日本がリードするADB(アジア開発銀行)の向こうを張って中国が主導する国際金融機関として立ち上げられたAIIB(アジアインフラ投資銀行)だったが、設立当初の高い注目度と比べると、最近はニュースになることも少ない。大和総研政策調査部の主任研究員 神尾篤史氏は5月30日、「その後、AIIBはどうなった?」と題したレポート(全1ページ)を発表し、AIIBの現状と今後の展望について考察した。レポートの要旨は以下の通り。
 
 中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)が発足して2年が経過した。発足前後は、既存の国際金融機関と比較したAIIBの役割や加盟国の動向などが連日のようにメディアで報道されていたが、最近では目にする機会がぐっと減った。発足当初の57カ国という加盟国数の多さや中国による一帯一路関連のプロジェクトへの力の入れ様、さらにはメディアの注目度から、個人的には短期間でADB(アジア開発銀行)と伍していくのではないかという印象すら持っていたが、実際には極めて慎重、かつ着実に活動している。
 
 まず、現時点のAIIBの加盟国であるが、84カ国と非常に多い。発足当初の57カ国からさらに増加しており、加盟国が67カ国のADBを上回る。AIIBにはアジアや欧州に加え、アフリカや南米の国々も参加している。
 
 その一方で、気になる融資承認額は、2016年、2017年の2年間で総額42億ドル(24件)にとどまる。ADBの融資承認額はこの2年間で366億ドルであるから、AIIBのそれはADBの9分の1である。ただし、1966年にADBが発足した当初、最初の融資承認までに発足から1年強かかったことと比べれば、AIIBの動きは迅速と言えるだろう。
 
 これまでのAIIBの融資承認案件を見ると、世界銀行との共同融資が10件、ADBとの共同融資が4件と、他の国際金融機関との共同案件が過半を占める。発足前は、AIIBの融資基準(例えば環境や人権に関する基準など)が他の国際金融機関よりも緩くなってしまうという問題が生じるのではないかという懸念があった。しかし、すでに他の国際金融機関と多くの共同案件があり、世界銀行やADB以外の国際金融機関とも協力覚書を結んでいることを考えれば、そのような懸念は今のところ小さいといってよい。
 
 最後に、債券発行による資金調達であるが、2018年中に実施する可能性が高いようだ(日本経済新聞 2017年11月1日「アジア投資銀、来年起債へ、金総裁『民間資金を活用』、日米に参加よびかけ」)。債券発行が始まれば、融資可能金額が増えていく。
 
 ADBによれば、アジア45カ国・地域のインフラ整備必要額は2016~2030年で26.2兆ドルと試算されており、年間では平均1.7兆ドルになる。この膨大な金額を各国の財政資金や国際金融機関による融資で満たすことは難しい。AIIBの発足によっても、この状況は何ら変わらない。
 
 しかし、IMFのデータに基づいて計算すると、アジア域内には可処分所得から消費額を控除した国民貯蓄が年間8.2兆ドル(2017年)も生まれており、この資金をインフラプロジェクトに向かわせることができれば状況は変わる。AIIBを含めた国際金融機関や各国・地域に求められることは、インフラプロジェクトと民間資金を結び合わせることにある。インフラプロジェクトに対する民間資金への呼び水となる取組みや、新興アジア各国・地域の資本市場育成に注目したい。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)