人民元が対ドルで急落している。基準レートは今年4月17日の1ドル=6.2771元から8月14日には6.8695元と、9.4%の元安となった。米中貿易戦争といわれるほどに米国との激しい報復合戦が注目されるようになった6月15日以降に元安ペースは加速している。大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は8月14日、「人民元は大丈夫か?」と題したレポート(全5ページ)を公開し、今後の人民元の行方を考えるポイントを解説した。レポートの要旨は以下のとおり。
 
◆元の対ドル基準レートの決定方法は2015年8月11日に大きく変更され、それ以降、元ドルレートは主要国際通貨の変動の影響を大きく受けるようになった。足元の急速な元安はドルの独歩高によるものであり、当局はドル高に見合いの元安を「容認」しているのである。今のところ大規模な元買いドル売りの為替介入は避けられており、2018年6月と7月の外貨準備は2カ月連続で増加した。
 
◆しかし、今後何らかの要因で中国からの資金流出が大きくなったり、マーケット・レートが大きく元安に振れる(対ドルのマーケット・レートの当日の変動制限は基準レートの±2.0%)など、中国政府が容認し難い元安圧力が高まれば、元買い・ドル売りの為替介入を増やさざるを得ない。それによって外貨準備が急減すれば、元安圧力がさらに高まるという負のスパイラルが発生するリスクは残っている。しかし、巨額の外貨準備を費消してマーケットを力ずくで抑え込むのは避けるべきであり、マーケットの調整機能に多くを委ねることが望まれる。中国は市場の力を重視する一方で、元の過度の変動を抑えるためのセーフティネットを用意している。8月初旬には、中国人民銀行が市中銀行に義務付ける為替フォワード取引の準備金比率を0%から20%に引き上げ、投機的な空売りを抑制した。為替・金融・株式市場の安定化にとって、ここ数カ月が正念場となろう。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)