為替市場が不安定な動きになってきた。特にユーロ圏での政治的な駆け引きが通貨を不安定にさせている。英国のEU離脱交渉が進展しないままに月日が経過するうちに、イタリアでも 財政不安が再燃している。外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、「ユーロ圏の経済はしっかりしているものの、政治的な混乱が通貨の頭を押さえつけている。簡単に解決できる問題でもないので、不安定な値動きが続きそうだ」と見通している。神田氏の見通しは以下の通り。

 ――ドル/円は9月末に向かってドル高・円安の方向に動いたが、FOMCでの利上げ実施を受けて一段とドル高に進むとみていいのだろうか?

 9月中旬以降の ドル/円は、ドル高よりも円安の動きが強く出ている。米中貿易戦争が長期化の様相を強める中、過度な警戒感が緩んだと考えられる。

 また、市場の一部には、中国の対米輸出が削減されるために、日本が漁夫の利を得て経済にプラスという見方もある。そのために、日本株が上昇したことも 円安の流れを後押ししたようだ。

 FOMC後は、材料出尽くし感から、一時ドル売りの動きもみられたが、その後再び切り返して113円台後半へ上昇している。この過程で1月につけた年初来高値(113.39円)を更新しており、第4四半期に向けてドル高・円安が進みやすい地合いが整ってきた。

 当面のポイントは、10月第一週にある米国の経済指標の発表にある。米国の景気は強く、特に、賃金上昇率や、インフレ関係の指標が強いものであれば、再び高値に挑戦し、114円台をうかがう動きになる可能性 がある。

 日米金融当局の政策スタンスは、今年にもう一回、来年にも3回の利上げを計画する米国に対し、日銀は19年の消費増税を控えて金融緩和の長期化を容認しているため、鮮明な違いがある。利上げの継続に水を差すような経済減速の兆候が米国に出てこない限り、ドルの基調は強いだろう。

 なお、10月については昨年まで7年連続で月足が陽線、つまりドル高・円安が進んでいるというジンクスがある。明確な理由がない「アノマリー」ではあるが、中間期末を越えたことで本邦勢の「外モノ」投資が活発化しやすいことなどが、その背景にあると考えられている。

 ――ポンド/円が大きく動いているが、当面の見方は?

 9月のポンド高は、ポンド売りの手仕舞いによる買戻しの結果だったとみている。 EU側の主席交渉官であるミシェル・バルニエ氏が、英メイ首相が 示したEU離脱案・「チェッカーズ案」に前向き と報じられたことでポンド買いが先行したが、こうした楽観的な見方を否定する報道が続いたにもかかわらず、ポンドはその後も堅調を維持した。

 英国とEUの交渉については、9月20日のEU首脳 会議が不調に終わったことで10月18日からのEU首脳会議での合意は困難となった。北アイルランド国境問題などで英国から新提案があれば11月に臨時首脳会議を開催する用意はあるようだが、そこでの合意も難しい情勢だ。英国では9月30日から10月3日までメイ氏の与党・保守党大会が開催され、メイ首相の「チェッカーズ案」に反対をする勢力がメイ氏降ろしを画策しているようだ。英国内が一本化されていないことが、離脱交渉を一段と混迷させている。

 EU離脱交渉については、EU側はできるだけ厳しい条件を突き付け、英国に続く離脱者が出てこないように締め付けて置く必要があり、容易に妥協することはないだろう。19年3月離脱に向けて、EU各国の批准を得ることを考慮した交渉デッドラインは年内の合意成立と言われるようになってきた。時間的な余裕がややあるため、足元では「合意なきブレクジット」を材料にポンドが大きく下げる可能性は低下している。

 また、英国経済が強いことがポンドを支えている。今のところ、ポンドのEU離脱の不安が経済にダメージを与えるようなことにはなっていない。ドル安、円安の流れが続き、相対的にポンドが買われてきたものの、様々な不透明要因が横たわったままであり、一方的にポンドが変われるような地合いではない。

 当面は1ポンド=144円~150円程度で、不安定な相場が続きそうだ。

 ――その他、注目の通貨ペアは?

 ユーロ/円が先日、1ユーロ=133円に上昇し、5カ月ぶりの高値を付けた。しかし、イタリアを巡る問題がくすぶっており、このままユーロ高が進むとは思えない。

 イタリア政府が9月28日に示した2019年の予算案は財政赤字目標をGDP比で2.4%とする内容だった。EU基準である3%にこそ抵触しないが、そもそもイタリアの債務残高はEU内で突出して大きい。なお、良識派のトリア財務省は財政赤字をGDP比で1.6%に抑える案を主張していた。この予算案は今月半ばまでに欧州委員会に提出され審議に付されるが、すんない承認される可能性は低いだろう。

 イタリアの問題が拡大するようであれば、1ユーロ=127.5円くらいまではユーロ安が進んでもおかしくないとみている。