米中のそれぞれと良好な関係にある日本に求められる役割を考える好機だ。
 
 昨年12月に米国が発表した「国家安全保障戦略」では、中国などを「米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力」と名指しで批判した。米国は今年に入り、安全保障や産業面に影響を及ぼす先端技術の優位性などを維持し、国益を守るために対中政策を強化している。
 
 具体的には、関税の引上げを行い、その対象額は2017年の対中輸入の半分程度に及ぶ。さらに、先端技術など安全保障や産業に影響を及ぼすものに関して、外国企業による米国への投資規制と米国からの輸出の管理を強化するために、外国投資リスク審査近代化法と輸出管理改革法を国防授権法に盛り込む形で成立させた。また、米国がメキシコとカナダと結んだUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)では、中国を念頭に置いた非市場型経済国と貿易交渉を行う場合に他のUSMCA加盟国との協議を義務付ける条項が盛り込まれ、日米欧三極貿易大臣会合では第三国の非市場志向型の政策や慣行に対して協力を強化していくことを確認した。
 
 一方で、日中関係は一時期の険悪なムードが様変わりし、融和的な雰囲気にある。本年10月下旬に安倍首相は習国家主席との会談で、「競争から協調」「お互いパートナーとして脅威にならない」「自由で公正な貿易体制の発展」という3原則を示した。また、日中以外の第三国でのインフラ開発を共同で行うことにもなっている。欧米諸国などから批判が多い一帯一路に日本の協力が得られると中国は解釈しているようであるが、日本は一帯一路への協力とは言及しておらず、(1)開放性、(2)透明性、(3)経済性、(4)財政の健全性といった国際スタンダードに合致したプロジェクトについて是々非々での参画を示している。
 
 世界の二大大国である米中関係が悪化し、世界経済に不透明感が漂う中で、日本は米国との同盟関係を重視しながら、米中関係を仲介することが求められる。例えば、第三国でのインフラの協力案件で見せた行動のように、中国に全面的に与するわけではなく一緒に行動しながらも中国の行動を好ましい方向に誘導していくことである。米国側が問題視する知的財産の収奪などについても、話し合いを通じて中国に国際ルールの遵守を強く求めていくことが望ましい。一方で、日本は米国とも話し合う余地があると思われる。米国の研究者から聞いた話では、米国内で対中政策に総意が得られているわけではないという。中国と同様に、米国側にも対話を通じて過激な行動の自制を促すべき余地は小さくないと思われる。日本の役割は重要である。(イメージ写真提供:123RF)