文化大革命を引き起こした故毛沢東氏のトラウマが、一般の中国市民の間では長期政権への反発がある。それでも、今回の全人代は、国家主席・国家副主席の任期撤廃などを柱とする憲法改正案を出席者の99.8%の賛成で可決した。長期政権に乗り出した習近平体制は、どこに向かおうとしているのか? 大和総研経済調査部の主席研究員、齋藤尚登氏は3月20日、「『習近平一強体制』が本格始動へ」と題したレポート(全5ページ)を発表し、新体制人事のポイントをまとめた。レポートの要旨は以下の通り。
 
◆第13期全国人民代表大会(全人代)第1回会議は、国家主席・国家副主席の任期撤廃などを柱とする憲法改正案を出席者の99.8%の賛成を以て可決した。国家主席は習近平氏が留任し、党中央委員を退いた王岐山氏は国家副主席として、習近平政権の一翼を担い続けることになった。王岐山氏は反腐敗・汚職の陣頭指揮を執ったが、そもそもは経済・金融分野のエキスパートであり、米国との間に太いパイプも有する。米中間の貿易摩擦問題の深刻化回避のために、王岐山氏の手腕が活かされる可能性もあろう。
 
◆習近平氏の経済ブレーンである劉鶴氏は副首相に就任した。劉鶴氏は市場を重視する改革派と目されており、今後、規制や監督・管理の強化に偏りがちな経済政策運営を徐々に市場に委ねていくことができるか、が注目される。
 
◆周小川氏の後任の人民銀行総裁には易綱氏が就任した。易綱総裁に求められるのは、マーケットに対して金融・為替政策を丁寧にタイムリーに説明することで、マーケットに余計な疑心暗鬼を抱かせないこと、過剰な反応を長期化させないことではないか。こうした意味では、政治的な野心のある政治家よりも、実務に長けた人物の方が好ましい。今後、易綱総裁はマーケットの安定に責任を負い、それに専念することになる一方、金融改革や人民元の国際化といった政治的判断を伴う政策は、習近平氏やその経済ブレーンである劉鶴氏らのトップダウンで実施される可能性が高い。(情報提供:大和総研)(イメージ写真提供:123RF)