ドル円の9月相場は米国の利上げ以降、比較的ボラティリティ(変動幅)の大きな相場展開になった。久しぶりにドル円も1ドル=113円台に乗せ、為替相場も新たな局面に入りつつあると言っていいだろう。株式市場も米国のダウ平均は史上最高値を更新し、日経平均株価もバブル後の最高値を更新するなど、順調な動きを見せている。こうした中で、米国の中間選挙がいよいよ近づきつつある。相変わらずトランプ米大統領は中国との貿易戦争に邁進するなど、不規則な経済政策が続いている。不透明感の強い政治情勢の中で10月はどんな相場になるのか・・・。外為オンラインの佐藤正和シニアアナリスト(写真)に10月の為替市場の行方を伺った。

 ――久しぶりにドル円相場が動きましたが、今後の展開は?

 長い間1ドル=112円台をキープしていたドル円相場ですが、9月下旬になってにわかに慌ただしい動きになりました。この先113円台をキープして、その後114円台を固めていくのか・・・。動きを見守りたいところですが、先行きは相変わらず不透明と言わざるを得ません。

 9月25日から26日にかけて行われた米国の「FOMC(米連邦公開市場委員会)」では、予想通り金利が引き上げられて、米国の政策金利は年2.00~2.25%へと引き上げられました。リーマンショック以来10年ぶりの高い金利水準です。これで今年3回目の利上げとなりますが、FOMCの声明文によれば年内にもう一度の利上げが予想され、さらに2019年に3回、2020年に1回という従来の見通しが確認されました。

 この声明文によって、米ドルは全面的に買われドル円相場では113円台半ばまで上昇。声明文通りに利上げが実施されれば、金利誘導目標はいずれ年3.25~3.4%に達すると予想されました。ただ、今回の声明文から「緩和的」の文言が消え、2021年の利上げもゼロという見通しが示されたことから、市場は「FRBは現在の金利水準を金融緩和から中立的な水準になったと判断している」と見ているようです。いずれにしても、為替のみならず株式も含めて市場全体が「リスクオン」の状態になったと言って良いでしょう。

 ――懸念されている貿易戦争の影響はどうでしょうか?
  
 相変わらずトランプ政権の貿易に対する政策が過激になっています。9月21日には、2000億ドル(20兆2000億円)相当の中国製品に10%の追加関税を実施しました。最高税率25%の適用こそ1年先送りされましたが、中国政府は即時に600億ドル相当の米国製品に対して5~10%の関税を上乗せする対抗措置に出ました。中国は「首にナイフを突きつけられている」状態での交渉はできないと、これ以上の貿易交渉を拒否。終わりの見えない「泥沼化」が今後もしばらくは続きそうです。

 また、日米貿易交渉では安倍首相とトランプ大統領の直接対話によって、2国間のモノの貿易を自由化する「物品貿易協定(TAG)」の締結に向けた交渉を始めることで合意。交渉期間中は、自動車への追加関税を発動しないことを確認しています。

 こうした貿易交渉は、欧州やカナダとも進行中ですが、11月の中間選挙での勝利を目指したパフォーマンスの一環という見方もあります。少なくとも貿易交渉の行方については注目する必要があります。
 
 ――ドル相場の強さが目立ちますが、10月のドル円相場の見通しは?

 10月は、定期的なイベントとしてはFOMCもなく、日銀の金融政策決定会合もありません。あるとすれば、10月5日の米国雇用統計ぐらいですが、米国は住宅市場を除いて、あらゆる統計が絶好調という感じです。

 9月27日に発表された耐久財受注も、事前予想の2.0%を大きく上回る4.5%でした。貿易戦争の影響が出るにはもう少し時間がかかりそうです。FOMCの声明文がやや金融引き締めに消極的な「ハト派」だったにもかかわらず、ドル円が上昇したように、当面は「ドル」の1人勝ちが続きそうです。

 10月のドル円相場は、1ドル=112円-115円と見ています。10月は大きなイベントが少ないものの、為替相場の変動幅は高いとみていいと思います。とりわけ、北朝鮮の金正恩委員長とトランプ米大統領との2回目の会合があるとしたら、中間選挙前の10月の可能性が高く、相場はまたまた波乱含みになるかもしれません。

 ――ドイツで地方選挙がありますが、欧州通貨への影響は・・・?

 このところ、欧州ではポピュリズム政党が得票数を伸ばしており、選挙の行方が注視されています。例えば、ドイツでは10月にフランクフルトがある西部ヘッセン州、南部のバイエルン州といった経済規模の大きな州で州議会選挙が開催されます。

 最近になって、メルケル首相率いるキリスト教社会同盟は得票数を減らしており、右派のポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AFD)」が、どの程度得票を伸ばすか注目する必要があるかもしれません。イタリアやスペインもそうですが、ポピュリズムの台頭=EU離脱への機運が高まるのはリスクと言っていいでしょう。

 一方、欧州中央銀行(ECB)は9月からスタートさせたテーパリング(緩和縮小)を継続し、12月には量的緩和を終了させるプランに沿って動いています。また、ブレグジット(EU離脱)まであと半年となった英国は、「合意なきブレグジット」の可能性が心配されており、今のところ不透明な状況が続いています。10月の欧州通貨の予想レンジは次の通りです。 

・ユーロ円・・1ユーロ=128円-134円
・ユーロドル・・1ユーロ=1.14ドル-1.19ドル
・英国ポンド円・・1ポンド=145円-151円
 
 ――トルコリラが落ち着きを見せていますが、クロス円の予測は?

 トルコリラについては、中央銀行が金利を一気に6.25%アップさせ、年24%に引き上げたことでやや落ち着きを取り戻したようです。 10月3日にはCPI(消費者物価指数)の発表があり、楽観は禁物ですが当面トルコリラ相場は小康状態が続くと考えられます。

 クロス円で注目したいのは、豪ドル相場です。中国経済や資源価格の影響を受けやすいオーストラリア経済ですが、中国経済の行く末に不透明感があり、その反面で原油価格などが上昇傾向にあります。

 貿易戦争の影響でいずれは中国経済に陰りが見えてくるはずですし、そうなれば豪ドルにも下落傾向が出てきます。その一方で原油価格が上昇しており、今後の情勢次第では原油をはじめとする資源価格の上昇があるかもしれません。そうなると、豪ドルにはプラス材料となります。

 10月の豪ドル円相場の予想レンジは、1豪ドル=79円-82円50銭と見ています。

 ――10月相場の注意点とは?

 10月で注目したいのは、国内的には安倍自民党総裁が3選を果たしたことで実施される組閣人事です。財政出動に積極的な大臣が増えれば、それだけで円市場は買い場になります。国外で注目すべきは、実現するかどうかわかりませんが、トランプ大統領と金正恩委員長との2回目の会談です。非核化が明確になるようなら、ドルが買われてドル円相場では円安が進む可能性があります。

 現在、為替市場は米国経済が好調で12月の金利引上げを少しずつ織り込みつつある状態ですが、トランプ大統領のツイッターひとつで、相場はいつでも「リスクオン」から「リスクオフ」に転換する可能性があります。ボラティリティの高い相場が続くと考えるべきでしょう。

 利益確定をこまめにして、大きすぎるポジションを抱えない・・・。ニュースを常時チェックして相場の変動に備えることが大切と言えます。(文責:モーニングスター)。