野村不動産マスターファンド投資法人 <3462> は、今8月期の予想分配金3,081円、来2月期は3,102円を見込み、分配金の水準を着実に向上させている。同REITの運用を担っている野村不動産投資顧問の執行役員・NMF運用グループ ファンドマネジメント部長 増子裕之氏(写真)は、先ごろ開催されたIRセミナーにおいて、「成長資産、安定型資産双方の強みを掛け合わせることができる総合型ならではの特長を生かし、引き続き、分配金の安定的な成長をめざしたい」と語った。講演内容の要旨は以下の通り。

◆不動産収益のほとんどが分配されるJ-REITの魅力

 一般の事業会社は、利益を配当金として株主に還元するばかりではなく、内部留保として貯えている。そして、利益に対して法人税を納めている。このため、利益の中から配当に充当している金額の比率である配当性向は30~35%程度であることが一般的である。一方、J-REITは利益の90%超を配当に充当すると法人税が非課税になるため、多くのJ-REITで、利益のほとんど全てを分配している。つまり、ほぼ配当性向100%と考えて良いものになっている。

 一方、実物不動産を購入しようとすると、専門的で一般人には難しい手続きが多く、また1つ1つの物件が高額になるため、分散して多くの物件を購入することが難しい。また、売却にも時間がかかり換金しにくいというデメリットがある。その点、J-REITでは、たとえば「野村不動産マスターファンド投資法人」の場合、281物件を保有し、物件分散ができている。また、1口当たり15万円程度で投資ができ、上場しているため換金性が高いなど、手軽に不動産に投資ができるメリットがある。

 また、J-REITは、野村不動産など上場不動産会社と比較して、不動産賃貸事業しか行わないため事業が特化型で分かりやすい。そのため、配当が安定しやすく、配当予想を立てやすいという特徴がある。
 
◆投資対象の多様化が進んだJ-REIT市場

 2018年6月現在、J-REITは59銘柄ある。まず、「野村不動産マスターファンド」のような「総合型」は、色々な用途の不動産に投資するバランス運用型のREITといえる。複数の用途の不動産に投資するREITを「複合型」という。他に、オフィス、住宅、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケアなどの単独のセクターに投資する「特化型」のREITがある。

 上場59銘柄を規模別に並べると「野村不動産マスターファンド」は3番目に資産規模が大きい。資産規模は1兆円を超える大規模なものから、小さいものは165億円であり、平均は約2,809億円になっている。上位12リートで資産規模総額が半数を占めており、2極化が進んでいるのが現状だ。

 分配金利回りは、3%台のものから6%台のものまであるが、平均すると4.03%で、「野村不動産マスターファンド」は約4.0%と、ちょうど平均的な水準にある。分配金利回りが低いのは、それだけ株価が高く評価されているともいえる。最も利回りの低いREITは、いずれもオフィス特化型のREITで、オフィスは現在賃料収入が上がって収益向上期待が高まっているということも、株価が高くなる一因だと考えられる。

◆「野村不動産マスターファンド」の特長は大型・総合型

 野村不動産投資顧問は、もともと用途の異なる3つのREITを運用していた。2003年12月に上場したオフィス特化型の「野村不動産オフィスファンド」、2007年2月に上場した居住用施設特化型の「野村不動産レジデンシャル」、そして、2013年6月に上場した物流施設・商業施設複合型の「旧・野村不動産マスターファンド」だ。この3銘柄が2015年10月に合併し、総合型の現「野村不動産マスターファンド」になった。合併時には257物件で合計7,836億円の規模になった。総合型REITとなったことで、オフィス、商業施設、物流施設、居住用施設を主たる投資対象として持続的な外部成長が可能なREITになった。

 そして、2016年9月に三井住友信託銀行系の総合型「トップリート」と合併し、さらに規模を拡大、国内最大級のREITとなった。合併時点では、272物件、資産規模合計9,328億円を有する国内第2位のREITになった。

 「野村不動産マスターファンド」の特長は、まず、大型であること。様々な用途の物件に投資することでリスク分散による安定運用が可能になる。また、大型であることによって、資産の入れ替えを行いやすく、それによりポートフォリオの質を向上させることができるメリットがある。

 次に、「総合型」であること。たとえば、オフィスは全体の50%程度を占める主要な資産で、現在は賃料も上昇傾向で収益が上がりやすい成長資産だと位置づけられている。ただ、景気が悪化している局面では、これは逆に働く可能性がある。その場合は、住宅や物流など他の安定型資産がパフォーマンスを支えてくれる。成長資産、安定型資産双方の強みを掛け合わせることができるのは総合型ならではの特長であり、安定した分配金の配当につながると考えている。

 そして最後に、スポンサーである野村不動産のサポートが受けられること。様々な用途の物件開発をしている野村不動産から持続的に物件を取得して成長を図ることが可能だ。
 以上の特長より、投資家の方々にとっては、総合型でバランス運用をしていることで分配金が安定するメリットがある。そして、時価総額が大きいことにより投資口価格が安定しやすいことも、安心材料となろう。

 直近期末時点で保有している271物件の分散状況を見ると、全国の政令指定都市を中心に広く分散しているものの、1都3県の東京圏に213物件と全体の3分の2を保有している。用途の内訳は、景気との連動性が強いオフィスと駅前立地商業施設を合わせた「アップサイドセクター」で58%を占める。それ以外の郊外型商業施設や物流施設、住宅など「安定セクター」で全体の42%である。

 また、人口が増えている地域に注力したいと考え、東京圏に80%以上の物件が集中している。また、保有物件の規模で上位10物件が全体に占める比率は25.7%と十分に分散されたポートフォリオになっている。日本は、直下型の地震などがいつ起きるか分からないというリスクがあるが、分散されたポートフォリオを持っていれば、仮に1つの物件が災害にあっても全体への影響が小さいものになると考えている。

 スポンサーである野村不動産から、魅力的な開発物件の供給を受けることができる。たとえば、PMO(プレミアム・ミッドサイズ・オフィス)という中規模オフィスビルの物件は、一流の設備を持った中規模ビルとしてテナントから一定の評価をいただいているオフィスビルだが、現在19物件の開発計画がある。

 また、住宅では野村不動産が開発する賃貸マンション「PROUD FLAT」、物流施設では、大型かつ高機能な物流施設「Landport」を開発している。商業施設では、飲食店の集合施設として「GEMS」というシリーズが好評だ。このような時代の要請に適った物件を持続的に開発する計画がある。「野村不動産マスターファンド」では、魅力的な物件を継続して取得していくことによって、持続的に分配金を引き上げていく計画だ。

◆10年の成長計画は前倒しで推進中。成長フェーズで更なる成長へ

 2015年10月に3つのREITを合併したときに、10年間の成長計画「中長期運用戦略」を策定した。設立後10年間を、資産の質を高める「クオリティフェーズ」、物件取得と内部成長によって積極的に成長する「グロースフェーズ」、そして、ブランド価値を確立する「マスターフェーズ」という3つのフェーズに分け、設立より10年後にJ-REITの代表銘柄へと成長する計画とした。

 2017年10月に、第1フェーズである「クオリティフェーズ」を終了した。当初計画では500億円分の物件を売却する予定だったが、実際には1,050億円分を売却し、1,334億円分を取得した。この結果、トップリートとの合併時点の平均築年数が19.3年だったが、2.5年間経過した今、平均築年数は18.4年へと若返っている。
 物件の質的向上に加え、内部成長も協力に推進した結果、1口あたり分配金を2,600円から3,000円に引き上げた。今後も内部成長と外部成長の両輪で分配金の成長を目指している方針だ。

 また、今年2月に第1回公募増資を実施し185億円を調達、334億円分の優良物件を取得した。この結果、増資後の資産規模は281物件で9,559億円となった。この結果、8月期の予想分配金は3,081円、2月期は3,102円を見込んでいる。

 ポートフォリオのNOI利回りは、16年2月期に4.9%から、16年8月期に5.1%になった。物件入れ替えなどで伸び悩む期もあるが、概ね右肩上がりになっているほか、これまですべての期において期初に立てた予想分配金を上回る分配金実績を残してきた。18年2月期のLTV(ローン・トゥ・バリュー)は44.6%で横ばい。総資産に占める有利子負債の割合を意味するが、機動的な借入れによる物件取得の余力を保持するため、中期的には段階的に下げていく方針である。

 最後に、2月の第1回公募増資時に、新しいブランドイメージとして「鹿(Deer)」をデザインしたロゴマークを作った。鹿は、毎年角が生え変わる特徴を持っている。不断の進化によってNO.1ブランドをめざす野村不動産マスターファンドの姿と重ね合わせた結果、NO.1ブランドの象徴としてさわしいと判断した。また、鹿は嗅覚に優れ、時速70kmで走る俊敏さもあるが、これは環境変化に即した判断力と機動的な実行力を表している。そして、鹿は2mの跳躍力がある。野村不動産グループのサポートを受けて大きく成長したいという野村不動産マスターファンドの決意を示している。 また、デザイン面において、遠くを見据えた表情は長期的な視野と洞察力を表し、掻き上げた前足は、確かなパフォーマンスを築く明確な意志を表している。

 新たに設けたロゴマークで表したように、従来以上にしっかりしたパフォーマンスを残し、投資主の皆さまにご愛顧いただける銘柄になっていきたいと考えている。