台湾の反共組織「台湾青年反共救国団」は3月24~25日、台北市で「香港マカオ中国、各民族および台湾自由人権フォーラム」を開催した。香港から出席した「セントラル占拠行動」の戴耀廷・発起人(香港大学副教授)による「香港独立」を鼓吹する言動が特区政府などの非難を浴びる中、香港基本法23条に基づく「国家安全条例」立法への着手が取りざたされている。(編集部・江藤和輝)
 
 フォーラムに香港から出席したのは戴氏と民主党の劉慧卿・前主席、青年新政の游〓禎氏、大学の学生会代表と弁護士の9人。ほかにはチベット自治区、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区の在外独立勢力代表らが参加した。「台湾青年反共救国団」は民主党台湾支部の副主席だった楊月清氏らが10年前に設立。フォーラムを後援した「台湾ウイグルの友会」の林保華・理事長は楊氏の夫で、2人は香港に居住した後、返還前に米国に渡った。(〓は、草かんむりに惠)
 
 戴氏は同フォーラムで「より大きな反独裁政治連盟を設立し、台湾に限らず各独立派組織を通じて外国との連携を強化していくべき」と呼び掛けたほか、「現在進めている反共反独裁活動はきっと成功する」「反共反独裁活動が成功した後、人民自決によって香港を含む各地の人民は独立国家になるか、連邦政府を組織するか検討できる」と語った。
 
 これに対し特区政府は3月30日、「香港独立に関するいかなる主張も1国2制度と基本法にかなっていない」として譴責声明を発表。続く31日には国務院香港マカオ弁公室と中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)がともに声明を発表し「香港独立分子と外部の分裂勢力が結託するのを特区政府が規制することを支持する」と述べ、戴氏の発言は公然と香港独立を宣揚するものと指摘した。同日には「保衛香港運動」「政中香港人」のメンバーがそれぞれ香港大学に赴き、戴氏の教職解任や23条の速やかな立法を求めるデモを行ったほか、4月1日には親政府派議員41人が連名で譴責声明を発表した。『人民日報』(海外版)は2日付の署名入り論説で「戴氏は域外の支援を取り付け国家分裂を企て、憲法、基本法、刑事罪行条例に違反している」として特区政府に追及を促した。
 
 一方、戴氏はこうした批判を「基本法23条強化版」への布石とみて、立法を再度進めれば2003年より厳しくなるとの警戒を示した。民間人権陣線、選挙委員会の民主派メンバー「民主300+」など50余りの団体は4日、戴氏を擁護する署名活動を開始。特区政府などによる言論と学術の自由に対する弾圧に抗議し、戴氏への非難声明撤回と謝罪を要求するという。7日には民主派議員や民間人権陣線などが立法会のデモエリアで戴氏に声援を送る集会を行い、警察の推計ではピーク時に1200人が参加。民主党の李柱銘氏ら重鎮も参加したほか、独立派の「香港民族陣線」も同時に付近で戴氏を支持する集会を行い約50人が参加、「香港独立」の旗を掲げた。
 
 戴氏は「自分は香港独立を支持しない」と弁明したが、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員の譚耀宗氏は5日、香港電台(RTHK)の番組に出演し、「フォーラムの場で香港独立に反対と表明していれば、このように批判を招くことにはならなかった」と指摘したほか、「特区政府は今期中に基本法23条に基づく立法を完了すべき」と述べた。
 
 林鄭月娥・行政長官は6日、メディアの取材を受けた際に自ら戴氏の件に触れ「『香港独立』や連邦制といった香港の前途を自ら決められると鼓吹することは受け入れられず、憲法と基本法に違反し、香港にとって全くメリットはない」と述べたが、「この件を機に基本法23条に基づく立法を行うわけではない」と断言。また特区政府教育局の楊潤雄・局長は8日、多くの団体が香港大学に対し戴氏の解任を要求していることについて聞かれ、「個別の教授の学校での教職の問題は大学が自身で処理する」と回答。「香港独立」の討論がどのレベルに達すれば学術の自由を逸脱するかについて「1件ごとの事実に基づいて判断すること」と説明した。
 
■言論の自由の境界線
 
 現行の法律では戴氏が実際に罪に問われるかどうかが物議を醸している。弁護士で行政会議メンバーの湯家〓氏は国際人権規約を引用し「市民的および政治的権利に関する国際規約」第19条に意見を持つ権利や表現の自由がうたわれているものの、それに付帯する責任と義務として国家の安全や公共秩序の保障などが含まれ「ここに言論の自由を制約する境界線がある」と説明。「戴氏の言論は境界線を踏む行為で、より多くの証拠で『香港独立』推進を煽動する意図があると示されれば律政司が煽動罪で対処できる」との見方を示した。(〓は、馬へんに華)
 
 一方で元刑事起訴コミッショナーのグレンビル・クロス氏は「刑事罪行条例の煽動罪の定義は暴力行為の煽動、仇怨鼓吹などであるため、純粋に『香港独立』を討論するなら刑事責任は問われない」とみる。だが民主建港協進連盟(民建連)の李慧瓊・主席は戴氏が占拠行動や立法会選挙での「雷動計画」など政治事件を策動したブレーンであるため「一般市民は戴氏の発言を単なる学術討論とは思っていない。学術と言論の自由を盾にすることは狡猾」と批判した。
 
 中連弁の王志民・主任は4月15日、香港政策研究所が主催したシンポジウム「全民国家安全教育日・香港研討会」で講演した。王主任は俗に「縄は最も細い部分から切れる」といわれることを挙げ、「国家の主権、安全、発展の利益を守る面において香港の制度は不完全で、ひいては世界で唯一、長期的に国家安全に関する法律制度が整備されていない地域」と指摘。さらに「近年、外部勢力の浸透と内部勢力の呼応が見られ、一部の『香港独立』過激派分子が各種方法で国家の主権・安全に挑戦し、内部から香港の立憲体制や法治を脅かし、台湾や国外で反中勢力と結託して国家の分裂と政権転覆を図っている」と述べ、学術や言論の自由をはるかに逸脱していると非難した。
 
 王主任の発言を受け、早ければ来年にでも23条の立法作業が開始されると報じられたが、林鄭長官は17日の記者会見で「現在のところ23条の憲法責任を履行するスケジュールは決まっていない」と明言。昨年発表した施政報告(施政方針演説)で述べたように立法に有利な環境をつくるのが先決であるとの立場を示し「その環境はまだ整っていない」と指摘したほか、立法作業に必要な条件として(1)社会のさらなる平和(2)中央・特区政府へのさらなる信頼(3)理性的、相互的に討論できる環境――の3つを挙げた。また王主任の発言については「全く何ら圧力は感じていない」と述べ、当面は経済振興を優先するため立法は引き続き棚上げするもようだ。(情報提供:香港ポスト)(イメージ写真提供:123RF)