フィデリティ投信は、「将来設計」の愛称で展開しているターゲット・デート・ファンド(TDF)に、2060年を満期とした2ファンド(ベーシックとアクティブ)を追加した。これによって、TDFのラインナップは、「2030」「2040」「2050」「2060」の4つの年限で、パッシブ運用型の「ベーシック」とアクティブ運用で運用成績を追求する「アクティブ」の2種を揃え合計8本になった。このうち、ベーシックの「2040」「2050」「2060」の3本がつみたてNISAの対象商品になっている。TDFのラインナップを拡充させた背景について、フィデリティ投信の確定拠出年金部長 本庄洋介氏(写真)に聞いた。
 
 ――TDFのラインナップを拡充している理由は?
 
 米国の確定拠出年金制度(DC制度)において、TDFは運用のコアとなる重要な商品だ。米国のDC加入者でTDFに100%資産配分している加入者は2017年末で全体の48.2%にのぼっている。特に、ミレニアル世代(Millennial Generation)といわれる1980年代から2000年代前半に生まれた若い世代では、67.3%がTDFに100%資産配分をしている。
 
 これほど米国のDC制度でTDFが活用されるのは、法規制の影響が大きい。米国では2006年の年金保護法の改正によって、「適格デフォルト商品」(Qualified  Default  Investment  Alternative)が制定され、デフォルト商品にターゲット・イヤー・ファンド(TDF)、SMAの401(k)プラン版であるマネージド・アカウント(加入者のプロフィールを反映し、リスク許容度や目標に応じた投資計画を策定・実行していく運用サービス)、バランス型ファンドの3類型が示された。適格デフォルト商品は、事業主が投資損失に関する受託者責任を問われず、また、デフォルト商品として元本確保型商品が選定されなかったこともあって、この法改正を機に、TDFをデフォルト商品に指定する動きが加速した。
 
 2007年末にTDFに100%資産配分しているDC加入者は6.4%だったが、年を経るに従ってその比率が高まっていった。この普及拡大期は、2008年のリーマンショックを挟んでいるとはいえ、基本的には米国の景気拡大、株高の期間に重なっている。TDFに投資した結果、運用成績が良かったために、その運用成績の情報が共有され、DC加入者の間でTDFを選ぶことが当たり前になっていった。DC市場でのTDFの浸透は、次第にDC以外の資産運用でもTDFを選択するというブームにつながった。現在は、TDFという商品カテゴリーだけで110兆円の運用資産残高がある。
 
 この5月から導入された日本の改正DC法で規定された「指定運用方法」は、米国の適格デフォルト商品ほど、商品を限定していない。指定運用方法は労使の合意を第一義として決定することとされ、元本確保型商品を採用することも排除していない。このため、米国ほどにTDFへの移行が急速に進むわけではないだろうが、改正DC法に触発される形でTDFへの問い合わせや採用が進んでいることは事実だ。
 
 また、フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査で、国内のDC加入者の5割弱がDCの資産配分の見直しを行っていないこと。また、DC加入者の約3割が、「自分の代わりに資産運用をしてほしい」と感じていることが分かっている。DC加入者の立場に立つと、リスク資産で運用しながら、退職時の接近に伴って自動的にリスク資産を減らして安定運用に切り替えてくれるTDFの機能は、今後一段と評価を高めていくものと期待している。
 
 ――フィデリティのTDFの特徴は?
 
 最大の特徴は、満期時点での元本確保を最優先しつつ、リターンの最大化を図るグライドパス(リスク商品の組み入れ比率の変更曲線)にある。満期まで十分の期間がある時には、株式の組み入れ比率が高く、満期が接近するにしたがって、急速にリスク資産の組み入れ比率を落とす独自のカーブになっている。様々な経済状況を想定してシミュレーションを繰り返し、満期まで投資を継続した場合、最終的に元本の毀損確率を2%にまで落として(平準化して)ある。元本変動商品をはじめて検討される方にも安心して持っていただけると思う。このグライドパスは、欧州で実績のあるモデルをベースに日本向けにカスタマイズしたものだ。
 
 また、ホームカントリーバイアスを可能な限り排除した。一般的に、バランス型のポートフォリオを組む時には「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」という4資産を軸に、配分比率を決定していくが、当ファンドでは、債券部分は「世界債券」というくくりにまとめてあり、これを為替ヘッジしている。マイナス金利にまで利回りが低下してしまっている国内債券を、あえて1つの資産クラスとして取り上げることなく、世界全体の債券市場を安定運用資産に位置づけている。
 
 そして、ベーシックシリーズは、インデックスファンドやETFを組み入れて、実質的な信託報酬が税込年0.38%以下になるよう低コストにした。
 
 さらに、満期時のリスク性資産の比率をゼロにしてある。TDFの中には、満期時に20%前後のリスク性資産を保有するタイプのものもあるが、日本のDC加入者の行動は、満期時に一括(一時金)で引き出してしまう方が大半だ。退職所得控除の税制メリットを活かすという点でも一時金受取りは合理的な方法なので、その実情に合わせた。
 
 ――今後の展望は?
 
 TDFは、資産運用における「アセット・アロケーション(資産クラスの配分)」、「リバランス(資産配分の復元)」、そして、「アセット・リアロケーション(資産クラスの配分見直し)」まで、自動的に行ってくれる“究極のおまかせ型ファンド”といえる。特に企業型DCに加入している若い従業員の方々は、自分の年金資産の運用・管理に気を遣うよりも、仕事を覚えてスキルを磨くことにまい進したいという気持ちの方が少なくないと思う。そのような「運用は丸投げしたい」と考えるDC加入者にはピッタリな商品だと思う。TDFを利用するメリットについて、情報発信を強めていきたい。
 
 また、ベーシックの「2040」「2050」「2060」の3本は、つみたてNISAの対象商品にもなっている。当社がDC向けに提供しているファンドは、一般に公募販売されているファンドと同じものだ。「フィデリティ・日本成長株・ファンド」は、約2,500の企業型DCプランで採用していただいている。これは、米国での投信運用普及の歴史に照らして取り組んでいることだ。
 
 米国では、多くの人が会社で導入している401(k)で投信に初めて触れ、その運用成績が良好であることから、一般の口座でも投信を購入するようになっていった。実際に80年代の米国の個人金融資産に占める投信の比率は5%弱だった。それが、401(k)の普及に伴って拡大し、20年間で9倍の45%の比率までになった。DCで積み立てている商品が、一般の口座でも同じように購入できることが大事だ。
 
 TDFも、企業型DCやiDeCoなどの長期の資産形成手段として使っていただくのにピッタリの商品だと思うが、同様につみたてNISAで積み立てていただくことにも対応できる。さらに、一般の口座で中長期に積み立てていただいても良いと思う。ターゲットとする年限は、ご自身の退職時期だけとは限らない。10年後、20年後などをイメージして、その時までの期限付きの資産形成の手段としてTDFをご活用いただきたい。