いよいよこの11月6日は、米国の中間選挙が実施される。米トランプ政権の2年間の政治活動の評価が下される時と言っていい。中間選挙の結果によっては、為替市場をはじめとして株式市場にも大きな影響を与えると言われている。トランプ米大統領を支持する共和党が勝つのか、それともトランプ政権に異議を唱える民主党がリベンジを果たすのか・・・。11月相場最大の争点といってもいいだろう。外為オンラインの佐藤正和シニアアナリスト(写真)に11月の為替市場の行方を伺った。

 ――中間選挙の結果によって為替はどう動くのでしょうか?

 今のところ、米国議会の上院では共和党政権が有利、下院では民主党が有利と言われています。とはいえ、最近のアンケート調査などによると共和党の健闘が報道されており、選挙結果は予断を許さない状況と言えます。

 仮に、上院下院ともに共和党が勝利した場合、トランプ政権の政策が評価されたこととなりドルが買われ、米国株式も強くなることが予想されます。ただし、保護貿易主義のさらなる強化が懸念され、財政問題もクローズアップされてくるかもしれません。

 その反対に、上院下院共に民主党が勝利した場合、ドルは売られ、株も安くなると考えるのが自然です。大統領の罷免を目指した弾劾裁判のスタートと言った可能性も出てくるわけですから、マーケットは当然「リスクオフ」に陥ることになるはずです。もっとも2年前の大統領選挙のときには、市場の予想を裏切ってトランプ勝利で株は大きく上昇しました。当時のドル円相場では、その後2か月かけて18円以上も円が安くなりました。

 現在、予想されているメインシナリオでは上院が共和党勝利で、下院は民主党勝利になります。民主党が下院を抑えた場合、減税法案などが通らなくなるかもしれませんから、個人消費の落ち込みなどが予想され、景気が減速して株が安くなる可能性があります。

 一方で、共和党が上院を抑えれば、とりあえずトランプ政権が意図する移民政策や保護貿易は継続できますから、現体制を歓迎して株が上昇し、ドルも買われるかもしれません。予想通りの結果ですが、安心してはいけないシチュエーションと言えます。

 ――選挙結果を予想して投資するのは難しいでしょうか?
  
 大切なことは事前の予想を鵜呑みにしないことです。また自分の思い込みだけで投資しようとしないほうがいいかもしれません。とはいえ、中間選挙によってマーケットは大きく乱高下する可能性があります。一時的な現象ではありますが、そういう場面で利益を追求するのもFX投資の醍醐味です。

 ただしリスクを抑えるという点では、経済全体が今後どういう動きをしていくのかを冷静に見極めることの方が大切です。マーケットが、選挙結果がもたらす景気の動向をどう読むのか・・・。まずは冷静に見極めることです。

 そういう意味では、11月2日に発表された10月の米雇用統計は大きなトレンドを見るうえで重要かもしれません。事前予想では非農業部門の雇用者数は前月比19万5000人増でしたが前月比25万人増と大きく上昇。失業率は3.7%と市場予想と一致しました。

 ちなみに、平均時給の伸びも対前年同月比で3.1%増となり、2009年以来の大幅な上昇になりました。半世紀ぶりの低い失業率と合わせて、米国経済は順調と言っていいでしょう

 ――11月のドル円相場の見通しは?

 11月中のイベントとしては23日に開催されるG20(20カ国首脳会議)がありますが、そこで中国の習近平総書記とトランプ米大統領との会談が行われる予定です。そこで何が話し合われるのかが注目点になります。

 中間選挙直後の11月7日-8日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)開催されますが、今回はパウエル議長の記者会見もなく利上げも予想されていませんが、発表されるコメントには注目しておく必要があります。

 一方、日本銀行の金融政策決定会合の予定はありませんが、10月末の会合でも大きな動きはありませんでした。ドル円相場の11月の予想レンジは――

●ドル円相場:1ドル=111円-115円

というところでしょうか。

 ――メルケル独首相が党首選出馬を辞退しました。欧州通貨への影響は?

 欧州では、イタリアの財政問題とドイツの景気悪化がクローズアップされてきました。そんな中で2005年からドイツの首相を務めて来たメルケル首相が、地方選挙の2度の大敗の責任を取って、キリスト教民主同盟(CDU)の党首選挙には出馬しないと表明しました。

 もっとも首相としては任期いっぱいの2021年まで勤めると宣言しており、ドイツの政治が不安定になる原因になるかもしれません。ドイツ景気も減速を示す指標が出ており、CDUに代わって極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」などが票を伸ばす原因になっています。

 またイタリアの財政問題も、EUの先行きに懸念を示しています。加えてブレグジット(英国のEU離脱)も正念場を迎えており、英国政府は11月21日までにEUとの離脱交渉をまとめたいという意向を発表していますが、越えなければならないハードルはまだ残っている状況です。離脱交渉がほぼまとまれば英国ポンドにも大きな影響が出てきます。

 11月の欧州通貨の予想レンジは次の通りです。 

●ユーロ円:1ユーロ=124円-130円
●ユーロドル:1ユーロ=1.115ドル-1.165ドル
●英国ポンド円:1ポンド=140円-150円
 
 ――豪ドルは相変わらず動きが少ないようですが、クロス円の予測は?

 オーストラリア経済は、やはり中国経済にある程度影響を受けます。米国との貿易戦争の影響で中国経済の先行きが不透明な状況では、オーストラリア経済もやや不安定要因が増すと考えて良いでしょう。

 ただし、こうした通貨の動きは豪ドルのみにかかわらず、円も含めた通貨全体の現象と言っていいでしょう。今回の株価下落では、思った以上に円高に振れなかった上に、そう大きなボラティリティ(変動幅)がありませんでした。米ドルだけが大きく揺れ動いたと言っていいかもしれません。

 実際にこのところ、この1年、円は大きな動きがなく、2018年年初来からのドル円の動きでも104円55銭-114円64銭と10円以内の小動きにとどまっています。12月末までどうなるのか分かりませんが、それだけボラティリティの少ない相場が続いているということです。

豪ドル円の予想レンジは--

●豪ドル:1豪ドル=79円-82円 

 ――11月相場の注意点とは?

 11月相場は米国の中間選挙の結果次第とも言えますが、現在では人工知能(AI)を使ったヘッジファンドなどの売買が多いため、どうしても相場はオーバーシュート気味になります。言い換えればシナリオなき相場が展開される可能性が高いと思っていいでしょう。

 瞬間的な動きに注意をして、シナリオを自分で勝手に立てないこと。思い込みでの投資は思わぬ結果をもたらす場合があります。ポジションを抑え気味にして大きなイベントの成り行きを見守る余裕が必要かもしれません。(文責:モーニングスター)。