SBI証券は11月8日、三井住友トラスト・アセットマネジメントが今年10月1日に三井住友信託銀行の運用部門と統合し、日本最大規模の資産運用会社として新発足したことを受け、個人投資家向けに「統合記念セミナー」を開催した。セミナーでは、三井住友トラスト・アセットマネジメントのシニアストラテジストである上野裕之氏が「2019年に向けた投資環境の見通し」を解説し、同社執行役員 投信営業第二部長の大野宏央氏(写真)が「未来の世界を変えるテクノロジー」をテーマに同社が設定・運用しているファンドを紹介した。

 大野氏は、統合によってファンドマネージャーが128人、アナリストが39人という充実した運用チームになり、海外10カ国に33社の運用パートナーを持つという広い海外ネットワークも得たことで、「グローバルな視点で、中長期の資産形成の一助となる多様な運用商品を高い品質で届けることにこれまで以上に力を注ぎ、皆さまのご期待に応えていきたい」と語った。

◆世界経済の底堅い成長は継続するも米中摩擦はリスクに

 上野氏は、世界各国の経済の現状について、「アメリカの強い経済に支えられ、世界経済は3%台後半の経済成長を続ける見通しだが、米中で激化する貿易摩擦が一段と激化すれば、世界経済の成長を鈍化させる。IMF(国際通貨基金)は、米中の追加・報復関税が一段と激化し、かつ、米国が自動車および自動車部品に追加関税を課し、貿易相手国が同額の報復関税措置を実施し、さらに、企業の投資意欲が悪化するなどという最悪のシナリオになれば、世界経済の成長率は2%台に落ち込み、日本はマイナス成長の可能性もあると予測している」と注意が必要な局面であると解説した。

 特に、台頭している中国については、米国の対応は厳しいという見方を示した。「1987年に1人あたりGDPで日本が米国を超え、GDPの総額で米国の2分の1の水準に達した時の米国による日本たたきが激烈だった。それと同様に、2020年台にはGDPで米国を超えて世界一になると予測される中国には相当のプレッシャーを与え続けるだろう。世界の覇権を巡る争いであり、米中間の緊張は長引く可能性が強い」と語った。

 ただ、米国と日本の貿易交渉については、既に合意ができたNAFTA(北米自由貿易協定)のメキシコ、カナダとの合意内容が、現状追認型の救済措置が盛り込まれたことから、過度に悲観的になる必要はないとの立場。特に米国と日本の間には首脳間に深い個人的な関係ができていることから、日本が一方的に譲歩を迫られるようなことはないだろうという見方を示した。

 このような経済環境の見通しに基づいて、日米の株価の見通しは、「1991年12月末から18年9月末までに、米国の株価は8倍以上に値上がりしたことに対し、日本は27年ぶりの水準に回復してきたところだ。日米の株価には大きな違いがある。一般的に長期の株価は各国の名目GDPに沿った値動きをする傾向があり、日米の今後の株価も名目GDPの推移に沿った動きが期待できる。日本はデフレに苦しんだ歴史があるが、年1%程度以上の物価上昇が定着することが確認できれば、デフレからの脱却がなったと考えられ、緩やかに拡大するGDPの動きに沿った株価の動きが期待できる」とした。

 また、中長期の景気循環サイクルを捉えた投資が有効と伝え、1800年代に蒸気機関の導入で始まった第1次産業革命から、電力の普及、コンピューターによる自動化によって進んできた産業革命が、現在は、広がる通信網を背景としたIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)などが拓く「第4次産業革命」といえる時代であると解説。大きな波がやって来ている「5G」「モビリティ」「ロボティクス」「ナノテクノロジー」などに中長期の成長機会があると語った。

◆これからの社会変革の根幹を担う次世代通信基盤「5G」の大きな魅力

 大野氏は、具体的な投資テーマとして「5G」(第5世代移動通信システム)を取り上げて、「5Gは、ロボット、AI、自動運転などのテクノロジーを進化させる通信技術といえ、関連するビジネス領域は1,300兆円超におよぶ。あらゆる情報技術分野において成長の可能性の根幹を担う息の長い投資テーマ」と紹介した。

 5Gの特長は、「現在(4G)の100倍の通信速度、1000倍の移動通信量という高速・大容量」、「同時につながるモノの数が現在の100倍になる多数同時接続」、「反応の遅れが現在の10分の1になる超低遅延」の3つ。「たとえば、超低遅延について自動運転を例にとると、障害物を感知してからブレーキが作動するまでの距離はできるだけ短い方が良いが、時速100キロで運転をする際に、4Gではブレーキが作動するまでの距離が1.4メートルだが、5Gでは、2.8センチと格段に短くなり、安全性が高まる。さらに、多数同時接続の技術により、車があらゆるモノと繋がることでヒトが運転しない完全自動運転が可能になる。また、医療分野では遠隔医療や遠隔手術などが高速・大容量や超低遅延によって実現できる。このような事例が多くのビジネス分野で生み出される。」と紹介した。

 三井住友トラスト・アセットマネジメントが設定・運用している「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)」は、5G関連ビジネスを3つにカテゴライズし、5G通信ネットワークとサービスの拡充とともに発展していく「旬」の企業群に重点的に投資していく。大野氏は、「5G産業は、国家的なインフラ事業として政府が推進の主体となって設備整備計画ができている。現在は米国、韓国が先行しているが、中国の追い上げも大きく、日本も2020年の東京五輪までにネットワークをつくるという目標がある。このインフラ整備計画に基づいて、関連産業が動く。「THE 5G」では、その時々で業績の盛り上がりが見込まれる関連分野に投資の中心銘柄を入れ替えていく」と語っている。

 3つのカテゴリーは、通信ネットワークの土台である「通信インフラ関連」。次に、ネットワークを活用して具体的なサービスを行う「通信サービス関連」。そして、そのネットワークにおける製品を提供する「IoT機器・装置関連」だ。現在は、「通信インフラ関連」において、高周波数帯で高速・大容量の通信を行うための小型基地局(スモールセル)の設置が進んでおり、アンテナ、光ファイバーやネットワーク機器の出荷が進んでいる。今後更に5Gネットワークが整備され、商用化が進展することを時系列で追いながら、大きな業績の向上が見込まれる企業を重点的に組み入れていく方針だ。

 このように「THE 5G」は、業績の裏付けがある銘柄群に投資する方針のため、「将来の成長期待」に基づいて株価が先行評価されている「IoT」や「フィンテック」などの関連銘柄がPER40倍~50倍であることと比較し、10月末現在の「THE 5G」組み入れ上位10銘柄の平均PERは19倍と、高い成長期待がありながら割高感のない銘柄に投資している。このような業績に裏付けられた銘柄は、全体的に株価が下がる時には相対的に負けにくい銘柄群といえる。

◆アクティブファンドの要素を入れた新しい「SMT MIRAIndex」の可能性

 統合後に新規設定した新しいインデックスシリーズ「SMT MIRAIndex」は、既存の「SMT インデックスシリーズ」とは異なる価値を提供するインデックスシリーズとして生まれた。

 「SMT インデックスシリーズ」は、年金基金などの機関投資家の資産運用の手段として中心を占めるパッシブ運用のツールとして2008年1月に国内で初めてインデックスファンドをシリーズ化した。投資対象資産(株式、債券、REITなど)、投資対象地域(国内、先進国、新興国など)でそれぞれカバー範囲を広げてきた。既に合計で2200億円を超える運用資産残高に成長した。年金運用のノウハウを活かした、同社ならではの商品提供だった。

 「SMT MIRAIndex」は、アクティブファンドの要素である「未来のテーマ」と「厳選投資」をインデックスにプラスしたもの。たとえば、第1弾の「ロボ」は、「売上高の50%超がロボ関連」「時価総額5億米ドル以上」などで、成長産業である「ロボット関連企業」として対象銘柄を絞り込み、さらに、収益性指標の「GPA(総資産に対する売上総利益=粗利益の割合)」によって実質的な収益力が高い対象銘柄を絞り込むという手法を採用した。

 その結果、過去3年間の累積収益率は、世界株式(MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス)がプラス38.1%のところ、代表的なロボット関連株式インデックスがプラス84.2%に対し、新たに開発したインデックスはプラス148.7%になった。大野氏は、「運用のエンジンは、よくよく考えて練られていないとパフォーマンスに結びつかない。「SMT MIRAIndex ロボ」は既存のインデックスを上回るパフォーマンスが確認できた。年金運用等で培ってきたインデックス運用のノウハウを活かし、ロボに続く新しいインデックスを作っていきたい」と語っている。

 大野氏は、「マーケットのリスクは不透明だが、実需に裏付けられた『THE 5G』や『SMT MIRAIndex』は、長期の目線で投資をご検討いただける運用商品であると思う。これからも、豊かになった運用のリソースを活かして、魅力的な商品を開発し、皆さまの資産形成に貢献してまいります」と力強く語った。