アドバンス・レジデンス投資法人 <3269> は、国内の住宅REITで最大規模だ。1年間に1口当たり1万円程度の分配金を安定的に出せる規模の賃貸マンションを保有している。同投資法人の運用を担っているADインベストメント・マネジメントのIR室チーム長代行 大福誠一郎氏(写真)は、先ごろ開催されたIRセミナーで、同投資法人の現状と今後の展望について、以下のように語った。
 
◆住宅J-REITで規模がNo.1、ワンルーム中心の賃貸マンションに特化
 
 「アドバンス・レジデンス」は、賃貸マンションに特化したJ-REITだ。スポンサーは、伊藤忠商事で、1月と7月の決算(配当支払い月は4月と10月)。1口当たりの投資口価格は28万5,000円前後で、1年間に10,548円(業績予想2期分)の配当を予定しているので、想定利回りは3.7%になっている。
 
 また、日本格付研究所から「AA」に格付けされているが、現在、日銀がJ-REITの購入を進めているが、その際の購入条件に「AA」格以上という条件がある。「アドバンス・レジデンス」では、すでに日銀が6%を超える持ち株比率となる大株主になってきた。
 
 特長は、まず、資産規模が住宅系J-REITで最も大きいこと。現在、保有物件数262物件、運用資産規模4,470億円、2万1,165戸の賃貸可能戸数がある。どの指標でみても、最も大きな住宅J-REITだ。規模が大きいと、分散投資効果がある。多くの物件、多くの賃貸戸数があると、1戸の退去の影響が小さい。オフィスビルなどでは、本社として貸していたビル1棟が退去によって空いてしまうということもあるが、住宅の場合は、1棟まるごと退去というようなケースは余りない。
 
 また、投資物件は、需要を押さえ、賃貸ニーズのあるところに投資している。たとえば、投資エリアは都心主要7区を中心に東京23区で全体の70%を占める。この他は政令指定都市が約20%だ。日本は全国的には人口が減少しているが、主要都市では人口が増えている。その人口が増えているエリアに集中投資している。
 
 物件タイプはシングルが56%を占め、2人住まい向けのコンパクトタイプを含めると全体の約80%になる。人口が増えているエリアの特徴は、明らかに就職、就学で増えている。このため単身者をメインのユーザーとして投資物件を決めている。コンパクトは共稼ぎの夫婦の世帯向けだ。
 
 賃料の価格帯は、10万円未満が50%になる。25万円未満が96%とほとんどを占め、普通の人たちが無理しないで借りられる賃貸物件に投資していることが分かっていただけると思う。
 
 次に、積立金の金額がJ-REITの中で最も大きい。325億円もある。1口当たり24,095円になっている。通常は利益の90%以上を配当するというJ-REITで、積立金は通常存在しにくいのだが、2010年に合併をした際の負ののれん(会計上の利益)が積立金として残っている。
 
 そして、安定的な分配金を出し続けている。現在、年間1万円の配当をメドに安定した分配を続けている。
 
◆4年にわたって賃料を引き上げてきた賃貸運営の実績
 
 現在の不動産運用は稼働率が高く、好調な時期にある。住宅系では稼働率95%が好調の目安になるが、「アドバンス・レジデンス」は、過去4年間にわたって95%超を続け、96%台に定着しつつある。
 
 このように稼働率が高く維持されている要因は、需要と供給が締まっているためだ。都心の人口は増加しているのだが、そこにマンションの供給が追い付いていない状況にある。開発が進まないのは、土地の価格が上がってしまっていること。また、東京オリンピックを控えて大手ゼネコンは職人の囲い込みに躍起になっていて建築現場は人手不足になっている。このため、当面は供給が追い付かない状況が続いて高い稼働率が維持されるものと考えられる。
 
 稼働率が高いと家賃の値上げもしやすい。実際にテナントの入れ替え時の家賃の賃料は、東京23区では入れ替え前と比較して2.2%増、首都圏で2.1%増になっている。札幌、福岡は好調だが、関西エリアはマイナス2.0%と苦戦している。これは、関西圏で賃貸マンションの供給が増えている関係だ。その結果、ポートフォリオ全体では、入れ替え時に1.2%増になっている。
 
 一方、テナントの変更がなく、更新もないなど、全ての賃貸契約の家賃前年比をみると、4年連続で上昇し、上昇トレンドが定着している。
 
 では、この家賃の値上げがどの程度見込めるのかということを試算すると、ポートフォリオの賃料水準を直近の成約賃料水準まで引き上げられた場合、あと0.78%程度の値上げは可能と試算できる。1口あたり60円~70円の押し上げ効果がある。
 
 また、賃料を上げるためにバリューアップ工事にも積極的に取り組んでいる。例えば、六本木の物件で70㎡の2LDKの物件は、バリューアップの結果、24.5万円の家賃を32万円に引き上げることができた。吉祥寺の45㎡、1LDKの物件は15.5万円が16.5万円になった。
 
◆量より質を重視した物件の取得、伊藤忠グループの開発物件が軸
 
 新しい物件の取得については、「量より質」を重視して取り組んでいる。現在の都内の不動産価格はバブル期を超えて価格が上昇しているところなので、利回りや物件のスペックが投資基準に合致した物件を厳選して取得している。但し、供給が絞られているので、良い物件は競合してしまい買いにくいというのも実情だ。
 
 このような時には、スポンサーである伊藤忠商事が開発した物件が優先的に取得できる。伊藤忠グループは、賃貸マンションの開発を従前よりに行っている。現在、完成前・計画中のもので、28物件、想定規模で470億円程度の資産があるが、1年あたり100億円をメドに売却する計画になっている。しっかり買っていって、規模の拡大を進めたい。
 
 また、物件取得に際して借入(有利子負債)が発生するが、賃料が安定し、稼働率が好調な中で、分配金を安定していくためには、費用(金利)を安定させるということが意味がある。そのため、借入期間の長期化を図るとともに、支払金利の固定化を図っている。
 
 現在まで、日本の金利は下がってきているので、全体の借入金の平均金利が0.9%のところ、直近で借り換えた場合の金利は0.44%と低い金利で借りられる。今後、段階的にやってくるローンや社債の借り換えの時期に、現在の金利環境を活かした借り換えを実施して、全体の借入金利の引き下げと安定化を図っていきたい。
 
◆引き続き年1万円の安定分配をめざす
 
 今後の分配金の見通しは、現在の積立金325億円を活用して安定的に分配していく計画だ。積立金は、税務通達にて最長50年間で均等に取り崩していくこととされているため、1期(半年)あたり3.35億円分、現在の発行済み口数に直すと1口当たり248円の余力があることになる。これを含めて、毎期4,500円以上の配当を安定的に出していこうと計画している。
 
 当面の分配金の見通しは、2019年1月期で5,249円を予想している。賃料の引き上げ余地は、向こう4年間で60円~70円の見通しで1年あたり10円~20円。支払利息の低減によって40円~50円のプラス効果があり、物件の購入による賃料収入の増額も期待できる。消費増税が実施されると、70円~80円のマイナス効果になるが、このような分配金の押し上げ効果を積み上げると、今後1-2年間は5,400円程度の配当が出せると予想している。引き続き、安定的な分配を期待される投資家の方々のご期待に応えていきたい。