本連載では、SBIグループにおいて、資金調達支援プラットフォームを提供するベンチャーとして設立されたSBI CapitalBase株式会社の代表取締役で、国内外のFinTechならびにICO事情に詳しい佐藤隼人氏に、ICO市場の現状と課題、そして未来について語っていただく。第2回目のテーマは「国内ICOの現状と課題」である。(全5回)
 
■現状は極めて難しい「事業会社による国内でのICO」
 
 日本国内のICOについては、2017年には100億円超えの資金調達をした案件が2つあり、それ以外にも数件の成立があって、一定の盛り上がりを見せていました。私どもが新たにSBI CapitalBase株式会社を設立したのも、中長期的に見て国内でこの市場に大きな可能性があると考えたからです。
 
 しかし、直近の状況を見ると、昨年12月以降、新規のICOは実施されていません。これは、資金決済法の解釈の問題で、それまで黙認されてきた事業会社によるICOに対して、「仮想通貨交換業の登録が必要」という整理が金融庁の中で浮上してきたことに起因します。
 
 昨年4月に改正資金決済法が施行されましたが、その法案作成当時には、ICOがここまで急速に拡大することは想定に入っていなかったと思われます。現在の改正資金決済法ではICOへの総合的な対応がなされていません。
 
 いずれは、業界団体の設立やICOガイドラインの作成等を通じて環境整備が整い、またその先には更なる法整備も行われると思いますが、そういった環境整備が整うまでの一時的な措置として、上記の金融庁方針が打ち出されているものと考えられます。
 
 折しも、タイミング悪く生じたコインチェック事件により、投資家保護、仮想通貨利用者保護の不備を指摘する声が大きくなっていることも、このような状況を後押ししています。
 
 このような状況下では、新たなルール、環境が整備されるまでは、国内での新規ICOを事業会社が独自に行うことは、極めて難しいと言わざるを得ません。
 
■ICO市場の盛り上がりは「環境整備」にかかっている
 
 今後、事業会社が我々のようなプラットフォーマーを利用せずにICOを実施する際は、仮想通貨交換事業者として業登録をしてからというのが、原則となるでしょう。しかし現在、金融庁の仮想通貨関連部署は多忙を極めており、この登録待ちが数十社控えているという話もあります。新規登録に対してスピーディーな対応は困難だと思われます。
 
 さらに、仮想通貨交換業者として登録されたとしても、内部管理体制の整備、適切な業務執行体制の確保等のハードルの高い運用・管理が求められます。形式基準は資本金1000万円ですが、実際の運用コストは規模によるものの、最低でも年間1億円は下らないでしょう。
 
 今、それだけの時間と手間とコストをかけて、事業会社が独自でICOを行うことに、メリットはあまりないと思われます。
 
 では、海外子会社などの現地法人を使って、海外市場でICOを行うスキームであればどうかというと、これについても、日本国内の投資家を対象としたICOであれば、厳しいチェックが行われることは間違いありません。
 
 実際、2月にはマカオを拠点とするブロックチェーンラボラトリーに対し、改正資金決済法に基づき無登録事業を行っているとして、警告が出されたのは記憶に新しいところです。
 
 また、海外各国の金融当局のICOに対する態度も、日々変化しています。たとえば、去年までは、スイス、シンガポール、エストニアといった国では比較的ICOがやりやすいと言われていましたが、現在では必ずしもそうとは言えなくなっています。
 
 いわゆる「ICOヘイブン」のような規制のアービトラージは、近々に解消されると考えられます。
 
 一方、多くの国内企業、とくにベンチャー・中小企業においては、新たな資金調達スキームとしてのICOに注目が集まっていることは間違いありません。
 
 実際、弊社でも、とくに広告宣伝などはしていないにもかかわらず、主にWebサイト経由で、毎月20~30件ほど、国内企業からのご相談をいただいている状況です。もちろん相談ベースであり、それらの現実性の濃さはさまざまですが、多くの事業会社がICOに強い関心を持っていることは、私どもの肌感覚としても実感しています。
 
 したがって、各種の関係法、ガイドライン等の整備、環境整備が整い次第、国内でのICO市場も中長期的に大きな盛り上がりを見せるのではないかと考えています。(3に続く)
(情報提供:幻冬舎GOLD ONLINE)