モーニングスターは11月30日、東京・八重洲で独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)を対象とした「モーニングスター IFAフォーラム2018」を開催した。同フォーラムで講演したモーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真)は、「資産運用業界にもロボ・アドバイザーをはじめとしたAI(人工知能)ツールが活用されているが、不確実な市場を相手にする資産運用アドバイザーの付加価値はAIには置き換えられない。お客さまの立場に立った、分かりやすく、客観的、総合的なアドバイスで新しい時代を開いてほしい」とIFAにエールを送っていた。
 
 銀行や証券会社など金融機関に所属せずに系列にとらわれないアドバイザーとしてIFAが注目されるようになってきた。米国では、銀行や証券会社を凌ぐほどの信頼を勝ち得ているIFAも存在するほどに発展している業態だが、日本では依然として金融機関が資産運用アドバイスの中心にある。朝倉氏は、「この12月1日で、銀行が投資信託の窓販を開始して20周年を迎える。この20年間で投信市場は日本株中心の商品から、バランス型やREIT(不動産投信)、コモディティなど投資範囲を広げ、ファンド・オブ・ファンズなどの新しい形の商品も出てきたが、残念ながら貯蓄から投資への動きは進んだとはいえない。今後の資産運用マーケットの拡大には、トータルソリューションを提供する、フィナンシャルアドバイザーの存在が不可欠になる」と、金融機関の奮起やIFAの成長などへの期待を語った。
 
◆「アクティブ」から「パッシブ」への流れが加速
 
 投資信託市場の現状は、先行する米国では「『アクティブ』から『パッシブ(インデックス)』へ」の動きが加速。特に、リーマン・ショック以降にアクティブファンドからの資金流出とパッシブファンドへの資金流入という潮流が明確になっている。この結果、現在の米国投資信託市場で、純資産残高トップ10のうち、7本をインデックスファンドが占めるという状況になった。「インデックスファンドは手数料が安いことが特徴。投資信託を販売して手数料を得ようという金融機関には厳しい時代だが、この潮流は日本でもより明確になっていくだろう」(朝倉氏)と見通している。
 
 一方、世界的にロボ・アドバイザーを使った資産運用も急速に広がっている。世界におけるロボ・アドバイザーによる運用残高は、2017年に42.9兆円になったと推計されているが、これが、2020年には309.2兆円、2022年には445.2兆円に拡大していくとみられている。金融機関が提供しているファンドラップなどのラップ口座は運用を任せられて便利だが、年間で3%を超えるような手数料を取られる。より、安い手数料を求める人がロボ・アドバイザーを利用しているようだ。このサービスが広がっていけば、アドバイザー不要の時代になりかねない。
 
◆AIでは代替できない資産運用アドバイス
 
 朝倉氏の見方は、「ロボ・アドバイザーなどフィンテックを活かした資産運用サービスは今後も発展し、商品やサービス等を賢く選択できる投資家は増えていくだろうが、だからといってアドバイザーの需要がなくなるわけではない。ポートフォリオ・ソリューションの提供といった付加価値の高いアドバイスができるアドバイザーへの需要は枯れることがないだろう。士業と呼ばれる弁護士や医師、会計士などの仕事は、過去の判例や症状を検索して解決策を当てはめるだけであればAIに取って代わられるだろう。しかし、予測不能な証券市場への対応力が求められる資産運用アドバイザーのニーズは、AIが代わりにできることではない」と語っていた。
 
 ただ、これからのマーケットは、「量的緩和・金融緩和が終焉を迎える。歴史的に株価水準が高く、かつ、ボラティリティの高まる株式市場。さらに、米中貿易戦争とそれに伴う世界経済の成長率の押し下げ懸念など、順調に右肩上がりで上がっていく市場が続くとは言えない。アメリカの巨大な消費市場が中国製品などを旺盛に消費し、その中国へは東南アジアや日本が商品を輸出するという循環がこれまではあった。その世界経済の大きなエンジンであったアメリカと中国が対立して貿易を大幅に制限するという状況になっているのだから、世界の経済に大きなマイナスといえ、マーケットは崩れてもおかしくない」と厳しい見方を示した。
 
 「それでも、世界経済の成長は止まらない。これまでも、日本株のバブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショックなど数々の危機はあったが、世界株式の指数は緩やかな右肩上がりを続けてきた。どの国や、どの産業、どの企業が活躍するのかは変わるが、全体としての株式市場の上昇は継続するだろう。長期の資産形成には、世界の株式に分散投資して、かつ、時間分散で下落時にはより多くの量を購入するといった積立投資を継続することが有効になるだろう。一方で、より短い期間で運用する場合は、為替ヘッジありの債券を組み合わせたポートフォリオ運用で安定を心掛けたい。このように投資の目的や期間などに応じた、運用アドバイスができることが重要になる」と、これからの資産運用アドバイザーの役割を語った。
 
◆資産配分だけでなく資産の最適配置にも留意したアドバイスを
 
 最後に、これまでの「アセット・アロケーション(資産配分)」だけのニーズから、一般(特定)口座や、つみたてNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)など、複数の口座を使って、どの口座に、どの資産を組み入れるのが最適か? ということが問われる「アセット・ロケーション」へのアドバイスのニーズも出てきている。「iDeCoで60歳までは引き出せない資金であれば、株式100%のポートフォリオで、新興国やフロンティアも組み入れるような運用で良いが、いつでも換金が可能なNISAであれば、債券にも配分するポートフォリオにするなど、口座の特徴に応じた資産配分という配慮も必要になる。アセット・ロケーションの最適化を考えることは、AIやロボットでは難しく、アドバイザーの役割といえるだろう」と語った。
 
 そして、アドバイスに当たって、ロボ・アドバイザーの機能を使ったり、ファンドのコストや売買回転率、資金流出入の状況などを比較して検討するツールを使うなど、投資家の納得のいく情報提供ができることも付加価値として重要だと伝えていた。