文在寅(ムンジェイン)韓国大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)委員長による南北首脳会談が行われ、朝鮮半島の「完全なる非核化を目指す」ことで合意し、板門店宣言が取り交わされた。この歴史的な動きに世界の金融マーケットは一様に歓迎ムードだが、少なくともトランプ米大統領と金正恩委員長による首脳会談の結果が出るまでは不透明な市場が予想されそうだ。一方で、米国の長期金利が久しぶりに3%を超え、米国の長期金利上昇の動きが止まらない。米国の長期金利が上昇すれば、当然円安ドル高の方向に進むことになるはずだ。5月の市場動向を外為オンラインの佐藤和正シニアアナリスト(写真)に伺った。                            

 ――5月相場のポイントになるものは?

 やはり北朝鮮の動向が大きなポイントになってくるのではないでしょうか。朝鮮半島の完全なる非核化とはいえ、どこまで実施されるのか、そのプロセスはどういう形になるのか・・・。あまりにも多くの不透明要因があり金融マーケットもすぐには判断できないと思います

 為替市場としては、早ければ5月の後半にも行われる米朝首脳会談の行方を見守りたいところです。 いずれにしてもこのまま何事もなく平和に向かって邁進していくとは、ちょっと考えにくいかもしれません。

 トランプ大統領と金正恩委員長の会談の内容によっては、為替市場も株式市場も大きく翻弄される可能性が残っている、と言っていいでしょう。万一、交渉決裂なんて言うことになったら、円は大きく買われるかもしれません。北朝鮮リスクは5月相場最大のポイントになると思われます

 ――米国の長期金利が久しぶりに3%を突破しましたが、その影響は?
 
 米国の長期金利上昇も5月相場の大きなポイントの一つと言えます。米国の金利が上昇する背景には、インフレ懸念が根強くFRBの政策金利引上げが予想されるといった事情もありますが、税制改革によって国債の増発が予想されるといった要因も、金利上昇の圧力になっています。とりわけ、インフレは原油価格が1バーレル=68ドル前後で高止まりするなど、資源価格の上昇がその原因の一つになっています

 私自身は、年3.2%程度までは上昇する可能性があると思っています。日本は、基本的にゼロ金利ですから3%を超える金利差があれば、円が売られてドルが買われます。FOMCによる金利引き上げは、次回は6月になりそうですが、おそらくこのままでは利上げを実行してくると思われます。5月4日の雇用統計の結果がどうであれ、金利引き上げが実施される可能性は高いと思います。
 
 ――日本の動きはどうでしょうか、ドル円の予想レンジは?

 4月26日-27日に行われた日銀の金融政策決定会合では、物価目標としていた2%の達成時期が削除されました。達成目標時期を削除したことで、現在の政策を長期に渡って継続しようと言う方向性を明確にしたと思われますが、市場に大きな変化は見られませんでした。

 ドル円の予想レンジとしては、1ドル=107円-111円とみています。北朝鮮情勢と米国の長期金利次第ですが、円高ドル安のトレンドは、すでにドルが底値を付けたと判断され、今後はドルが買われる方向に向かうのではないでしょうか。日銀の強力な金融緩和が続くことで、なかなか円高に振れにくい環境があるように思います。

 ――ドラギECB総裁が、会見でEU経済の落ち込みについて言及しましたが?
 
 4月26日に行われたECB理事会の記者会見で、ドラギ総裁はユーロ圏の成長見通しについて「引き続き堅調」との認識を示しましたが、「年明け以降、成長ペースがやや緩やかになったことが経済指標で示されている」とも発言。ECBが実施している今年9月までのテーパリング(緩和縮小)の期間が、やや延長されるのではないかという観測が出て、ユーロが売られました。

 米国の金利上昇と言う要因もありますが、シカゴIMM通貨先物ポジションのユーロドルを見ると、ユーロの買い残が15万枚程度と大きく膨れ上がっており、1ユーロ=1.20ドルを割り込むのではないか、という予測まで出てきています。確かに1.20を割り込むとさらに大きくユーロは売られる可能性があります。

 ユーロの予想レンジとしては、ユーロドルで1ユーロ=1.1850ドル-1.2350ドル、ユーロ円では1ユーロ=128円-134円と見ています。英国ポンドは相変わらず堅調で、ポンド円では1ポンド=145円-153円と見ています

 ――クロス円の予想レンジは?

 オーストラリア経済は堅調ではありますが、なかなか政策金利を上昇させるところまでは到達できていないようです。オーストラリア準備銀行(RBA)は、政策金利を1.5%に据え置いたままですが、いまや米国の政策金利の方が上回っており、高金利通貨とは言えなくなりつつあります。

 人件費の伸びが抑えられているためインフレが進まず、当面高金利通貨の地位は米国に譲ることになりそうです。豪ドル円の予想レンジとしては、1豪ドル=80円-84円と見ています

 一方、相変わらずボラティリティの大きな「トルコリラ」ですが、トルコ中央銀行は4月25日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を一気に0.75%引き上げて13.50%にすると発表しました。エルドアン大統領が金利引き上げはありえないと挑発していたことを考えると、大統領に逆らって利上げした中央銀行は勇気があったのかもしれません

 利上げ発表直後、トルコリラ円は大きく動きましたが 、最終的には元の水準に戻ったものの、その後はややトルコリラ高円安のトレンドが続いているようです。トルコ経済は10.2%のインフレがあり、2017年のGDPも7.4%と中国を上回り、その過熱が懸念となっていました。中央銀行が早めに金利を上げたため、やや安心感が出たと言えます。

 とはいえ、トルコは大統領選挙が6月24日に前倒しされるなど政局に不安が残り、その一方でシリア攻撃に参加するなど地政学リスクは依然として高い。さらにドル建ての対外債務が大きくなっているという懸念もあります。現在のトルコリラ円は、チャートで見るとテクニカルの面では大きな転換点に差し掛かっている兆候があります。

 トルコリラ円の予想レンジとしては、1トルコリラ=25円-28円というところでしょうか。変動幅が大きいため、高い水準にあるスワップを狙って投資をする人が多いようですが、下げたら少しずつ買い増していく。そんなスタンスでいいと思います

 ――5月相場の注意点を教えてください

 毎年、ゴールデンウィークの最後の何日かは、日本の投資家が不在のため市場のボラティリティは大きく変動しそうです。ゴールデンウィークが終わった後も、北朝鮮情勢や米国の金利動向で、相場は大きく動く可能性があります。

 ポジションを抑え気味にしてこまめに売買するのがベターです。またチャートを見て、相場全体の動きをよく把握することが大切です。(文責:モーニングスター)。